新卒で購買・調達・資材部門に配属になった社会人のリアル

皆さん、こんにちはTamamiです。 先日のツイートで反応の多かった『文系職で大変な部門として購買・調達・生産管理』について詳細を語らせていただきます。


1:自己紹介


名前)Tamami
年齢)30代
業界)製造メーカー
職種)新卒から購買・調達部門
キャリア)直近では22年末まで中国上海に駐在

わたしは新卒から購買・調達部門に配属になりました。
ビジネスマナー研修では『相手より名刺を下げて渡すように、ちゃんと敬語を使うこと、相手に不快感を与えない言葉使い等々』を教わりました。
しかし配属初日の取引先との面談では、自分が名刺を下げれば下げるほど、先方の営業マンの方は更に下げるし、事務所ではオッサンたちが電話で「ええ加減にせいや、どないかせんかいな!!」と関西弁で詰めている光景を見て引きました。
そんな私が見てきたリアルについてnoteにまとめましたので、お時間ある方は読んでみてください。

2:購買・調達・資材の仕事について


会社によって与えらている裁量権、業務範囲は異なりますが、簡単に言うと「部品・材料などを外部の取引先から購入する部門」です。

外部の会社に対してお金を払って部品などを購入するので、様々な業務があります。

①取引先の選定


新規のプロジェクト、開発がある場合に取引先を選定します。
もちろん安くて、良いものを納入してくれる取引先を選定することが必要です。

ここで一番重要だと考えるのは「社内の関係部門に対して明確に選定理由を説明できること」です。
現実のビジネス世界では「安いけど品質のリスクがある、品質は良いけど他社より値段が高い」というトレードオフがある中での決定が求められるケースがあります。
単に値段勝負のものなら、入札して一番安い会社を選ぶだけなので簡単ですが、中々そうはならずトレードオフがあり、限られた時間のなかで会社にとってベストな決断をすることが求められます。

また社内の関係部門に対しても「なぜその取引先を選んだのか」を明確に自信を持って説明できるだけのロジック、シナリオが求められます。
ここが弱いと外部から見れば「どーせ接待とか貢物受けて癒着してんだろ、、」と疑いを掛けられます。 潔白を証明するためにも会社方針、部門方針に沿って中長期的に見ても、この取引先に決めることがベストな選択である、をはっきり自信を持って説明できることが求められます。

②価格の決定


一番重要な業務の一つである「価格の決定」です。
なぜこれが重要かと言うと「会社のお金を使ってモノを買うから」です。
自分のお金は個人の自由で好きなように使えますが、会社のお金なのでそうはいきません。

そして板挟みになるポイントの一つです。ビジネスなので利害関係があり、以下の板挟みに巻き込まれます。
  ・取引先は少しでも自社製品を高く売りたい
 ・自社は少しでも安く部品を買いたい

社内からは目標コストが割り付けられたりするので、その価格で交渉をしても取引先はそこまで値下げできないケースもあるので板挟みに巻き込まれます。

明確な正解はありませんが、両社の落とし所、着地点を探って決着させるしかないです。

取引先に対しては「目標コストの考え方」を明確に説明して、達成できない場合に何が起こるのかを伝えます。 
他に競合がある場合は、それを引き合いに出して値下げの交渉できる余地はあります。 取引先が1社しかない(その取引先しか作れない部品)の場合は、自社の目標コストのロジック、どうやって目標コストを算出したのかを提示して交渉をしますが、このケースだと買い手は不利なのは明らかです。

社内に対しては「目標コストは適正レベルであるか」を入念に確認して追求します。「とりあえずこの値段で買ってこい」というラフな目標コストを出されても、交渉するときに困るのは自分なので押し返しましょう。
また常日頃から1社独占になっている交渉が不利になる部品、現在の市況動向を説明しておくと「買い手側が優位に交渉できる状況ではない」ことを社内の方も理解してくれます。 
1社独占になっている部品は、設計などの技術部門の方も交えて「スペックを緩和して他社でも作れるようにできないか?」など提案してして事前に仕込みをしておくことも大事です。

③供給問題への対応


はい、これも頭を悩ませるポイントの一つです。
特に最近では半導体不足、コンテナ不足などあって夜も眠れない方も多いと思います。
「決められた納期、数量に対して取引先が対応できない」という状況です。
こうなると社内から責任を追求されます、、
「なんで出来んの? いつできんの? どないすんねん!!」等々責められます。

以下の図1:部品納入から製品出荷までのフロー を見ていただければ分かるように、一番左側の部品を自社工場に納入するところでコケると後工程も遅れてしまいます。
「少しくらい遅れても調整できるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、そんなに甘くはないんです。
遅れを挽回するために土日稼働して作るなら、そのために土日出勤させるだけの人員調整したり等々と多大なる負荷が後工程に掛かります。
また客先も当然予定通りに納入される前提で、彼らも生産計画を立てています。 前工程がコケると連鎖的に後工程も全部コケていくのです。

この事例の一つが「半導体不足によるディーラーに自動車注文しても納期が1年以上待たされる」です。 非常に多くの部品が集まって、それらを繋いでいって初めて皆さんの手元に製品が届くのです。
会社規模の大きい、小さい、部品単価の安い、高いとか関係なく、どれか一つでも部品が欠けたら作れない、ということです。

それだけ重要な責任を負っている職種なのでプレッシャーは大きいです。

図1 部品納入から製品出荷までのフロー


3:接待について

Twitterでも「接待で美味しい奢ってもらってんだろ、ゴルフ連れていってもらえんだろ等々」のコメントはありましたね。
外から見れば羨ましいと思うかもしれませんが、実態はそんなに甘い汁は吸えません。では何が大変なのかを説明します。

①定時上がりで飲みに行っているほど暇じゃない

前述のとおり、購買・調達の仕事は忙しいんですよ。
接待といえど、取引先の方はこちらのためにお店も予約してセッティングしてくれているので開始時刻に遅刻しないように行くのがマナーです。
そうなると定時ダッシュが必須ですが、そもそも仕事が多すぎて定時で上がれるほど余裕がないんです。。
早く帰る日は、朝6時、7時とかに来て仕事しているので身体がシンドイですよ、、

②二次会、三次会もあると疲れる

1軒目でご飯だけで解散することはなく、2次会、3次会と連れていかれます。 別にこちらが要求しているわけではなく、取引先の方からオファーがあれば断るのも失礼になるのでお付き合いします。
当然終了する時間は日付が変わっています。 前述のとおり仕事が終わっていないと翌日もまた朝早くから出勤するので身体がシンドイですよ、、

③土日くらい自宅でゆっくりしたい

平日は飲み会があって、更に土日はゴルフもあります。
もうプライベートなんて無いですよね、、

これらは全て業務の一部と割り切っていますが、ここまで読んでもまだ「接待してもらえて羨ましい」と思う方がいるなら私は代わってもらいたいです。

4:なぜメンタルダウンする方が多いのか

ここまで読んだら分かりますよね?笑
色々な場面で板挟みになるから、その調整に追われて精神がすり減っていくんです。
そして行きたくもない飲み会、ゴルフでプライベートも潰される。

まぁ一部は超人的に仕事ができて、お酒とゴルフも大好きな人は余裕で仕事をしていますが、全員がそうではないので合わないと思ったら無理に続ける必要はないです。

実際に仕事はできるのに、連日の接待・ゴルフで身体を壊したり、家庭が崩壊した人もいます。そりゃ平日も家族でご飯食べられず、土日もゴルフだったら奥さんもキレますよね。。
最近はコロナで接待も減ってきたので変わりつつありますね。


6:最後に

こんな感じの部門なので新卒で配属された方の生存率は半分以下です。
私の先輩、同期、後輩も半分近くがメンタルを病んで会社に来なくなって他の部署に異動、また転職していきました。
けど逆にいえば生き残れば鋼のメンタル、タフネスが習得できて、しかも周囲がドロップしていくからポストも空きやすく出世はしやすいです。
ちゃんと他社、他の部門で経験を積んでから行けば色々なスキル、知識、経験はできるので全否定はしませんが、新卒で行くと苦労が多い部門であることは間違いないです。
別に不安を煽るつもりはなく、自分が見てきた事実を述べているだけなので、合わないと思ったら早々に異動するか転職しましょう。
調達・購買でドロップしたからと言って、その方が無能なわけではないです。
メンタルは一度壊れると元に戻りません。
人生は長いし、人それぞれに得意・不得意はあるので自分に向いている、自分の能力が最大限発揮できる環境に身を置くほうが良いです。

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。


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