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2022年。この5年ほどの間に買った、福岡のインディーズ音源、お気に入りの10選

縛りが「この5年ほど」であって、「2022年のベスト10」とかではないのは、ライブ活動(宇宙サービス、福岡音楽研究所として)でライブハウスに出演してはいるものの、年間ベスト10を選べるほど物販を買うわけではないので、まあ、だんだん溜まってきたから、このへんで一つ、福岡の紹介も兼ねて、という意味合いです。
今回紹介するようなCD/CDR作品は、ライブ会場限定の物販であることが多いので、昨今では小規模のレコードレーベルが生まれてきて、購入の選択肢が増えてきたとは言え、なかなかどこで買ったらいいのかわからないかもしれません。
今回の特集により、読んだ方がライブハウスに来ることや地場の音源を買うきっかけになれば、非常に光栄です。

(紹介はすべて順不同です。)

1.ダム狂い / 田卍(2021)

1.R-11 TENJIN CORE goodbye my scranble violence sweet days
2.MIGIWA dream pop crazy face
3.どうかしてた

ギャルルックスでラップ成分多めの女性Voと、存在感の大きいBaを中心にしたGt、Drの3人の演奏隊による4ピースバンドの2ndEP。
1曲目は、東京でいう109のような福岡のギャル文化の聖地的天神コアについて歌った曲。情報量の多さが、在りし日の天神コア(現在閉店)のコスメやらファッションやらでゴチャゴチャしていた感じを思い出させる。天神コアなくなってから聴くと、ちょっと悲しくなるのもまた一興。
2曲目では、録音スタジオであったUNKNOWN STUDIOでのダブミックスが施されており、ナンバガ的ニューウェーブなサウンドにタイトな迫力を添えている。このダブ路線が気持ちいので、新作を待ってはいますが、ライブにもエンジニアリングが持ち込まれないかと期待大。

2.モヤシイズム / もやしに魅せられて(2020)

1.Contrast
2.Time to Moyashi
3.ローファイな日々
4.私のもやしを返してよ
5.もやし美人
6.最後の晩餐にもやしを
7.もやし溢れる街並み
8.MOYASHI MUSIC CITY

「もやしの事しか歌わない」という変わったコンセプトで、自作のテクノ/EDM的トラックに乗せてヴォーカルパフォーマンスをする、マナモさんのソロユニット「モヤシイズム」。
噂によると、iPhoneのガレージバンドだけでトラックを作っているとのことですが、ヴォーカルとトラックのかみ合わせが少し不安定で不穏になるところなどは、「一時期具合が悪くてもやししか食べれられず、もやしで栄養を取っていた」という、ドキッとさせられるライブのMCネタにあるように、単純なアイドル路線だけではないところがまた魅力。
DJ集団「周船寺マンホールせんべいズ」の設立したガールズポップ専門の「ドリー夢records」にて入手可能だったはずですが、現在在庫切れなのでしょうか。今回紹介する音源全般に言えることですが、ライブ会場の物販手売りで買わないと、いつ手にできるかわからない音源が多いです。(ライブハウスあるある)

3.珈奈 / 初夏(2022)

1.花火
2.うちの猫
3.ドライブ

電子ピアノによるインスト演奏でパフォーマンスをする珈奈による3曲入りの1stEP。
ピアノのインスト曲ですけれど、ジャズのそれよりも、クラシックの演奏に近いのではないでしょうか。メインテーマのキャッチーさがほんと優秀で、主旋律の展開に思わずイマジネーションが刺激されます。曲名がシンプルなのですが、刺激されたイマジネーションによって曲名で称される音世界(花火大会の、家の中を歩く猫の、休日のドライブの)にウキウキと引き込まれます。
ライブハウス秘密の入り口に、「Himitsu records」というCD取り扱いコーナーがあるのですが、そこに並んでいるはず。在庫再入荷したそうですが、どうなんでしょう。

4.のーの / のーの(2019)

1.変身
2.予感、突然に
3.アイドルは死んだ
4.スーパーアイドル
5.GOGO のーの

この紹介文を書くために、久しぶりにCDRを再生したら、「ごめんねごめんね生きていて 生まれてきてごめんね」と冒頭の歌詞が流れてきて、思わず苦笑。Web上のプロフィールを読むと「2008年、自称テクノポップアイドルのーの結成」とあるので、苦節11年初の録音作品リリースとなるはず。
演劇経験者だからなのか、発声法によるヴォーカルの乗りが生々しくて、つまるところ戸川純的な自虐的な歌詞がぐんぐんドライブしていくところがもはや魅力。作曲陣に今城沙々とsunnyを迎えて、特にsunnyは2、3、5曲目の作詞も担当。個人的にはのーの(松永美咲)自身が作詞した4曲目が好き。
次回作を期待するのも変な感じですが、自虐的、毒づき、某アイドルグループへのいらだちとか、その芸風でまだやらかしてくれないかなと、勝手に思ってます。

5.垣内美希 / 昨日の話(2020)

1.まだぬるい
2.声が届かない
3.霧のなかを歩く
4.神様
5.海に沈む列車
6.昨日の話
7.そばにいて

北九州出身で、シンガーソングライター、舞踏家、現在は尼僧と多彩な顔を持つ垣内美希。
1stアルバム「朝焼けのうた」を2013年に発表して、このアルバムは、福岡県は二日市にあるCDショップ「MOVEment」での演奏を録音したライブ盤。アコースティックギターと歌の弾き語り形式。
どこまでも冷ややかで切なくなる風景と、孤独と隣り合わせの感情。泣くことすらできずに聞き手の心の奥深くに突き刺さる歌。
このアルバムの良い点は、35分のライブのパッケージであるため、スタジオ録音だった1stと異なり、部屋の中に閉じこもって作っていないから、残酷な歌の世界でも、どことなくリラックスの要素が加味されているところ。録音・制作は火の馬/ ruby heart dreamingの宮下無双氏。

6.谷本 仰 / Solo Dialogues(2017)

1. 即興1:violinI
2. 即興2:泡立て器I
3. 即興3:analog synthesizer
4. ユウヅキ(谷本仰)
5. 即興4:feedback noise
6. 即興5:violinII
7. La cumparsita(G.H.Matos Rodriguez)
8. 即興6:泡立て器II
9. オリーブ(谷本仰)
10.Song for Che(Charlie Haden)
11.Amazing grace(Traditional)

ヴァイオリニストとして、トリオ・ロス・ファンダンゴス、即興演奏など、北九州を中心に活動する、本職は牧師である谷本仰氏。
以前、氏が牧師をつとめる教会が当時のアパートの近所にあったため、ちょこちょこ遊びに行くようになり、私の引っ越しを境に疎遠に。インターネットにてこのアルバムに興味を持って、久々に教会を訪れて譲ってもらいました(お金払ってますよ)。
Dialogues(対話)とあるように、特に即興の曲では、自分でコントロールできない音に翻弄されて、自分がさっき出した音と今から自分が出す音が呼応する、そこに新しい発見を伴うようになっている、そういう風に感じました。
特に面白いのは2曲目と8曲目の「即興:泡立て器」。おそらく、あの台所にある泡立て器をバイオリンの弦でこすったりして音にしているのだろうけれど、ハイパーなノイズの中に浮かび上がってくるのはあくまでも具象としての「泡立て器」。思い起こすのは「台所」。この手のユーモアが随所に見受けられ、ノイズ/アヴァンとしても楽しめる好盤。

7.ポカムス / 月隈ジャンクション(2020)

1.最低
2.あんたったい
3.みやこ荘13号
4.スピリチュアルババア
5.月隈ジャンクション
6.ホーマーは頭が悪いから
7.工場の神様
8.五条店のハゲデブ

私の参加バンドである宇宙サービスとしてライブハウスに出演するときに、いわゆる「対バン」(同じ日に同じ会場でライブすること)を何度もしているバンド、ポカムス。
曲の情報を調べようとネットで検索したら、Vo,Gtの藤田進也氏がTwitterにセルフ解説をすでに書いていて。何を書いたらいいのかと考えてしまった。

対バンが多いとは言え、ポカムスのCDで初めて買ったのがこの「月隈ジャンクション」。先述のTwitterによると、前作が「横綱」、前々作が「首吊り台、次は俺」とのこと。このアルバムを最初に聴いたときには、進歩主義的にハイファイな音を目指すつもりはないのかな、と思ってしまった。しかし、この文を書くためにもう一度ノートPCのスピーカーで聴いているわけだけど、一発撮り(だと思う)でも各楽器の音がはっきり聞こえて、日本語の歌詞が耳に飛び込んでくる。「あんたったい」「太宰府市のみやこ荘」「江原さん」「福岡高速1号線」「ハゲデブのハーレム」。むちゃくちゃリリカルなブルース・ロックです。

8.TARJEELING / Quiet Life(2018)

1.Quiet Life (Before)
2.ある構図
3.It's only electricity (But I Use it)
4.時はまるで夢のように
5.ポイント・オヴ・ノーリターン
6.THE TERROR SONG
7.Quiet Life (Break)
8.12歳
9.¥A
10.結婚したらおしまいさ
11.オワッタラウスに月の舟
12.Quiet Life (After)

TARJEELINGとは、聡文三によるソロ・プロジェクトの名義。
今作「Quiet Life」も、クレジットを読むと、作詞曲、全楽器演奏が聡文三によるものとなっています。
タイトルの「Quiet Life」とは、一人の市民・国民として「静かな生活」を暮らしていく権利があるはずだ、という意味だと御本人から聞いたはずです。
TARJEELINGは、ネット上に自作に関するテキストを書きまくるタイプなので、私もそれだけでは補いきれない自分の感想を書こうかと思ったのですが、興味のある方は氏のブログ「SOUTHWASTERへの手紙」をチェックしていただければいいのではないかと思いました。
それでも、このシニカルで悲観的なアルバムに何かが言いたくなってしまうのは、10曲目「結婚したらおしまいさ」が大好きだからです。「結婚したら」「宗教に行き」「勉強したら」「当選したら」「おしまい」「バカか?」

9.Wendy York Stand / Experienced Resort(2022)

1.エントランス
2.Vacances
3.カクテル
4.Shpping mall
5.Plane
6.繰り返すように
7.いつかの花

福岡ではなく熊本のバンドなのですが、番外編的に。
「Experienced Resort」のタイトルの通り、アルバムを通して架空のリゾート地での保養が味わえます。一聴したところ、未だにブームで引きずっている「シティ・ポップ」の一派かなと思いそうになるのですが、実は「いなたさ」すら魅力のエキゾポップ。ライブハウス秘密での演奏を見て、一目惚れしてCDRを買いました。2曲めの「Vacances」が代表曲になるのでしょうが、実質的に一番の山場は5曲目の「Plane」。
今年の夏は、何度も家で聞いたり、一度だけDJをさせてもらった時にかけました。
熊本のTSUTAYAで平積み展開されたとか。

(おまけ)
10.福岡音楽研究所 / Dogs(2022)

  1. Close to you

  2. A Long Goodbye

  3. Stand by me

  4. Game Over

  5. I Say No

  6. Round About Midnight

  7. Me & You

拙作ではございますが、2022年にリリースいたしました。自分の作る音楽がどういうものとして出来上がっているのか、作っているときにはわからないのが欠点なので、作ったあとスマホやアンプで何度も聴きました。ギターの上達が課題ではありますが、今時点での最高地点なので、何卒聴いてください。

以上。繰り返しになりますが、ライブハウスの物販は一期一会、一度逃したらなかなか出会えないと覚悟して、お財布と要相談を!

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