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Charles Mingusの"Me Myself An Eye"をチェックする。

このアルバムは、1979年にAtlanticレーベルからリリースされた、ベーシストとして知られるチャールズ・ミンガスのリーダーによるスタジオ録音作品。クレジットから、1978年1月23日、ニューヨーク、アトランティックスタジオにて録音。ミンガスが1979年1月6日に他界したことから、彼のラスト・アルバムと位置づけられることになるでしょう。

裏ジャケット

曲順は、
A1 Three Worlds of Drums
B1 Devil Woman
B2 Wednesday Night Prayer Meeting
B3 Carolyn "Keki" Mingus

裏ジャケの写真からわかるように、録音時のミンガスは両手両足が自由にならず、車いすに乗ったままであり、パーソネルを読むと、ミンガスは演奏に参加していませんでした。レコーディングミュージシャンは総勢約28人。
日本版LPのライナーノーツによると、「ミンガスは、口頭、テープ、ピアノスケッチで詳細な指示を与え、(トランペッターの)ジャック・ウォルラスが譜面に書きあげた。」とあります。

また、これもライナーノーツによるものですが、1977年11月の電話インタビューにおいて、今作のテーマについて、「Battle(バトル)」と述べられていたらしく、おそらく、トランペット対トランペット、テナー対テナー、ギター対ギターといった、各楽器のインプロ合戦を意味していたのでしょう。

今のところYoutubeにアップされていますので、リンクを貼っておきます。
A1のThree Worlds of Drums、一曲30分20秒。

この曲について。
冒頭の、まさにミンガス曲のイントロと言えるオリエンタルでもあるジャムセッションから、メインテーマへの流れ。そして「Battle」のテーマらしく、ドラムのインプロバトルへの展開。パーカッションが展開の輪郭を描いた先に、今度はギターのインプロバトル。そこから先はホーン陣によるさらなるバトル。

いかにもミンガス曲と呼びたくなるエキゾなテーマ。しかも録音がはっきり。しかし、ミンガスは演奏に参加していない。
詳細な楽譜でメンバーに指示。
気になる点として、裏ジャケの集合写真にヘッドフォンが4つ転がっている点。多重録音をしたということでしょう。
個人的な趣味ですが、70年代のアトランティックスタジオは、レコード会社としては新興勢力でもあるのでしょうか、逆に録音環境が充実した作品が多く、このアルバムを買うときも、「70年代、アトランティック、ジャズ、なにかあるもの」と中古レコード屋に買いに行きました。
少し話がそれましたが、何が言いたいかというと、総勢28人のバンドメンバーに楽譜で詳細な指示を出して、各楽器がくっきりと聞こえる録音環境で、ミンガス本人は録音に参加していない。

私はこのアルバムを聴いて、「ミンガス本人は演奏ができなかったが、壮大な音世界をバンドメンバーに詳細な指示を出すことで、逆にミンガスの内的宇宙が、スタジオレコーディングのテクノロジーを通して、音像として具現化された作品」だと考えています。

まさにアルバムタイトルである「Me,Myself An Eye」。
「私自身の目を通した私」とでも訳しましょうか。

アルバムラストの曲、「Carolyn "Keki" Mingus」。キャロラインはミンガスの娘さんでしょうか。私は普段はラブバラードが苦手なのですが、ミンガスが娘へ捧げた特大の音宇宙。ぐっときますね。

追記)
ウィキペディアのアメリカ版にこのアルバムのトピックがなかったため、Wikiには載っていないと思ってましたが、ドイツ版に掲載されてました。
翻訳してざっと読んだのですが、私の事実誤認もあるかもしれません。ご容赦を。


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