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「天才の憂鬱」「それなりにメランコリー」「夏の憂鬱」というタイトル

「ねえねえ,薔薇ってかける?醤油ってかける?」
というCMが30年程前にあった。当時「薔薇」と「醤油」が難しい漢字の代名詞となった。CMの影響力というのはすごい。

小中学生が中2病をわずらうのと同じような文脈で,一定数の青少年はこうして難しい漢字に心をつかまれる。

CMの後に出会った「鬱」という漢字。
少年のわたしを魅了した難しい漢字2代目である。

スラムダンクという漫画の第9巻の小見出し「天才の憂鬱」というタイトルで出会った。当時は「鬱」という言葉の意味などはよく知らず。その漢字のおどろおどろしさにただ魅了された。がんばって書けるようになって国語の岩間先生に自慢した。「そんなん書けんでもええねん」と,言われて大人をはじめて見下すようになった。少年の心はガラスである。

「それなりにメランコリー」というタイトルは,卒業といういわゆるライトノベルのはしりのサブタイトル。メランコリーって言葉のテンションが心地よくて当時調べた。メランコリー=憂鬱。

メランコリー(英: melancolia, melancholy、独: melancholie、仏: mélancolie、伊: malinconia)、憂鬱(ゆううつ)とは、日常的な用法では、はればれしない落ち込んだ気分、抑うつのこと。引用:Wikipedia

当時ライトノベルって言い方していなかったと思うんよね。友人の影響で「極道くん漫遊記」「誕生」「卒業」というタイトルを読んでいて,嫌いだった読書が少しずつ好きになった。中学時代。おやじがね,ゲームやおもちゃはあまり買ってくれなかったのだけれど本であれば割とすんなり買ってくれたんですよ。だからかよくねだってた。
ここからはじまって,赤川次郎,我孫子武丸,阿佐田哲也,山田詠美,村上龍,村上春樹って読むようになった。

今,卒業をググって調べてみたら絵面が懐かしくて思いがけず笑顔が出てきた。内容は記憶にないけれど春・夏・秋は読んだように思う。

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夏の憂鬱」はラルクアンシエルというバンドの曲。

夏の憂鬱,ああもう行かなくちゃ,秋が来るから

という歌詞が秀逸。ボーカルのhydeが当時自画自賛してたのを覚えている。とても好きな曲だった。カラオケでは敢えてアルバムバージョンの方を歌って満足げに通ぶるのである。

「鬱」って漢字の言葉と裏腹,そこには甘い感じの良い思い出が詰まっている。難しい漢字は書けなくとも良いけれど,惹かれた語彙には成長の為のエッセンスが詰め込まれてゆくことくらいは知っていていいかもしれない。
知ってか知らでかその一端を担った岩間先生には,今ここで思いがけない感謝をすることとなった。きっと国語の先生冥利に尽きているはずである。

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