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【漢方のちから】清暑益気湯を服用する【患者視点】

ヨルシカの「花に亡霊」を聴いている。

「もう忘れてしまったかな 夏の木陰に座ったまま・・・」

梅雨が2週間で終わり、気温は36度まで上がっている。歌のように木陰でアイスを頬張るくらいでは、生きていけない。

朝方、路地を北側から東側に曲がると、そこは太陽と言う名の特科大隊が狙う突撃破砕地帯となっていた。熱を帯びたアスファルトは肉を焼けるほどの温度を反射して、私に襲い掛かってくる。
その路地を足早に通り過ぎようとすると、汗がぶわーと噴き出して止まらなくなった。もちろん汗をかいても涼しさを感じることはない。
「おファックですわ~」
流行りのお嬢様言葉を叫びながら、下を向いて職場を目指した。

鬱病というのは、意外にも気候に左右される病気だ。低気圧が近づくと頭が痛くなったりする人がいるだろう。それと同じで、鬱病も気候に合わせて気分が上下したり、身体に不調が出たりする。
鬱病歴5年の私も気候に左右される部分が強いのだが、私の場合温度によって病気の重さが決まる。寒い日は調子がよく、暑い日は調子が悪いのだ。
「暑さが苦手」という特性上、夏の鬱病というのは想像を絶するもので、食欲がゼロになって数日間絶食したり、何度も自傷行為をしたり、希死念慮が絶頂期を迎えたりする。死の危険がある。

主治医は、私と夏の相性の悪さを注視していて、心配していた。
私の現在の処方は
サインバルタカプセル60㎎
オランザピン錠10㎎
デエビゴ錠10㎎
エバミール10㎎
甘麦大棗湯2.5g
などなど、抗うつ薬と睡眠導入剤を織り交ぜて処方されている。
この他に高尿酸血症の薬としてフェブリクを毎日2錠飲んでいる。

サインバルタに関しては効き目を感じる一方で、夏場の抑うつ的な落ち込みに対処しきれていなかった。しかし詳しい人ならご存知の通り、サインバルタは処方できる最高容量まで出ており、これ以上増やすことは法律的にできない。
もしこれ以上抗うつ薬を増やすなら、オランザピンの増量となるが、主治医も私も、これ以上の抗うつ薬の増量は「身体に負荷がかかりすぎる」という事で、消極的であった。

夏になると具合が悪くなる私の病気。主治医はどのように対処するか、私と一緒に考えてくれた。

前回の診察の時、主治医は古びた文庫サイズの本を用意していた。
ペラペラと本をめくり、付箋の貼ってあるページに辿り着いた。

「清暑益気湯」

「夏バテ的な症状に対処する、と考えると、西洋医学にはそういう考えはありませんので、東洋医学になります」
清暑益気湯は、夏の食あたりや夏の倦怠感などに効果があるとされる漢方薬だ。甘草を中心に様々な生薬を組み合わせた薬である。

清暑益気湯の解説は下記の記事が詳しい

夏の暑さに耐えられるようになれば、鬱病も緩和される。というのが主治医の考えであった。

服用するのは、毎日朝と昼。朝ごはんを食べたあと、2.5gの粉薬を飲む。
薬は甘草の甘さがあり、苦みは感じない。お菓子感覚で飲める薬だ。

効果のイメージとしては、エナジードリンクに近いかもしれない。カフェインの入ってないエナジードリンク。飲むと元気が出て、活力がわいてくる(ような気がする)。
実際、6月前半は休みがちだった事業所も、薬を飲み始めてからは休まず通っている。

漢方薬の良さは、副作用が少ないことも挙げられる。現代医学の薬に比べて、圧倒的に副作用が少ない。飲み合わせの問題もない。このため、現状服用している抗うつ薬と同時に飲むことができる。

朝、ちゃんとご飯を食べ、サインバルタと清暑益気湯を服用すれば、暑い出勤もなんとかこなせる。

熱い風が路地を吹き抜ける。
自販機にコインを入れ、額に当てた。太陽光は相変わらず強く射している。
夏はこれからだ。
少しずつ歩いて行こう。


インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。