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膿み月に千鳥足がゆく(畠働猫)

膿み月に千鳥足がゆく(畠働猫)

第十二会鉄塊鍛錬句会投句作品。

働猫さんは、わたしがもっとも「痛み」を感じる詠み手のひとり。好きなんだけど、ズキリと胸に痛みを覚えるので、向き合うのに覚悟がいる作品を詠まれます。

「膿み月」は彼の造語であるらしい。大きく低い、赤い月が目に浮かびます。

お酒を飲んだ帰り道。けれど、楽しさとは程遠い、厳しい孤独、そしてめまいを覚えるような不安に支配されているかのようです。

いつもの帰り道のはずなのに、暗く、おぼつかなく、永遠に続くかのように感じます。たったひとりで、いつまでも終わらぬ夜道を歩く。俺は何処へ向かっているのかな。いつしか街はキリコの絵の中のそれのように、暗い原色の悪夢へと変わっていく。

ここから出なくては。
でも、いいか。このままでも。

そんな投げやりな落ち着きに支配され。静まり返った地獄をゆっくり、いつまでも歩き続ける。そんなイメージです。

働猫さんの句は、厳しい孤独と同時に、不思議と水気を含んだ色っぽさを感じさせます。詠み手は男性ですが、ふっくらとした色白の手の人なんじゃないかと思うような。孤独な句を詠みつつ、同時に奇妙な包容力のようなものを感じさせる。そこが彼の最大の魅力と勝手に思っています。

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