通信制高校入学から一ヶ月、中学時代を振り返る

新年度が始まって一ヶ月経った。長男を知る人にばったり会い、長男が通信制高校に入学したことを伝える場面が多かった。予想とはうらはらに私の周りの人達はあまり驚かなかった。マズイこと聞いちゃった…という空気が流れたことはほとんどなかった。

今は最初から通信制高校を選択する生徒も少なくないようだし、昔に比べて進路の選択肢が多いと思う。学校はそれぞれ特色を打ち出しているし、いわゆる偏差値の高い高校や大学に入ったからといってその先の成功や幸せが保証されているとは限らないと考える人も増えてきたように思う。

長男は、中3の二学期に学校に通うことが苦痛になってしまった。内申点稼ぎを気にしながら大人の期待する生徒を演じること、勉強とは関係のない独りよがりで押しつけがましい(と本人は感じている)教師の熱弁を聞かされること、表面上は一見問題なく過ごしているクラスメイト達の裏のネットワーク、なぜそんなに力を入れるのかまったく理解できない部活動…、そういうことに耐えられなくなってしまったようだった。

長男は、それらのことに折り合いをつけることができなかった。許せないものは許せなくて、おかしいものはおかしくて、無駄なことは無駄で、無理なことは無理だった。

加えて、苦手なことも多かった。例えば、提出物の管理や先の見通しを立てることが苦手だったので、大量の夏休みの宿題を前に困り果てていた。問題集のようにとりあえず一冊終わらせればよい宿題はなんとかできた。ただし、自由研究や調べ物、絵画のようなクリエイティブな課題を前にするとさっぱりアイディアが浮かんでこないのだった。それでも、読書感想文だけはスラスラ書いていた。読書が嫌いなので本は読んでいないのだが、それでも原稿用紙に文字を埋めることはできた。

中1の夏休み、私は長男の代わりに絵を描き、身近な材料で実験をして自由研究をまとめさせ、調べ物のやり方を誘導してなんとか完成させた。こんなことが少なくともあと2回続くのかと思うとゾッとした。

…あの時は私も必死だったので、ついつい手出ししてしまった。でも、結局長男のためにはならなかったのだろう。そして長男にとっては「母が必死に手伝ってくれた」という記憶すら残っていないのだろう。

長男の興味の対象に関する記憶力は並外れているのだが、それ以外のことについては良くも悪くもすぐ忘れてしまうのだ。覚えていておいて欲しいことはいつでもするりと抜けてしまう。せめて、忘れて欲しい私の暴言もするりと抜けていることを願う。

#エッセイ #日記 #コラム #不登校 #通信制高校



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