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2019.06.30 大分トリニータvs浦和レッズ @昭和電工ドーム大分 ~あなたの街にあるサッカーは、幸せですか?~

 ついにこの日が来てしまいました。

思えば始めて大分トリニータの試合を見に行ったのが、2015年の町田とのJ2J3入れ替え戦第一試合。その試合に敗れ、大分のJ3降格が濃厚になった時、大分が今度、J1に昇格するのはいつになるのだろう。浦和が大分に乗り込んでアウエーを戦う、その応援に行くことができる日が、果たして今後、来るのだろうか…。そんなことを、野津田の町田市立陸上競技場からの遠い遠い下山途中、呆然と考えていたことを覚えています。

それからわずか4年。

よもやこんなに早く、J1での浦和と大分の対戦が実現するなんて。

しかも前半戦最終節で、大分が6位、浦和が10位とは…。

こうなると、大分のこの奇跡のような復活劇を喜んでばかりもいられません。大槻監督就任後、調子を取り戻しつつある浦和は、ここで大分を下し、上位戦線に迫りらなくてはなりません。浦和がACLの予選突破した影響を受け、土曜日開催から変更。日曜19時の試合開始という、アウエーには厳しい開催時間となってしまいましたが、私にとっては貴重な一戦。めったに取れない有給を奪い取り、さあ、大分へ!

実は浦和レッズの観戦は、ほぼ完全なホームオンリーで、アウエーに行った記憶がトンとない。前回リーグの試合でアウエーに行ったのはいつだっけ?と記憶を辿っていたら、どうやらなんと10年以上前、2007年の12月1日の日産スタジアムじゃないか?と思い出しました。

なお、この試合をググると、浦和サポにとっては相当なグロ画像が出てきますので、御注意。

この日の四日前に開催されたACLでは韓国でのアウエー戦で3-0。見事にベスト8に進出した浦和ですが、中一週の大分と比較して試合間隔で大きなハンデを背負い、杉本トップでマルティノスとナバウトの2シャドー、中盤には柴戸を起用するなど、ターンオーバーでこの試合に臨みます。一方大分も浦和からレンタル移籍をしているオナイウ阿道と伊藤涼太郎はベンチ入りできず。セカンドストライカーとして先発に定着していたオナイウに代わっての出場は後藤優介。そしてコパ・アメリカで日本代表として活躍した岩田も、先発復帰となりました。

大分サポの気合の入ったフラッグが見守る中、選手入場。

負けじと滾る浦和サポ。

この試合は、月並みな言い方になりますが、「個人の浦和と連携の大分」という構図になりました。チームとしての攻撃の構築が疎かなまま、リーグの半分を過ごしてしまった浦和。ましてこの試合は選手が入れ替わっている為に尚更、連携には期待できません。結果として中盤に運動量があってプレスを継続できるナバウト、柴戸、長澤などを並べ、とにかく中盤を自由にさせない。前線では杉本に体を張って頑張ってもらい、その後方に配置されたマルティノスに攻撃のタクトを委ねる格好となりました。

結果、中盤は激しいプレスが飛び交い、開始直後の藤本のヒールシュートなど散発的な場面を除いて、お互いに意図した効果的な場面はなかなか作れませんでしたが、浦和が体力の消耗を避ける為に大分最後方へのプレスは敢行しなかった為、大分はバックラインで左右にボールを配りつつ、浦和中盤を掻い潜るサイドアタックを敢行。チャンスを演出します。

この日は九州各地で被害が懸念されるほどの大雨が降った日で、昭和電工ドームの屋根も閉じた状態での開催となりました。グラウンドはかなりの湿度と温度になっていたのでしょう。途中で給水タイムが取られます。その時間を利用して指示を飛ばす大槻監督。

この時の修正が効果的だったのか、左サイド一辺倒だったマルティノスが、この給水タイム後にフリーな位置どりをして、大分の守備陣を撹乱、浦和が若干、盛り返しつつ、前半は0-0で終了します。

カッパを着て河童コスプレというニータン。

前半を凌ぎきったのはある意味、浦和の狙い通りであったでしょう。相手が疲れてきた後半、温存していた興梠や武藤の投入で相手を仕留める。そういう意図があったはずです。しかし、その意図を打ち破らんと、爛々と目を光らせていた男が一人、後半になって牙を向きます。

大分の最前線で前半、藤本憲明はマウリシオのマークを受け続けていました。裏に抜けるタイプのFWに時々後手を踏むことのあるマウリシオはこの試合、藤本に強く警戒していました。大分が前線にボールを向けるたび、藤本とマウリシオが体をぶつけ合う。そのバトルをマウリシオが凌いでいたからこその前半無失点でした。

しかし、50分。中盤で小塚がボールを受けた時、藤本は槙野の手前にいました。小塚がボールをトラップ、浦和のプレスを避けてクルリと一回転しているわずかな時間に、藤本は猛然とマウリシオの背後目掛けて走り出します。マウリシオはボールの出しどころである小塚を見ていて、その動きに全く気づかなかったのでしょう。自分の背後に飛んでいくボールを目で追って、そのボールを足元の収める藤本の姿を目にした時、慌ててダッシュしますが、時すでに遅し。藤本の真骨頂であるDFとの駆け引きを巧みに制し、大分が先制します。

浦和は直後に武藤を投入。反撃を試みますが、やはり運動量が先に落ちたのは、試合間隔の短い浦和の方でした。大分守備陣の中で効果的な動きをすることで浦和の攻撃を引き出そうと奮闘する武藤でしたが、浦和がチャンスを作り出す以前に、大分のカウンターを脅かせる展開に。浦和はさらにDFの鈴木を削って宇賀神を64分、ナバウトに変わって興梠を68分に投入、さらに圧力を高めますが、72分。中盤で味方パスカットを受けた、65分に後藤に変わって出場した小林が、センターサークル付近からドリブルを開始、ペナルティエリア前で浦和二人の選手が立ちふさがるとその位置から思い切ったシュート!バーに当たりながらゴールに飛び込む、2試合連続のビューティフルゴールとなりました。

浦和はこの後、杉本、武藤、興梠の前線が機能、この試合を通じて最もチャンスを創出した時間帯を作りますが、得点を奪うことなく試合終了。結果として、両チームの完成度がそのまま出た結果となりました。

浮かぬ表情を浮かべて挨拶をする浦和の選手。

大分ユース出身、西川には大分サポーターからも大きな声が飛びます。笑顔で挨拶する西川。

スマートフォンの光を掲げて選手を出迎える大分サポーター。

この試合の開始前、大分社長により、出資を受けていた企業再生ファンドから全株を買い戻した事が発表されました。2009年に表面化した12億円にも登る債務超過、それによる経営危機は、ここでようやくひと段落となります。ここまでこぎつけるには、いったいどれほどの困難があったことか。感謝の言葉を述べる社長の声が時々途切れた時、いったいどれほどの感慨が胸中に溢れたのか。想像することすら憚られます。

そしてそれは、チームスタッフに限ったことではありません。12年度のJリーグへの借入金返済金は収入規模からすれば絶望的な3億円。トリニータを愛する人たちの手により、一口5000円からわずか三ヶ月で集めた寄付金1億2400万。それがなければ、トリニータはクラブライセンスを剥奪され、良くてJFL降格、最悪の場合は消滅もあり得ました。J3に降格した時も、サポーターは決して見捨てることはなく、むしろ観客数は増したと言われるほどのサポートを続けたからこその、一年でのJ2復帰、そして続くJ1への返り咲きです。

この試合の後、大分のサポーターさんによるツイートには、浦和サポーターの迫力ある応援を讃えるコメントが溢れていました。しかし翌日の7月1日、大分トリニータの公式ホームページには、浦和レッズサポーターによる、横断幕提出の違反行為に対する抗議の文章が掲載されていました。非常に残念なことです。

多額の負債と経営の混乱が、大分という土地での大いなる不幸であったことは間違いありません。その傷を癒したのは、トリニータを支える人たちの無数の善意であり、熱意でした。その一方で、日本で最もサッカーの長い歴史を誇り、日本一のサポーターを称する浦和レッズのサポーターが、他のチームへの最低限のルールすら守れず、チームの価値を傷つけ、貶める。果たしてそれは浦和を幸せにしているのでしょううか。チームを支える力となっているのでしょうか。

あなたの街にあるサッカーは、幸せですか?

ようやく訪れる事ができた大分の地、そこに確かにあった、《サッカーがこの土地にあるという喜び》。それは果たして今の浦和でも、健やかに根付いているのでしょうか。今一度、考え直すべき事だと思います。

今回のスタグルコーナー!

地元産にこだわったレバ豚丼。シャキシャキの歯ごたえのニラが美味しかったです。おまけで貰ったうちわの絵柄がイマイチ意味不明。


更新は不定期ですので、気長に待っていただけると幸いです。Jリーグのサポーターの方はどこのチームでも大歓迎。煽り合いではなくゆるいノリで楽しめたらいいなと思っています。