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ほうれん草とベーコンのミネストラ #まいにち土鍋


1.ミネストラーレとズッピエラ

美食家であったPellegrinoペッレグリーノArtusiアルトゥージは、プリモピアットと呼ばれるスープやパスタのカテゴリーを「ミネストラ」と称している。動詞はミネストラーレスープを注ぐで、語源は「給仕する」というラテン語。ほら、映画などで大きな磁器の鍋にスープが入っていて、お給仕さんが取り分けているシーンがあるでしょ。イタリア人の家庭でもフォーマルな食卓で、ズッピエラという陶磁器や銀などのスープ鍋で運ばれてくることがある。


ボローニャの農場B&Bのオーナーから「パートナーのお誕生日プレゼントにズッピエラを贈りたい!」と、特大サイズの土鍋コッチョリーノのオーダーをいただいたことがある。以下の言葉を託された。う〜ん、まいにち甘いスープになりそう。

inzuppata d'Amore 愛に溺れる
ズッピエレの棚に土鍋コッチョリーノ
Ca Binanca Dell'abbadessa



「ミネストラ」というと、パスタや豆などが入っているイメージ。イタリア人と生活をともにするなかで、なんとなく暗黙の了解で「ミネストラ」「ミネストリーナ」「ミネストローネ」「ズッパ」「パッパ」「ヴェッルタータ」など、うんうんと理解していたのだが。とにかくミネストラには、小さなパスタシュッティ(麺状でないパスタ)やトルテッリーニ(詰め物してあるパスタ)などがブロード(ブイオン)のなかに入ってる感じ。

Passatelliパッサテッリという麺を入れる地方料理もあって、素ラーメンチックで胃が喜んだ料理もあったな。

 PASSATELLI  
ボローニャの老舗レストランDa Cesari にて 


2.ほうれん草とベーコンのスープ


さて、スープ皿コッチョリーノでミネストラをつくろう。バターとベーコンで旨味を出したあと、ほうれん草を加えるだけのスープ。味の調整が必要だったら塩を少々お好みで。正確にいえば、これにお米を入れたり、小さなマカロニを入れたらミネストラになる。

一人前、あっとういう間につくれるのでどうぞ。
今回はIH調理器で。スイッチオフにしたあとも保温ばっちり。


3.アルトゥージのミネストローネ



最後に、おまけで冒頭のArtusiアルトゥージの著書「La scienza in cucina e |l'arte di mangiar bene厨房の学と食の術」について書き足そう。この本は、リボルノで食べたミネストローネがきっかけとなったと言われている。もう「ミネストラ」なのか「ミネストローネ」なのか、なんだかよくわからなくなったかもしれませんが、よく知っているあの具沢山のスープ。

悪洒落のようなきっかけ(※)から、美食家だった彼は執筆を進め、1980年代後半に自費出版。最初は全く売れず伸び悩んだというが、生涯独身の美食家の追想録として、流行の波に溺れず生き続ける硬派さがなんともいえない。(広辞苑のように分厚いイタリア語原文と、一昨年出版された和訳本の2冊を持っているが、皮肉っぽさは原文の奥に隠れているように思う)

(※)リボルノのレストランで初にミネストローネを食したあと、ホテル泊にて体調を崩したアルトゥージ。あのミネストローネのせいだ!と憤慨しながら翌朝フィレンツェに移動。彼の耳に入った訃報はホテルのオーナーの死。コレラ蔓延直前のことで、オーナーは犠牲者の一人目であった。これをきっかけに、美食家である彼の執筆が始まったとある。

La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene





5月15日(日)
煮る「スープ皿コッチョリーノ」

ほうれん草、ベーコン、バター、塩


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