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雑記:たまむんのイケメン自由律俳句

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イケメンの雰囲気芬芬たる自由律俳句をご紹介!
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まだ死ねず透けるまで米研ぐ(地野獄美)

まだ死ねず透けるまで米研ぐ(地野獄美)

第十八回鉄塊鍛錬句会投句作品。

わたくし、この句がめちゃくちゃ好き。ほんとにいいですね。生きることの苦しさ、やり切れなさ、でも生きなきゃならないから、喰ってやるぞという決意のようなもの、土臭い強さ。それでいて感受性が豊かすぎて繊細である感じも鮮やかに浮き上がっています。

泣きたい気持ちのときも、家族がいると台所に立たなくてはならなくて、そのことがほんと

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夜の鏡があつて外套の襟が折れない(河東碧梧桐)

夜の鏡があつて外套の襟が折れない(河東碧梧桐)

本日は大御所の句をば(^皿^)

この句は去年の自由律俳句フォーラムでも、いろんな解釈が語られたけど、わたしは悪い男の句だと思っている。

家人が寝静まった深夜、こっそり出かけようとする男。かなりのオシャレさんで夜遊びが大好き。

家人を起こさぬよう灯りをつけずに身支度をしている。

いつもの癖で鏡を覗き込んで外套の襟を直そうとするんだけど、暗くて

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お前の与太もさみしい満月(小笠原玉虫)

お前の与太もさみしい満月(小笠原玉虫)

まさかの! 自句をぶち込んできたわたくし!!wwwww(^皿^)

飲んだ帰り道。酔ったきみはバカな大法螺話を楽しそうにまくし立てている。けれど下戸のわたしはいつもこのような話をシラフで聞かされているわけです。

じぶんの冷静さも、どうせきみがじぶんの言ったこともあとで覚えていないだろうということも、またきみの法螺が永遠に叶いそうもない正真正銘の法螺である

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新しい靴で辞めた(天坂寝覚)

新しい靴で辞めた(天坂寝覚)

彼は雨の句でいいものがたくさんあるけど、今日はわたし自身が最も好きなこちらを。

いいですね。この短く、ブツッと言い切る感じ!! しかも実に自由律俳句っぽい、とんがった雰囲気です。

どうもこの「新しい靴」は白い靴のような気がする。イメージは工場の派遣工。真新しい白いスニーカーで行ってみたら、どうにもおさまらないことが起きた。天敵の工場長から理不尽な罵声を浴びせられ

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膿み月に千鳥足がゆく(畠働猫)

膿み月に千鳥足がゆく(畠働猫)

膿み月に千鳥足がゆく(畠働猫)

第十二会鉄塊鍛錬句会投句作品。

働猫さんは、わたしがもっとも「痛み」を感じる詠み手のひとり。好きなんだけど、ズキリと胸に痛みを覚えるので、向き合うのに覚悟がいる作品を詠まれます。

「膿み月」は彼の造語であるらしい。大きく低い、赤い月が目に浮かびます。

お酒を飲んだ帰り道。けれど、楽しさとは程遠い、厳しい孤独、そしてめまいを覚えるような不安に支配されているかの

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ひび割れた眼鏡で時間通りに来た(藤井雪兎)

ひび割れた眼鏡で時間通りに来た(藤井雪兎)

いいですね。短い句のなかに映画のワンシーンのようなストーリー性が見えますね。

友人は眼鏡の紳士。非の打ち所のない優雅な身のこなしで、長年の付き合いだが怒ったところなんて一度も見たことない。

久しぶりに待ち合わせて、休日を共にすることになった。

少し早めについてしまったわたしは、賑わう街の一角で彼を待っている。ぼんやりと突っ立つわたしの前を、楽しそ

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