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ワクワクリベンジ読書のすすめ~『「心の病」の脳科学』林(高木)朗子・加藤忠史著~

脳の話は複雑。
それでも家内が重度の高次脳機能障害を患っている中、自分なりに勉強をしてきたつもりである。さらに最近は、自分と同じような境遇にあるご家族がご苦労されているのを目の当たりに一念発起。心理カウンセラーの資格取得に向けて、文部科学省後援「こころ検定」にチャレンジしたりもしている。しかし、ようやく専門用語に慣れた程度。理解度はまだまだ。
それだけ、脳の話は自分にとって奥深く難しいもの、と認識している。
ただこの本を読んでわかったことがある。脳科学の研究者のご努力によって、未知の部分が少しずつだが解明され始めている。それが、いわゆる「心の病」で悩んでいる方々への支援の可能性につながる。そんな「支援のための技術・研究の書」というべきと思う。
 
著書は個々の精神疾患の仮説が章立てで語られているが、特に驚いたのは「ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する」という話。
著者によれば「自閉スペクトラム症(以下ASD)」は、「社会性やコミュニケーションに障害」があり「興味の対象が限定的で、同じ動作を繰り返す特徴」があるという。
特に感覚刺激に対する感覚異常がみられるASDの人たちにとって、人間の顔は刺激が強すぎるという。人間の顔は千差万別。そこに表情や仕草なども加わる。複雑な変化の認識や対応が苦手である彼らには、人間の顔から何かを導き出すことは非常に困難なタスクであると言える。
 
そこで今研究が進んでいるのが、ASDの人たちをロボット・アンドロイドで支援して、社会性やコミュニケーション能力を向上させようというもの。
すでに「ASDの人は、人間よりアンドロイドと会話するときのほうが目を見る頻度が高い」という調査結果もあるとのこと。その他にも、卓上型ロボットを使ってASDの幼児に共同注視を促し言葉を覚えさせるとか、アンドロイドを面接官役にした就職面接の練習をするなど、具体化は想像以上に進んでいる。
 
とは言っても、当事者や状況によって、それぞれ適したロボットのタイプが異なるなど、まだまだ課題は多いようである。
「脳はブラックボックス」。そんな中で脳や心の問題が完全にクリアになることはないにしても、いろいろな「引き出し(=手段・アプローチ手法)」についての研究開発・技術開発がさらに進められること、障害当事者家族として心よりお願いする次第である。

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