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『硝子のボレット』評 金尾釘男
未来短歌会の星、かつ、ぺんぎんぱんつの星である金尾釘男さんが『硝子のボレット』に評を寄せてくださいました。ボレットの変遷を、どうぞ。
「ほぼ編年体」の歌集なので、頭から読んで歌の変化を軽く探って行きたい。まずは素材に注目してみる。
連れられて渚に行けばお互いの裸足はじめて見るのでしたね
足の指ゆっくりひらく今はただしあわせだってつぶやきながら
くるぶしは男の肩に載せるためこんなかたちにな
硝子の欠片の記憶たち(5)
◇平成26年9月5日(金)
夏の行き先を失くしてしまった。気温が、ゆるやかに低下している。ノースリーブ、向こう側が透けて見えるブラウス、麻のカーディガン。夏服をたたみながら、手編みのサマーヤーンの半袖も、リボンつきのボーダーシャツも、黒いレースのブラウスも、その他いくつかの服も、今年は一回も着ていないことに気づいてしまう。気に入っていないわけじゃない。去年の夏は何度も着た。また着ようと思って、
硝子の欠片の記憶たち(4)
◇平成26年8月24日(日)
昨日はじめて足を踏み入れた横浜は、雨だった。サンダルを履いてきたためにつま先が濡れてしまって困った。今日は降らない。シウマイを食べに来た、ではなくて、未来の横浜大会。大島さんと堂園さんの対談も、大辻さんと斉藤さんの時制の話も面白かった。インターネットという場における短歌の話もわたしは興味深く聞いていたけれど、あとから、普段ネットを使わないひとの「ネットの世界がど
硝子の欠片の記憶たち(3)
◇平成26年8月17日(日)
会いたいひとには会いに行く。さくらこさんに会いに京都へ。さくらこさんに選んでもらったランチをいただきながら、短歌のこと、愛するひとたちのことを話す。(一度好きになってしまったひとから飛び立つのは難しい。先に飛び立っていかれたとしても、そこから動くときの足の痛みを思うと怖い。)ふわふわに泡立てた人参のムースをすする。(素直でいよう、と思う。)夕方からは、大森靖子ちゃ
硝子の欠片の記憶たち(2)
◇平成26年7月29日(火)
この時期になると町のいたるところで、お囃子が聞こえる。阿波踊りの練習。艶っぽい女踊り。豪快な男踊り。笛に三味線、締太鼓、大太鼓。あらゆる連の音や熱気が、踊る。例にもれず、わたしも参加する予定です。本当は踊らせてもらえるのがいちばんうれしいのだけど、去年は笛、今年は鉦。笛は主旋律なのに、去年あまりにも下手で申し訳なかった。リズム感ならあるつもりで、今は鉦を鳴らしてい
硝子の欠片の記憶たち(1)
田丸まひる第二歌集『硝子のボレット』(書肆侃侃房、新鋭短歌シリーズ)上梓に合わせて、嶋田さくらこさんと短歌日記を書き合いました。
◇平成26年7月28日(月)
通勤時間は車でだいたい40分で、たいていは同じ道を同じくらいの時間帯に通る。ので、たぶん毎日同じルートで犬(大きい。毛が多い)の散歩をしている男のひとの服装が変わっていくのに季節の移ろいを感じたりしている。夏場は腕が露出していて、運
歌集『硝子のボレット』
田丸まひるです。
書肆侃侃房 新鋭短歌シリーズより、歌集『硝子のボレット』を上梓しました。第一歌集『晴れのち神様』以降の10年間の歌から選んでつくった歌集です。
<自選短歌五首>
桃色の炭酸水を頭からかぶって死んだような初恋
じゃあ非常階段に来て。眼裏の雪のすべてが燃えきるまでに
けれどまた笑ってほしい今朝虹が出ていたことを告げる回診
スカートの奥の夕陽を裏返すような行為をうまくできな