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7日間ブックカバーチャレンジ

2019年末から始まった新型コロナウイルスによる世の中の混乱。外出がままならない時期もありました。その時にSNSで巡ってきたのが7日間ブックカバーチャレンジ。自分の好きな本を1週間かけて7冊紹介するという企画でした。当時の文章に手を加えて、ここに紹介させていただきたいと思います。


一日一冊、選りすぐりの本をお届けします。内容は説明しませんが、時に思い出を語るかもしれません。

【1日目】愛なき世界(三浦しをん)

とにかく装丁が美しい。帯を外すと一段と美しく、カバーを外すとそこには宇宙が広がります。この本を手に取って、その目でお確かめください。ほんとうは「風が強く吹いている」を紹介しようと思ったけれど、本棚を探しても見つけられず…。どちらの作品が好きかと問われたら甲乙つけがたいけれど、手元にあったこちらの書籍に軍配が上がりました。


【2日目】スカラムーシュムーン(海堂 尊)

もう何年も前の冬、インフルエンザワクチンが不足した騒動の後に文庫版を読みました。その出来事にインスパイアされた作品かと思いきや、ハードカバーは騒動の数年前に出版されていたのでした。時に小説は未来のシナリオとなります。氏の作品はエンタメ性が高く面白く読めますが、多くの作品の根底に流れる主張は一貫しています。Ai(オートプシーイメイジング、死亡時画像診断)の導入による死因不明社会の解消。容易でない問題と認識しているので、ここで賛否を議論することは避けておきましょう。


【3日目】東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ(遙 洋子)

書店の棚を端っこから順番に見て歩いていたら目についた一冊。私を上野千鶴子氏に引き合わせてくれた本でもあります。歯に衣着せぬ物言いでアンチも多い先生ですが、人となりの好き嫌いはともかく、その存在を肯定します。時代に選ばれて意識改革を牽引する存在は、性別に関わらず賛否に関わらず、時には過激な発言をしようとも、たとえその主張に違和感を感じたとしても、否定できないと思うのです。満場一致は不健全と考えているので。そして、批判を恐れず信念を貫く強さを見習いたい。


【4日目】グリーンレクイエム(新井素子)

この作品を読んだ時から植物の神秘に惹かれ始めたのかもしれません。でも切り花も鉢植えも、私の手にかかると元気を失うのですが……。新作が出るのを待っては読み漁った高校時代。興味の中心は野球だったと記憶しているけれど、案外、乙女心も持ち合わせていたようです。
高3の夏休みの入口で、手持ちの新井作品十数冊を3日がかりで全部読み返したら、頭の中の言葉遣いがおかしな事に。独特の文体に毒されました。最近の作家になぞらえるなら、有川浩かなと思います。新井素子の文体は極めて個性的なので、似ていると感じるのは作品が纏う雰囲気です。


【5日目】アンジェリーナ(小川洋子)

もちろん「博士の愛した数式」は美しくて儚くて、心を震わせながら何度も読みました。でも私が大切にしているのは、我らが佐野元春に捧げたこの一冊。メロディから自由になり早口で語る歌い方、今ではラップを取り入れるのが当たり前にカッコイイけれど、当時の日本にはそれを受け入れる土壌がありませんでした。彼がヒット曲の山を蹴散らして移り住んだNew York Cityから運んできた新しい風が、この国を吹き抜けるまでには長い年月を要しました。


【6日目】ストロング・メディスン(アーサー・ヘイリー)

大学生の頃、何度読み返したか分からない一冊。明日は試験だから早く寝ようと思うのに、つい読み始めてしまい気づくと窓の外が白み始めて……。しまった!と思いながら寝不足のまま試験に臨んだこともありました。
やがて社会人となり、入社式で社長が創薬に携わる者の必読書としてこの本を紹介し、自身もその教訓を忘れることのないよう日々手に取っていると話した時には、手を挙げて賛同の意を示したい衝動にかられました。
一日一冊の掟を破って原著と共に。「£3.58」と印字された値札のシールが貼られているので、大学3年の夏にホームステイ先のロンドンの書店で購入したと思います。


【7日目】二重らせん(ジェームス・D・ワトソン)

DNAが二重らせんであることはとっくに教わっていたのに、この書籍の結末を知っていたのにワクワクしながら何度も読みました。
大学3年の夏、イギリスでホームステイをした折には、この研究の一環としてDNA分子のX線回折が行われたロンドン大学キングスカレッジの玄関前に立ち、記念撮影もしました。命を紡ぐ奇跡の礎、そしてセントラルドグマの原点。人類はそんなDNAの正体を暴き、思うように操作する技術を手に入れた唯一の生物です。ヒトのゲノムサイズは約30億塩基対。比してSARS-CoV-2のゲノムはほんの3万塩基対ほど。私たちはちっぽけなウイルスに屈するわけにはいかないのです。
再び原著と共に。大学2年の夏休み、旅行で訪れたハワイ大学のブックストアにて購入しました。


私の7冊は以上です。お付き合いありがとうございました。


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