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第10回:生きる上で大切にしていることの話

徒然と毎日と。あっという間に過ぎていく。志をもって日々を過ごし、しっかり事を成し遂げる人もいれば、そうでない人もいる。朝の目覚めと、今日という日を生きられるささやかな悦びを噛みしめる人もいたり、人生なんてつまらないと悪態をつく人もいたり。三者三様、十人十色。もっともっとと、百人百様、千差万別。価値観は人それぞれなのだから、それに根付いた生き方はもうたくさん。第9回:偉人だと誰が好き?という話に続く、第10回は人それぞれの毎日の中で、青い鳥ってどこに飛んでいるんだっけという話。

***

玉坂(以下、玉):ねえラマ王。
ラマ男(以下、ラ):はい王です。

玉:ラマ王ってさ
ラ:うん。
玉:生きてて楽しい?
ラ:一触即発の質問じゃん。
玉:なんだろう、楽しそうでもあるし、とてつもない寂しさを抱えてるんじゃないかと思うこともあるし。そういう人への処方箋的問いかけです「生きてて楽しい?」
ラ:感性バグってんのか。もしボクが本当に寂しさを抱えてどうしようもなかったらどうすんのよ。
玉:はっ!!!
ラ:……。
玉:と、言うのは嘘で。なんとなくね、聞いてみたくて聞いてみた。最近なんか楽しいことあるかなーって。
ラ:そうか。慮ってくれたということで、感謝するよ。大変ありがたきことと受け取ります。

玉:人生ってどうかなって、一時期よく考えててさ。
ラ:何その芥川龍之介『歯車』みたいな思考癖。
玉:漠然とした不安。
ラ:切り返しスピードえぐいな。
玉:なんやろ。ただ生きるってさ、能動的じゃなくてもいけるというか。例えばやけど、恋愛をしたいーって思いがあったとして、それを成立させようとしたら、比較的能動的なアクションが必要じゃんね?
ラ:なに急に。
玉:自分から積極的にアクションしないと、恋なんて実らないじゃんね?
ラ:青春丸出しの例え。
玉:雑談って青春じゃんね?
ラ:いや、うん…唐突に名言めいたこと言う。ほんで、気持ち悪い”じゃんね”が多くて内容入ってこないんよ。
玉:恋愛みたいな特別なイベントって能動だけど、人生の大半って割と受動でも成り立ってしまうような気がしてさ。受動でも成り立つにもかかわらず、そんな中で積極的な意図を持った部分ってなんか、興味深いやんか。意志を感じるというか。
ラ:Netflix見てればダラーッと生きられる時代に「映画撮ろうぜ!」って言う奴、みたいな?
玉:それよそれ。突如湧き上がる衝動ね。適切な例え。大正解。花丸です。
ラ:花丸貰いました。
玉:なんかある?生きる上で大切にしている意志的なことって。
ラ:うーん……。
玉:そんな考えこまんと、パッパッパッとさ、気軽に気軽に、ライトにライトに。人類初飛行な感じで。思いつくままにさ。
ラ:人類初飛行は気軽じゃないから。ライト兄弟につられたんだろうけれども。
玉:ある?

ラ:なんだろうな。
玉:うん。
ラ:常にさ「そんな簡単に権威に従っていいの?」みたいな問題意識があるのよね、生きる上で。
玉:おお。いいね、そういうのそういうの。
ラ:なので「権威への批判を怠らない」ってことが生きる上で大切にしていることかもしれない、と思いました。はい。
玉:権威への批判か。
ラ:簡単に言うと「この道路は車来ないじゃん?なんで赤信号だからって素直に止まってるの?ほんとに止まらないといけないのか、止まらない選択肢だってあるんじゃないか、頭使って考えようよ!ルールがそうだから、じゃないんだよ!」という感じね。あ。実際には止まるけどね。赤信号。
玉:なるほどな。ラインが気になる。
ラ:ライン?白線より手前。
玉:違うよ。なんやろう、批判的な目を向けるライン。ラマ王が権威と評するライン。
ラ:あー。そっちのラインね。そうだな…。「役割で言ってる」のか「その人の本心で言ってるのか」って違いかな。言葉にすると難しいけど。
玉:役割と本心?
ラ:”悪の凡庸さ”問題でおなじみ、ナチスのアイヒマン。
玉:彼はただの役人であり、上官の指示に従っただけ。
ラ:それそれ。なんか逸話としては微妙で、実際アイヒマンは割と出世欲が強くて、指示に留まらない意志も介在してたとされているけど、まぁそういうこと。
玉:卑近な話だと、森友にせよ加計学園にせよ、窓口に立つ人が独断でそんな大ごと起こすなんて訳はほぼほぼなくて。出世欲のために上司に乗じたか、あるいは上司の指示に単に従ったか。止むを得なく。
ラ:一個人の独走なんて、構造上そもそもそんなことできるような仕組みになっていないからね。
玉:上命下服。大小あれど、どの時代も見受けられる構造やね。

ラ:そうね。ちょっと脱線したけれども、言いたかったのは、”警察官”として「赤信号では止まりましょう」と言うのと、”父親”として子どもに「赤は止まるんだぞ」と言うのは違う、ということ。
玉:前者が役割、後者が本心かね。
ラ:うん。基本的にはそう。ただ、シチュエーションによってその内実は異なってくるよね。交通事故で友人を亡くした青年がやがて警察官になったなら、前者は役割であり、本心であるかもしれない、十分に。でもママ友が見てる中でカッコつけようと父親”役”を演じてるなら、お父さんだって本心以上に、役割のセリフになる。
玉:なるほど。
ラ:だから、それをしっかり見極めて批判的な目を向けるか否かを決める。
玉:自分のために言ってる発言か、他人目線で発信してるメッセージか、の違いがラインってことか。
ラ:そうね。だからもし「それ自分のために言ってるだろ」って思ったら、誰が言っていても素直には従わない。まず訝しむ。みないな。そんなところがラインかも。
玉:権威への批判を怠らないんだよね?
ラ:そうだよ。
玉:役割=権威、本心=自分なら、むしろ役割で言っている人へ従わないんじゃないの?そっちが権威だし。
ラ:あ。
玉:あ。じゃなくて。
ラ:えと、ボクが「自分のため」って言った「自分」は、その人が「自分の役割」をこなす場合の「自分」。この場合、権威的なのは父親の方。間違ってねーし!
玉:ほう。
ラ:間違ってねーし!
玉:無理やて。自分のために言っているエゴも嫌いだし、権威に従っているだけの仮初も嫌いってことよね。
ラ:間違ってねーし!
玉:気分屋ってことでよろしいか。
ラ:間違ってねーし!
玉:4回は評価する。

ラ:ボクは権威に批判的。役割と本心に敏感になって、なんかちょっとでも怪しかったら批判的に見とくってことがあるんね。そういうのが生きる上で大切にしていること。
玉:はい。
ラ:じゃあ玉ちゃんは、あるの?そういうの。
玉:なきにしもあるてしもかな。
ラ:どっち!
玉:あるよ。
ラ:なによ。
玉:死ぬときに笑顔でいること。
ラ:スケール!
玉:20代後半だったか、これ、実は知人からの受け売りなんだけども。
ラ:パクリじゃん。
玉:そうだね。考え方として素晴らしいと思ったから、素直に参考にしたよ。引用元は介護職をしている知人でして、お仕事柄ご年配の方と毎日接して、生き様みたいなものと直面するらしいんよね。
ラ:はぁ。
玉:認知症の方も多いし、殴ってくる人もいれば、言葉での意思疎通が難しい人もおる。ずっと一人でいる人もいれば、施設の他の入寮者と仲良くできる人もいるし、家族が頻繁に面会に来る人もいる。まぁ、いろいろいるわな。
ラ:へぇ。
玉:当然ながら、そういうこころ通わせた方々との死と多く向き合うことになる。
ラ:ほぉ。
玉:なんだかんだ言っても、そういう間際にさ、多くの人に囲まれて、安らかに、笑顔で、人生を終えられるってのが幸せなことなんちゃうかなって思ったらしいんよ。
ラ:全然イメージできないけどもね。
玉:もちろん、玉坂も年老いた先にある、死を鮮明にイメージできるか?と問われたら、それはできないよ。ただ、その時に悔いなく、笑顔でいられるように日々生きたいって思いは抱けるだろうし、その時どういう状態でありたいか、そしてそのためには何をしておくべきかって逆算はさ、なんとなくできるやんか。
ラ:まあ、そうね。
玉:そういうこと。
ラ:なるほどな。

玉:一時期いろんな人にこの質問してたわ。
ラ:生きる上で大切にしてること?
玉:そうそう。
ラ:ややこしい奴やな。
玉:そう?みんな楽しく答えてくれたよ。
ラ:優し。
玉:で、大別すると2パターンあってさ。

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ラ:Aさん、Bさん
玉:そうそう。Aさんは、行く先のGoalに向かっていろいろ集めていくタイプね。「死ぬときに笑顔でいること」なんてのはAさんタイプ。
ラ:はいはい。
玉:Bさんは目の前の大切なことを積み上げて、コツコツ生きていくタイプ。「権威への批判を怠らない」ってのは多分Bさんタイプなんかな。
ラ:あー、なるほど。
玉:どっちがいいって訳でもないし、深堀してゆくとAさんタイプだけれど、今大切にしているのはこれだよー、みたいな一見するとBさんタイプって人もいた。逆も然りね。本質的には即物的な感じでBさんタイプだけれど、質問への返答では、ゴール設定はしているAさんタイプだった、みたいな。共存している感じね。
ラ:ちなみにさ、どういう答えが多かったん?
玉:Aさんタイプだと「社会貢献」だとか、「生産性」とか、「楽しむこと」とか。
ラ:Bさんタイプだと?
玉:「友だち」とか、「家族」とか。あと、「自分」とか「仕事」って人もいたような。だいぶ前だから忘れたわ。
ラ:なるほど。
玉:「権威への批判を怠らない」なんて答えは今までおりませんでした。
ラ:よっしゃ。
玉:ちゃうねんちゃうねん。よっしゃとかそういうことじゃないねん。勝ち負けとか、唯一無二とか、そういうことにとらわれず胸張れるっていうね、生きる上で大切にしていることってのは多分そういうことなんだと思っている。是非そういう視点でこの質問を考えてみて欲しい。
ラ:え……。どういうこと?もう一個大切にしていること考えろってこと?

玉:はいはい!じかんじかん!!こちとら時間給でやらせてもろてますから!
ラ:いやいやいや、待て待て。せっかく考えてるんだから!
玉:光陰矢の如し。
ラ:行間も何もあったもんじゃないからね。
玉:はい。では、ラマ王の力で今日のまとめやってみて。

【今日のまとめ】

■議題
生きる上で大切にしていること

■採決
ちょっと抽象的な質問だけれども、しっかり腰据えて答えて、聞けばそれなりに面白いやも。権威ってなにかね。

100点

ラ:何故……。
玉:ありがとうございました。
ラ:それではみんな、ちこう寄れ。

#解説
誰とでも親密になれる36の質問というのがありまして。その中に今回の「生きる上で大切にしていることは何?」という問いはないのですが、この問いも、相手との関係性に一歩踏み込む興味深い質問です。生きるとは何か、大切とは何か、物事を長期目線で考えるタイプか、短期目線で考えるタイプかなどなど。一つの質問でその人の様々があられもない姿に。正解を求めるタイプの人にこの質問をしてしまうと、少々返答に窮するケースもあるので要注意。気楽に気楽に、人生初飛行のこころ持ちで。あなたの、生きる上で大切にしていることは何ですか?

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