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ホタテの豆乳クリームペンネ #まいにち土鍋

深夜までオフィスで書く仕事とインタビュー出張を重ねる日々を過ごしていたころ、しつこくても後ろにひっついて行こうと思う上司がいた。わたしの能力と体力はギリギリだったけれど、人間の手本がそばにいたので楽しくてたまらなかったのだ。

いつも後ろにひっついて歩くので、仕方ないわねえと、だいぶ面倒をみてくれたようで。

うつわをつくる仕事をするならおいしいものを食べて飲みなさいと、出張先では郷土料理を、東京の地下の渋い居酒屋で日本酒を、一等地のビルの最上階でカクテルを、展覧会の期間中はおしゃれして、友だちとは行けないような割烹や高級レストランに連れて行ってくれた。お皿やコップを、空間を、会話を目と耳に焼きつけながら、いつもスキップしてついていってたと思う。

イタリア修行の数年間も、迷いなく応援の言葉を投げてくれた。年1度は海を渡り訪ねてくれ、通訳として付き合ってくれればいいからと、出張以外の旅もたくさんした。わたしが向けるカメラのファインダー先をいつもおかしな人ねえと笑っていたけれど。


その後、わたしには家族ができた。子を孫のように愛し、夫を息子のように心配してくれた。

彼女が、何年も何年も、毎年自宅に贈ってくれたホタテ。それを解凍して、彼女が好きだったクリームパスタを作った。あの日二杯目のビールのおかわりを半分こしたあと、突然入院して面会もできないままお別れしたので、本気でつくったのよ。

お誕生日おめでとう。



戦禍にいる世界の友だちは空腹だろうか。
恐怖のなかで。どうか生きていてください。

3月1日(火)
和える「耐熱大皿コッチョリーノ」

ペンネ/ホタテ/タマネギ/豆乳400cc/米粉大さじ2/明太子/塩/胡椒/小口ネギ/バター少々

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