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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『菊と刀』ルース・ベネディクト著~

日本人の特性を分析した著書としてイメージしていたが、個人的にはとても難解であった。それでも何とか読了できたのは、日本人の根底にある「恥」という感覚について興味をもったためである。
「恥」は西欧でも同様なものと思っていたが、著者によるとどうやら日本人は特に強いらしい。
 
それは第二次世界大戦での数値にあらわれている。
例えば、兵士の投降者と戦死者の割合。西欧が4:1であるのに対して日本は1:120。
そこには思想の違いがある。
西欧は戦死者が部隊の1/3~1/4に達したら降伏したという。「名誉ある降伏」という考え方が背景にある。
一方日本では、「俘虜は恥辱を伴うもので、家族や周囲に顔見せできない」とされていた。
また広報のあり方でも、日本では敵に攻め込まれるということを恥として、「それは計画的で、むしろこちらから積極的に敵を迎え入れたもの」としていたが、西欧の場合は攻め込まれた時でも、事実を報道するとともに「挑戦を受けて立つ」というスタンスで伝えている。
 
こうした事例からも類推されるように、日本人は敗北や失敗による「恥」を極端に嫌う。
だから様々な分野における競争に弱かった。著書によると、アメリカでは「競争は自分たちを刺激して最良の努力をなさしめるもの」としているのに対して、日本では「競争があると作業効率が低下。自分の成績と比較するときはよいが、他人と競争すると低迷する」ことが多いらしい。
だから競争から逃げまくる。一時期よく耳にした「護送船団方式」という言葉は、そうした日本人の特性をあらわしているものと思われる。
 
ただスポーツの世界を中心に最近の日本人は変わってきた。
積極的に海外に出て、自らを競争の中におきながら鍛えている。以前のような悲壮感ではなく、喜々として競争を楽しんでいるように思う。
そうしたスタンスが、メジャーリーグ・エンゼルスの大谷選手をはじめとする若い人たちの大きなパフォーマンスにつながっているのだろう。
仮に彼らは敗北することはあっても、恥を感じて悲嘆にくれるのではなく、むしろ敗北を次の新しい成長の糧とするものと思われる。
結局、「恥」の文化とは島国が生み出した閉鎖的な文化のこと。
それをいまの若い人たちが変えてくれている。そこに日本人として誇りを感じずにはいられない。

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