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2019.06.19 浦和レッズ vs 蔚山現代@埼玉スタジアム2002 ~アジアは進化している、浦和は停滞を打ち破れ~

当然の監督交代に揺れた浦和レッズ。オリヴェイラから”アウトレイジ”大槻監督の再度の登板以降は、リーグ戦を1勝1分、いずれも後半ロスタイム間際の劇的な得点によって切り抜けて、ACLのトーナメント1回戦に臨みます。

日本代表のメインシェフとして有名な西芳照シェフ。浦和レッズのACL遠征の時も帯同してくれる、頼れるお方のグルメイベント。現地到着時には当然のように全品売り切れ。もうちょっと用意していただきたかった(泣)

ということで、本日のスタグルコーナーはこちら。なんと注文を受けてから焼き上げるピザ。チーズも本格的なモッツァレラでとろとろの美味しさ。

選手入場とともに掲げられる3色ビックフラッグ。

浦和は出場停止の長澤に代わりにエヴェルトン、ACL登録外のマルティノスに代わって杉本健勇、センターバックのマウリシオではなく鈴木大輔と、メンバーを入れ替えながら試合に臨みました。

最近は平日開催のACLでも多くのサポーターが来日する対戦チームも増えてきた中、蔚山現代のサポーターの数は指折り数えられるほど。2万人規模の浦和サポ相手に懸命に声を出すサポーターの声援を背に、蔚山現代は、まるで製図したかのように綺麗に整えられた4-3-3ラインを形成しました

 蔚山は浦和最終ラインへのプレスはほぼ完全に放棄して、センターサークルを超えてきてからのパスコースを切る守備に専念します。今季のリーグ戦ではポゼッションの優位を奪えず、ゲームメイクに腐心するのが常であった浦和が、この試合は大きくポゼッションを掴みます。山中、森脇の両サイドが攻撃的に上がり、興梠と武藤の2シャドーが密集した敵布陣の中を目まぐるしく動き回り、チャンスを伺う。その味方の動きに助けられ、最前線で一人の男が奮闘します。

今季、期待されながら浦和加入を果たした杉本健勇。ここまでは先発で出場しても、自分のプレーが全く出せず、ただピッチ上を彷徨うような有様であった彼でしたが、この試合はほぼゴール前でのプレーに専念できるような状態で、その真価を大いに発揮します。ゴール前で競り合いポストを演じ、ラインの裏を狙って走り、チャンスとあればシュートを放つ。

その努力が報われたのは37分でした。中央右寄りで興梠から受けたボールを青木が前方へクロス。それにヘディングで合わせてゴールへ上手く流し込み、先制点をもたらせます。

一見、理想的な展開に見えた浦和。しかし、その一方で、不穏な気配もまた、そのすぐそばにまで迫りつつありました。激しい前線とサイドの運動量は、次第にそのプレーの精度を落としつつ、余裕があり過ぎるボールキープは、選択肢の多さ故に逡巡をもたらしつつ、そして奪った先制点は、それまでの張り詰めていた空気を、あまりに不用意に緩め過ぎてしまいました。

この日のスタジアムのピッチは、夏枯れ対策のためか芝が深く、選手が足を取られる場面、ロングボールの足が止まりサイドで残る場面が目立ちました。その不安定な足元もまた影響したのでしょうか。先制点からわずか5分、ボランチの位置にいたエヴァルトンが、不用意なボールタッチからミス、一気に蔚山のカウンターを浴びます。左サイドを駆け抜けた選手からクロスが上がった時点で、エリア内シュートエリアに間に合った蔚山の選手は一人だけだったのですが、マークの位置にいた山中、槙野両選手の対応もまた軽く、ほぼフリーのヘディングを許し、あっさりと同点に追いつかれてしまいます。

大槻新体制以降、両サイドがボールを運びチャンスを演出する場面の増えた浦和ですが、カウンターに対して脆弱な姿を晒す場面も目立つようになり、その対策はいまだに練られていないのが現状です。

後半に向けてのビックフラッグ。

後半も、浦和のポゼッションの優位性は変わりませんでしたが、浦和の攻撃の迫力は大幅に落ち込みました。ミスに対して臆病になった部分に重ね、前半に飛ばし過ぎた反動、特に両サイドのプレー精度は目に見えて低下し、クロスを生かすべく中央で頑張っていた杉本の活躍の機会も減少してしまいます。

浦和は杉本に変え汰木を投入。ドリブルで中央をこじ開けにかかり、続けてイエローをもらった森脇を宇賀神に交代。攻撃のパワー維持に努めますが、次第に蔚山のカウンターに肝を冷やす画面が増えていきます。

この日の蔚山は実に老獪でした。

もともとアウエーで無理することのないプランでもあったのでしょう。自信がある守備を確実にこなし、エネルギーの浪費を抑え、カウンターの精度維持に努める。勢いと精度が時間を追って低下する浦和のプレーに対し、蔚山のプレーは終始安定していました。80分、浦和が大きなチャンスを逃した直後、蔚山はセンターラインからわずか3人しか選手が飛び出さないカウンターを見事な連携で決めて、勝ち越しに成功します。

韓国のチームがJリーグチームと対戦するとき、ラフプレイ寸前のチャージすら厭わない、激しいフィジカル勝負になるのが常でした。しかしこの日の蔚山現代は、あくまで整備された戦術、論理的なゲーム展開、研ぎ澄まされたテクニックで、浦和を凌駕して見せました。

試合は1-2で敗戦。アウエーゴール2失点の現実が、重くのしかかります。

勝利という目的のみに特化していたと言っていいオリヴェイラ監督時代。結局それに徹することもできず、彼を切り捨てた浦和レッズに残されたのは、ミシャ時代以降のあまりにも長い空虚な停滞、という事実でした。大槻監督になってから攻撃の再設計が行われ、試合のコンセプトは明確化しつつあるように思います。この試合の杉本の躍動はそれ無しではあり得ません。しかし、いまだ欠点は多くチームとしての連携は乏しく、選手の技量に頼る場面が多い現状は、選手各個人への過度なプレッシャーから、ミスによる自滅のような試合展開を招き寄せています。

リーグの首位争いからも大きく離され、ACLも窮地に立たされた今の浦和に、もはや猶予はありません。故に目前の結果にこだわる一方、今後のチームをどのような形に作り上げていくのか。絶大な人気を誇る大槻監督という切り札を、このような形で使わざるを得なかった代償として、チームはそのビジョンを明確化していく必要があります。そうでなければ、大槻監督との別れもまた、悲劇となってしまうことは避けられません。

浦和レッズがアジアに示すサッカーとは、どのようなものか?

その答えの片鱗を、アウエーの残り90分で我々は見つけることができるのでしょうか。

敗戦に打ちひしがれる選手を、サポーターは盛大な拍手と激励のコールで迎えます。

そうです。まだ何も諦める必要はありません。

試合終了後、見惚れるほどに赤い月が登っていました。

更新は不定期ですので、気長に待っていただけると幸いです。Jリーグのサポーターの方はどこのチームでも大歓迎。煽り合いではなくゆるいノリで楽しめたらいいなと思っています。