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今週の日記#68

学生のときは『期待の新人』みたいな扱いを受けていたのに、いざ就活をせず(せず、というと少し語弊があるができなかった結果は事実だ)社会へ出てみると、無職というレッテルがあまりにも大きすぎて、相手からはレッテルしか見えず肝心の私の姿が見えないようだった。
難しい。
そういう弱者の立場に追いやられた我々に手を差し伸べてくる輩は、輩と呼んでいる時点でお察しの通り、碌な奴が居ない。もはや何も信用ができなくなる。労働という文字を見るたびにつらさが増す。労働という概念自体に嫌気がさしてくる。コンビニへ行ってお菓子を買おうとして、そのお菓子を作るのも、陳列するのも、バーコードをスキャンするのも、そもそもこのコンビニを建てたのも、すべて労働によって成立したものだ、と考えて、吐き気がする。家に引きこもって、私は、眠ることしかできなくなる。夢のなかで、はじめてやったアルバイトの光景を見る。オーダーが聞き取れず「もう一度お願いできますか」と言う私に「1回で覚えろや」と怒鳴りつける客の姿。いまはタブレット注文だから、私と同じ思いをする店員も居なくなっただろうね。よかった、よかったね。夢から覚めて、自分が無職であることを思い出して、虚しくなった。

◇◇◇

不整脈で通院している病院で、先生が「太っている人は睡眠時無呼吸症候群になりやすく、そうなると不整脈、心筋梗塞が起こりやすい」と言いながら私のカルテの体重欄を指さしてこちらを見たので、「先生、今月からダイエットを始めたのでカルテの体重より減りましたよ」と笑顔で伝えた。「何キロ?」「2キロです」「2キロかぁ(笑)」笑われた。いまに見てろ、もっと痩せてやるからな。心に火が付く。その勢いで脂肪も燃焼してくれ。

◇◇◇

ピクミンブルームという位置情報ゲームがある。ピクミンの詳細を開くとピクミンを見つけた場所(現実のお店や施設などの名前)が表示されるのだけれど、その情報がちょっとだけ古い。このあいだ出会った赤ピクミンには「⚪︎⚪︎(店名)で出会ったピクミン」と表示されていた。⚪︎⚪︎という店は家の近所にあった個人経営の中華料理屋の名前だ。家ではしょっちゅう出前を頼んでいたので、注文して苗字を言うだけで住所を察して届けてくれるほどの仲だったのだが、私が上京して間もなく閉店してしまったらしい。ピクミンと出会った場所として表示されているということは、ピクミンブルームのなかでは、まだ店が存在していることになる。あの店のエビチリの味が懐かしくなってきた。もう二度と食べられないんだなぁ、と思うと不思議な気持ちだ。電話をかけて注文すれば届きそうな気すらするのに。直接店に行って食べていたわけじゃないから、なおさら実感が湧きづらい。その赤ピクミンは、エビチリと名づけた。

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無職を脱した。
新たな職場までの通勤ルートは2つの交通機関を利用し、それぞれに別のICカードが必要になるため、手持ちの定期入れに加えてもうひとつ定期入れが必要となった。ふと思い出して、高校生のときに使っていた定期入れを引っぱり出してきた。ちょっと使用感はあるけれど、まだまだ使えそう。
キラキラJK生活を夢見て、わざわざFrancfrancまで行って母に買ってもらった、水色の定期入れ。新しいICカードをそっと入れ、カバンのフックに引っ掛ける。また新たに始まる社会人生活を夢見て。
引っ掛けた定期入れの輪の部分が、突然崩壊した。触ると、泥団子を崩したときのようにぼろ、ぼろぼろぼろと崩れていく。合皮の寿命は製造から2〜3年とのこと。高校入学から7年以上も経ったのだから、そりゃあそうなるわな。呆然としてしまった。定期入れは捨てるわけにもいかず、そのまま丁寧に拾って元々入っていたクローゼットの奥底へと戻した。ICカードはとりあえずちいかわのシーサーが描かれたケースに入れておいた。新たな社会人生活に一抹の不安が走る。

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編み物を始めた。編み物にはセラピー効果があり、メンタルヘルスに良いらしい。海外では「ニットセラピー」なんて言葉もあるんだとか。

形から入るタイプなので、道具はちゃんとしたものをひととおり揃えた。
毛糸は全部100均。練習だからね~。
初作品。なにこれ?
2作品目。アクリルたわしとしてなら使えそう。コースターにはできない。
3作品目。それなりになってきた。
4作品目。
5作品目。
6作品目。

ここまできたらもうなんでも編めるような気がして、ニットカーディガンの編み図を見てみたら、なんか複雑そうだしぜんぜんわかんなくてウケた。まだまだ修行の道は長い。
でもたしかにセラピー効果はあるようで、編み物をしてから寝た日はポケモンスリープでぐっすり睡眠タイプと判定されることが多い。ぐっすりタイプのポケモンを捕まえたい方は是非、編み物をしてから寝てみては。

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