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スケートリンクの廃棄氷を使って遊び場を作ったら子どもたちに大人気でした。

私たちが運営しているバーベキュー場「タマリバー」は、もともとは河川敷の空き地(私有地)でした。

タマリバーを開始する以前の河川敷空き地。何にもない。乗っていた赤い車は壊れて廃車・・・

子どもからは、お父さんとお母さんは完全に「ばーべきゅーやさん」だと認識されていますが、実は私たちは「バーベキュー場運営会社」ではなく、「遊休地を利活用する会社」です。

空き地をバーベキュー場にしたり、キッチンカーが集まる場にしたり、ドッグランにしたりしています。

そんな中、とあるご縁で横浜銀行アイスアリーナの方とお話しする機会があり、「アイスアリーナの屋外スペースに、スケートをしない人たちも集まれる場所をつくろう」という企画が持ち上がりました。

私は飛び上がって喜びました。

横浜銀行アイスアリーナって、神奈川スケートリンクのことでしょ!?

1951年オープンの神奈川スケートリンクは、現在横浜銀行アイスアリーナとしてリニューアルされているのですが、「つい昔の施設の名前を呼んじゃう、生粋のハマっ子の私」という自意識が出てしまいました。

なお、本当にハマっ子を名乗れるのは、横浜市の中心である「西区または中区出身で、先祖代々その土地を持っている者だけ」という噂も耳にしますが、私はもっと広い、概念としてのハマっ子を名乗っているのでどうかご容赦ください。

このスケート場は子どもの頃、家族で何度も行った思い出の場所です。

すぐに両親に連絡したところ、当時の写真が見つかりました。

赤い服を着ているのが私。右の緑が父

外は暑いのに、スケートリンクに入ると息が白くなる。
全体的に暗くて、当時の私からすると、「ちょっと大人の世界」でした。

おしりからどん!と転ぶ痛さも、少しずつ滑れるようになる快感も、なんとなく覚えています。

そしてたくさん滑ると、寒いはずなのに汗をかいて、おなかが空きます。
スケート場に併設されているラーメン屋さんで食べるラーメンの、美味しいことと言ったら。

その横にはアンパンマンのポップコーン機械があって、両親はショッピングモールのゲームコーナーでは絶対買ってくれないのに、「ここでは特別だよ」と言いながらポップコーンを買ってくれました。

思いっきりシャツをズボンにIN。素晴らしいファッションセンス

そんな心温まる思い出を両親にすると、「え、そんなの知らない」と。

う、嘘でしょ・・・?
あの心温まる私の思い出は妄想・・・?

アンパンマンのポップコーン機械は、私の「ポップコーンを食べたい」という当時の願望が強すぎたゆえの、幻だったのかもしれません。

逆に両親は「二階に卓球場があったよね」と盛り上がっていましたが、私には全く記憶がありません。

昔の記憶って曖昧でいいですよね。
自分たちの都合の良いように、勝手にいろんな補正がかかります。

いずれにしても、このスケート場は子ども時代の楽しい思い出の1つ。

あれから30年経ち自分が親になり、「私が子どもにポップコーンを買ってげるんだわ!(本当にポップコーン機械があったかはもう関係ない)」と意気込みながら、横浜銀行アイスアリーナへ視察という名目でお邪魔しました。

めちゃくちゃ綺麗になっていて感動

え、ここ、どこ??

めっちゃ綺麗で、明るくて、私の知ってるスケート場じゃない!

30年という月日は本当に怖いな、と思いました。

気を取り直し、「お母さんがスケートを教えてあげるね」と意気込んでスケート靴をはくと・・・

足が痛くて一歩も歩けません。

履き方が悪いのかなんなのかわからないのですが、とにかく一歩を踏み出すたび下半身に激痛が走るので、動けません。

しょうがないので手すりに捕まりながら手の力だけで進むも、すぐに腕がパンパンになり、途中にあったベンチで休憩。

まだリンクまでたどりついていないんですが。

そんななか、スケート靴を履いてスタスタとリンクまで歩いていく子ども

ま、待って・・・!

まずい、これでは親の威厳を見せられない、と思ったとき。
横から颯爽と滑り込んで来たのが夫でした。

そうだった、夫は子どものころ、アイスホッケーをやっていたのでした。

ロボット的な動きをする私と異なり、夫は流れるように氷の上を滑ります。

氷上で子どもの相手をする余裕は一切ない

それを見た他の社員は「この会社で働いて3年たつけど、今日はじめてワタルさん(夫)のことをかっこいいと思った・・・」と呟いていました。

1時間ほど楽しんだ頃、「整氷作業に入ります」というアナウンスが流れました。

すると、スケートリンクの端にあるエレベーターからブルドーザーのような大きな車が出てきて、リンクに入っていきます。

整氷作業員の方が「整氷車」と呼ばれる刃のついた特殊な車をスイスイ運転すると、スケートリンクの氷の表面がどんどん滑らかになっていきます。

珍しい光景に、皆でじっと見つめていると、夫が

「リンクは数時間に一度整氷して、いつも綺麗な状態にしておくんだよ」

と解説してくれました。
そして、その後の言葉に、一同驚きます。

夫「でさ、この整氷で削った氷は溶かして捨てるんだ

私「え!リンクを作るために氷にして、その後また溶かして捨てるの?」

夫「そうなんだよ。凍らすのにもお金がかかるし、溶かすのにもお金がかかる。もったいないよね、なんかこの氷を使えないかなあ・・・」

「確かに何かしらの形で有効活用できたら面白いよね」と相槌を打ちながら、夫の目を見た私は確信しました。

やばい。

ここから数日は、夫に何を話しかけても上の空になってしまう。

そして、それは現実になりました。

夫は「面白いアイデアの種」を見つけると、四六時中そのことで頭がいっぱいになり、将棋で言うところの「長考」に入ります

長考となる数日間は、周りがどんなボールを投げても見送られます。言葉のキャッチボールが一切できなくなるのです。

「ドラッグストアがポイント10倍セールで、信じられないくらいポイントがたまったのよ!」という私の大ニュースにも「あ・・・うん」。

子どもが夫の気を引こうとして「おとうさんに鼻くそつけるぞ〜」と言っても「あ・・・うん」。

トイレでの滞在時間もいつもの二倍になり、子どもと私からは盛大なブーイングが出ます。

もう「エルメスのバーキンを楽天カードの36回払いで買ったから」と言っても「あ・・・うん」と受け入れてくれそうなレベルです。(果たしてバーキンは、楽天カードで買えるのでしょうか。)

でもこれは、良い兆候でもあります。

きっとなんか楽しいことが起きるぞ、という予感でもあるのです。

そして数日後、ずっと黙っていた夫がついに、8畳の事務所で口を開きました。

「アイスアリーナの空きスペースに、子どもたちが遊べる氷のひろばを作ろう」


今までは整氷作業後に廃棄するだけだった氷を、人の役に立つような「価値のあるもの」に変化させられないか。

そんな長考の末に出てきたアイデアでした。

これには弊社一同大賛成。

「目玉として氷のすべり台をつくろう!」
「雪だるまとかあったらテンション上がりませんか?」
「自由に遊べる雪用のおもちゃも欲しいね~」

そんなことをみんなでブレストしながら、少しずつアイデアを固めていきました。

ホワイトボードに絵を書いて熱弁する夫と、じっと話を聞くよっしー。いつもの光景。

最大の課題は「どうやって大量の氷をストックするか」。

開催予定のスペースは普段駐車場として利用されているので、実際に施工作業ができるのは1日のみ。

しかし、氷の滑り台やひろばを作るには数日分の氷のストックが必要・・・

アイスアリーナの方に相談すると、なんと敷地内の一部を空けていただけることになり、施工までの数日間はそこに氷を貯めることになりました。

運搬方法はもちろん、人力です。

我々はイベントの4日前から毎日アイスアリーナに通い詰め、氷の廃棄室から貯蓄スペースまでひたすら氷を移動させました。

その総量、約10トン。

腰に爆弾を抱えるアラフォーメンバーしかいない我が社。
腰痛や筋肉痛に悩まされながら、なんとか必要量をストックすることができました。

削られた氷の質感は雪のようですが、想像以上に重いのです。

そして、いよいよ「氷のひろば」イベント当日です。

実施は3/22(金)と3/23(土)の2日間。

「まぁ、多めに見積もって1日100人来たら御の字だよね」と話していた我々でしたが、開始早々、予想外のことが起こりました。

ここだけ見ると、完全にスキー場

平日なのに、お客さんの波が止まらないのです。

なんなら、一日の間にリピートのお客さんが来るくらい。

今冬はほとんど雪が降らなかったこともあってか、子どもたちの食いつきっぷりは想像以上でした。

しかし今回の目玉として施工に半日以上かけて作った、まさしく我々の肝いりである「氷の滑り台」には、人影がほぼありません。

渾身の滑り台。一度は滑るけど、だれもリピートしてくれない・・・

「なぜ・・・あんなに体を酷使したすべり台が不人気で、氷を広げただけのスペースにあんな人だかりが・・・」

と我々は絶望に近い顔をしていましたが、一緒にその様子を見ていたアイスアリーナの方が、

「そ、そんなことないですよ!すべり台を楽しんでいる人もいますって!ほら、あそこに1人います!」

と必死で励ましてくださいました。

2日目は残念ながら朝から雨模様で、さすがに誰も来ないかな・・・と思っていたのですが、2日目もまさかの大盛況。

こうして、2日間で300人を上回る方々にご来場いただきました。
正直この反応には、私たちもびっくり。

氷の可能性を感じずにはいられない日となりました。

そして可能性しかなかったので、5月5日に京急線三浦海岸駅前にて「氷のひろば」を開催します!

京浜急行電鉄株式会社様主催の「三浦海岸ビールまつり」が4月27 日(土)から2024年5月6日(月)で行われます。

イベント期間中、子どもの日である5月5日限定で、同エリアにてスケートリンク整氷時に発生する氷を活用したお子さま向けアクティビティ「氷のひろば」を設置させていただけることになりました。

特設ページはこちら(4月24 日(水)10:00 より公開予定)。
https://newcal.jp/miura/

なんと、三浦市エリアでのビアフェスは今回が初めてとのこと。
京急沿線の7つのブルワリーが大集合するこの企画、ビール好きの方にとってはたまらないイベントかと思います。

小さなお子様連れのみなさん、大人はビール、子どもは氷を楽しめる「三浦海岸ビールまつり」、ぜひ遊びに来ていただけたら嬉しいです。

氷をダンプトラックにめいっぱい詰め込んで、三浦までお届けします。
みなさんのお越しをお待ちしております。




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