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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『生の短さについて』セネカ著 大西英文訳~

<<感想>>
「生は浪費すれば短いが、活用すれば十分に長い」。
そのためにも、「今を大切に」。そして「自分と向き合え」「常に自分自身とともにあれ」。
 
それがセネカの主張、つまり著書のテーマであると思う。
セネカは古代ローマ時代の哲学者である。そんな彼のメッセージは、いまわれわれが直面している課題、現代社会の生きづらさに対して「励まし」と「勇気」を与えてくれるように思う。
 
「何かに多忙される者(人間)」「不精な多忙」。
著書にさかんに出てくる言葉である。
どちらも似たような意味合いだが、要は自分以外のために貴重な時間を使い過ぎているということ。挙句の果てには、本来暇であるべき時間であっても自分のため以外の用事で埋め尽くそうとしてしまう傾向を危惧してのメッセージである。
大切なのは、自分の生がどれだけ自分のものであるかということ。特に最晩年になってまで他人の幸せのために命を削る必要はない。自分のためにどれだけの時間を活用するかということである。
言い方を変えれば、「今という時間と自分自身を大切にしなさい!」ということか。
古代ローマ時代にも、現代に通じる同じような問題があったとは驚きである。
 
「賢者は回想によって、その過去を把握する」。「賢者は今を活用する」。「賢者は未来を予期する」。
セネカの生の3つの時期(過去・現在・未来)についてのメッセージである。
これらを合わせて「賢者はあらゆる時を一つに融合することによって、自らの生を悠久のものにする」としている。
興味深いのは、「過去」についての考え方。単なる時間的な過去ではなく、時空を超えた先人たちの叡知の軌跡ととらえている。そのためにも、セネカは「古典」を読むことで過去を確実に経験できるとしている。
「古典を読む」という行為は、その著者と対話をすることでもある。つまり、過去を学び、理解し、つながることによって、現在をより味わい深いものとし、未来への足掛かりとすることになる。
 
ショウペンハウエルも『読書について』の中で、「ギリシア、ローマの古典の読書にまさるものはない」と語っていた。改めて「古典を読む」ことの重要性を認識した次第である。

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