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2019.04.06 北海道コンサドーレ札幌 vs 大分トリニータ @札幌ドーム ~ミシャシステムってどうでしょう~

札幌に降り立って、真っ先に向かったのは南平岸。すっかり「水曜どうでしょう」の聖地となった南平岸高台公園は、当たり前ですがどうでしょうの前枠・後枠に映し出される光景そのもの。ですが、実際に見てみると傾斜はなかなか急峻で、「いやいやいやこの角度を、あの年齢のミスターが全速力で走ってきてるの?そりゃ確かに危ないよぉ藤村くぅん!」という気分になります。なお、ご存知の方も多いかと思われますが、隣接していたHTB本社は札幌時計台のすぐ近くに移転しています。

南平岸のもう1つの名物、「MEN-EIJI HIRAGISHI BASE」さんの、魚介豚骨醤油ラーメン。北海道では有名なラーメン店です。歯ごたえのあるゴボウと、柚子の香りを溜め込んだジュレが特徴です。お店の雰囲気も良くて、この時は車椅子のお客が来店していたのですが、店員さんがとても丁寧に対応していました。

さすがドーム球場。サッカーの観戦席に向かうとは思えない階段からの光景。

さて試合です。広島時代、師弟関係にあったミシャと片野坂の両監督。3バックが攻撃時に2バックに変わる、攻撃的変形システムを採用する両チームですが、その運用意図は大きく異なります。

個人的印象ですが、ミシャのコンセプトが「ピッチのいる11人、全員の攻撃能力を最大限に引き出す」のに対し、片野坂監督のそれは「FWの攻撃能力を最大限に引き出す」というものだという気がします。長身のFW二人に加え、その後方にチャナティップ、突破力のある両サイドトップ。さらにはボランチに留まらず4バックを構成する最終ラインの選手すらも積極的に攻撃参加をする札幌は、まさにミシャの攻撃的サッカーの具現化。一方で大分は攻撃の起点はあくまで右サイドの松本怜と、相手チームバックライン裏へのパスを狙い続ける3バック+GKであり、FWが自由に動けるエリアを創出するために陣形をしっかり固めた、実際はポゼッションよりカウンター属性の強いチーム。小塚や前田やティティパンといった中盤の攻撃能力はあくまで、守備的なチームに対する二の矢という側面が強い。昨年のJ2で二桁得点をしたFWが4人もいた事実は、大分の戦術がFWの攻撃能力を引き立たせている傍証ではないでしょうか。

さらに、この日の試合は左サイドがキープとドリブルが特徴の高山から、縦に滅法早い星に変わったことで、全体の攻撃特性が一段とカウンター属性に変化していました。開始2分、電光石火の先制点はまさにそのスタメンの意図通りのものであり、右サイドを起点に札幌ゴール近くに進出した大分はペナルティエリア前で左サイドにボールを振ると、単騎で駆け上がっていた星がゴールラインギリギリで折り返すと、そこにはマークを振り切った藤本が待ち構えていました。今や今期J1の最大級のトピックであり、J最強のバックラインブレイカーとなった藤本が、得点王単独トップとなる先制点です。

いきなりの失点となりましたが、札幌は恐れを知らず攻撃を仕掛けます。フィジカルに長けた2トップは1対1で対応するには危険で、絶えずカバーに走り回り、さらにその後方で走り回るチャナティップの対応にも追われるDFには休まる暇もありません。浦和監督時代はセットプレーの練習をほとんどせず、セットプレーでは得点の気配はないのに失点の実績は申し分ないミシャでしたが、今の札幌にはセットプレー向けの2トップと優秀なフリーキッカーがいるので、たとえ細かい練習などしなくても危険極まりありません。そんなんズルいじゃん、そりゃないぜミシャ!

タイ代表、チャナティップとティティパンの2ショット。いずれもチームに欠かせぬ頼れる選手としてこの日も活躍。この試合はタイ本国でも中継されたそうです。

ポゼッションで圧倒し、敵陣を崩そうと目論む札幌と、陣形を固めつつ、反撃のチャンスを絶えず伺う大分の駆け引き、勝ったのは大分でした。前半26分、中盤から出てきたボールを松本怜が運び、上げたクロスに藤本が反応。なんとか食い止めようと札幌DFが伸ばした足に当たったボールが、そのまま札幌ゴールに。痛恨のオウンゴールで、札幌2失点目です。堅い守備を崩しきれず、しかも裏の抜け出しに対応ができず、さらに39分に決定的なチャンスを作られた札幌は、攻撃の勢いが失速しかけていましたが、そこにとんだ珍事が。頭部を強打する危険なプレーで中断した後の再開時、DFがいったん戻したボールを、GK高木がなんの疑問を持たずに手で掴んでしまいます。選手も観客も『?』と意味が分からなかったうっかりプレーで、札幌がFK。

珍しいペナルティエリア内での直接FKの図。

これも決めきれなかった札幌、2点のビハインドで後半に向かいます。

後半、DFに潰し役のキム・ミンテを投入し、正確なキックを蹴る宮澤を一列上げた札幌が、ギアをさらに上げて攻勢に出ます。特に藤本と得点王争いを演じるアンデルソン・ロペスの切れ味は凄まじく、一人で3人を立て続けにブチ抜くプレーを披露。大分がゴール寸前で掻き出す場面が増えていきます。さらにルーカスも投入した札幌に対し、大分は三平に変えてオナイウ阿道を投入。鹿島戦同様、攻撃の起点を増やそうと目論みますが、オナイウの位置どりに迷いが見え、充分には機能しません。

ついに69分、大分が失点。ルーカス投入時に左から右に移動していた中野のクロスから、鈴木武蔵に向かうボールをゴールライン上でDFが跳ね返そうとして及ばす、オウンゴールとなり、これで1点差。

大分の選手交代は続き、ティティパンから丸谷、これは明確に守備の強化であり、さらに藤本を下げて伊藤涼太郎を投入。終盤の大分の前線は、浦和レンタル組の二人に託されます。

試合中に確認し合うオナイウと涼太郎。

1トップにオナイウ、2シャドーに涼太郎と小塚という形でバランスは修正され、カウンターの精度は若干改善されますが、その回数は少なく、札幌の攻勢は止まりません。終盤になるにつれて連携した攻撃は薄れていきますが、そもそも個人能力の高い選手だらけなので、一発でやられる危険と隣り合わせの、長い長いロスタイムを過ごします。

それを見事に絶え抜いて、大分、2-1の勝利!

力強い旗振りと大歓声で選手を迎えるサポーターの図。

”L"ove "T"rinitaのハンドサインを翳しつつ、ヒーローインタビューを終えた藤本もやってきました。

試合終了後の、札幌観光。クラーク博士の展望台に向かう路線バスも、札幌ドームから歩いて15分くらい?のところを走っています。トリニータユニを着ていた方が幾人もおられ、「勝ちましたねえ」「これで気持ちよく北海道観光できますねえ」と、双方ご機嫌に挨拶を交わします。

がっかり名所として名高い時計台。国内観光名所の例に漏れず、外国人観光客の方が多く見られましたけど、やはり「GAKKARI-SPOT」として有名なんですかね?

札幌で大人気の回転寿司チェーン、「トリトン」。私が行ったのは夕食にはやや早い18時前でしたが、それで40分待ち。待っているのも大変でしたが、接客する店員さんはもっと大変。若い娘さんの店員が、席に案内した後に客に注文の説明をしてくれたのですが、あまりの忙しさで言葉が飛んでしまい、途中から「ハラホロヒレハレ」みたいな言葉が溢れ出し、慌てて申し訳ありません、と謝る始末。グルグル目玉の店員さんに、「大変だけど頑張って」と声をかけるしかありませんでした。

お寿司のネタはまさしく絶品。ネタは定番モノが多く、ご当地ならでは!というのはあまり目立たないですが、普段食べているネタが、普段は滅多に食えないほどにレベルが超高いという、正統派の実力者、という印象の回転寿司です。お値段もお手頃ですよ!

師弟対決と話題となり、お互いのチームコンセプトが真っ向からぶつかり合った熱戦は、片野坂監督に軍配が上がりました。大分はこれで首位と勝ち点差2の4位。昇格組としては申し分ない、順調な出だしで序盤をくぐり抜けています。松本や広島といった強固な守備を克服していない問題は残されたまま、注目を浴びるにつれて相手チームの警戒も強まっていくでしょうが、この勢いをどこまで続けることができるのか。

翌日は列車に乗って北海道観光へ!…って、あれえ?

更新は不定期ですので、気長に待っていただけると幸いです。Jリーグのサポーターの方はどこのチームでも大歓迎。煽り合いではなくゆるいノリで楽しめたらいいなと思っています。