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日本語教師が体感する大らかなイギリスの教育

イギリスで教えているのに、そもそもこの国の教育をちゃんと知らなかった。きちんと勉強してみようと思い、この本を読み始めました。

1977年に発売されたとても古い本ですが、イギリスの教育観を知る手がかりになっています。イギリスに興味のある方なら楽しく読めると思います。

経済学者の視点で、イギリスの教育制度と比較しながら、日本の教育制度の問題点をあげています。講演の記録なので、文体は優しい語り口調で読みやすいです。

私は小学生の娘がおりますが、学校では子どもたちがのびのびとしているなあ、と感じます。

わかりやすい例は、子どもたちの成長に合わせて教室の中の配置が変わっていくこと。入学するのは5歳ですが、椅子に座ることはなく、カーペットの上にあぐら。最初は驚きましたが、立ったり座ったりが楽で、さまざまな活動がしやすく工夫されています。少し学年が上がると、カーペットタイムといす&机タイムが半々になり、いずれカーペットタイムがなくなって、グループ学習。そして、高学年になると全員が先生の方を向いて座る、という配置にかわります。

構成主義の学習観なのか、子どもたちがもともと持っている学びたい、知りたいという気持ちに寄り添っているのだと思います。

この本の最初に、日本の教育は戦前の複線式がなくなり、単線式に変わったことを著者が批判しています。小学校→中学校→高校→大学という経路で、中学や高校で勉強を終了して社会に出る選択がなくなってしまったこことを、心配しています。

それに比べ、イギリスの教育構造は複雑で、自分の能力や好みに合わせた選択ができます。ただ、今はこの本が書かれた50年前より単線化が進んでいて、ずっと多くの人が大学へ進学するようになっていますが。

でも、大学へ行かず中学や高校を出て、社会へ出る人もまだまだたくさんいます。日本に比べて選択肢が豊富だと思います。

実際、私が教えている大学の日本語コースは一般社会人も受けられるコースなんですが、中学や高校卒業後に社会へ出てから職業を経験したあと、また日本語学習をきっかけに大学へ入学したり、中には日本の大学院へ進んだ人もいました。もちろん、日本語学習を趣味で続けて日本への旅行を楽しんだりしている人もたくさんいます。

人が元々持っている探究心や学習欲を大切にする教育スタイル。日本の環境から見たらとてもおおらかで羨ましくも思います。このような環境で育った人たちに最適な日本語教育は何かという視点も持たなくちゃいけないなと、と思うのでした。

📚紹介した本はマガジンにまとめています

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