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これ、いただくわ! 重箱のような宝石箱。
父の葬儀を終えて東京に戻ってきてから、何も手につかず日を過ごしていたのですが、これではいけんと発奮し着手したのはデスクの掃除でした。
机上には、貼り箱を作成するために集めた雑誌やチラシが鍾乳洞の石柱よろしく積んであって、その隣には、いつ届いたのか分からない区の健康診断の書類や同窓会の知らせなどなどが小山をなしており、デスクといっても名ばかりの物置き場と化していたのでした。
必要な物と捨てていい物を分類したら、ひたすら捨てていくだけ。
着手さえすれば簡単な作業なんですよね。
デスク上がすっきりした後、目にとまったのが、宝石箱でした。
天然木と白いスチールの組み合わせが、デスクにピッタリだと買ったのですが、いつの間にか鏡が縦にひび割れていて…。捨てようかなと思いながらも、鏡以外は美しいのにもったいないなあと、割れたガラスをそのままにして使っていたのでした。
割れた鏡を使うもんやないで!
亡き母の言葉が蘇ってきます。
確かに開ける度、縦にひび割れた鏡が目に入るのは、メンタル的にも良い影響を与えないに違いなく。
いっそのこと、鏡を剥いじゃえ!
思い立ったが吉日です。大きく割れた鏡の一片の隙間にしのばせたナイフの歯を立ててみると簡単にはがれた。ビンゴ! あとはもう一片を剥がせばいいだけです。
と、思ったのも束の間、もう一片のガラスが剥がれない。というか、ナイフを入れる隙間もない。無理にナイフを入れたら、その部分だけ粉々に鏡が割れてしまった…。破片で、愛猫が怪我でもしたら大変!と、室内作業を諦めて車庫へ移動することにあいなりました。
炎天下の車庫、汗をダラダラ流しながら鏡をはごうとするも、うまくいかず。鏡を金槌で叩いて、砕いてから剥がしてみよう!と、家に金槌を取りに戻ったところで、夫から何してるのと声をかけられたのです。
宝石箱の鏡を剥がしてるのだというと、暇な時間を持て余していたに違いない夫も車庫にやってきました。
何重にもタオルを折って鏡の上に置いて、静かに叩いてみるも、鏡は微塵も割れていない。
と、そんなんじゃダメだよ! 貸してみ!と、夫が金槌を手にした。
もう、この時点で、嫌な予感しかしない…。
グワシャン!
鏡の割れる音に混じって、木材の割れる音。
予感的中。嗚呼、無念。
鏡もろとも、宝石箱まで木っ端微塵です。
まあ、物は考えようです。ここまで壊れてしまったら未練はないや。
宝石箱としてのお役目は終わっていたのだということでしょう。
不燃物回収の日に捨てるため、割れた鏡と宝石箱を新聞紙に包みました。
家に戻ると、早速、宝石箱選びを開始です。
さんざん迷った挙句、北欧、暮らしの道具店の宝石箱にしました。
重箱のようなシンプルさが気に入りました。
鏡なしというのもポイントでした。
これからの人生、長くつきあっていたきたいと思います。
その後、デスクの引き出しを整理していきました。
それが終わったら、3階のクローゼット! やることはたくさんあります。暮らしを整えていくうち、悲しみや後悔や怒りが薄まっていけばいいなあと思います。
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