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武井壮さんのツイートより(ランニングの理論)

何かとお騒がせの武井壮さんが、ちょっと前、久しぶりにランニングの理論的な事をツイートしていました。

これって、意味の分からない人が多いんじゃないかな、と思うので、ちょっとこのツイートについて解説してみます。

速く走るためには接地時間が短い方が良い

地動説」で説明した通り、止まっている自分の身体に対して地面が前からやってきて後ろに流れていく、と捉えると、接地(地面に接)している間にも地面は前から後ろに動くため、「足」の地面についている部分は身体に対して前から後ろに移動しています。そして、そのスピードは走るスピードが速くなるほど速く動く。なので、接地している時間が同じだと、スピードを上げた分、足を前から後ろに大きく動かさないといけなくて、それには限界があってそれ以上はスピードを上げられなくなってしまいます。
なので、スピードを上げるためには接地の時間を短くする必要があります。

力を加えられるのは接地の間だけである

ランニングも純粋な物理運動なので、接地していない、空中に浮いている時は、ボールとか他の物体と同じように放物運動をしています。
その間に身体にかかっている力は、重力と空気抵抗だけです。
つまり、接地していない間は、何をしようがスピードが変わる事はありません。
(もちろん、次の接地の時に効率良く身体を使うための準備の動きをしている訳ですが、とりあえず、浮いている間は力をどこかに伝える事はできない、という事がポイントです。)
なので、その間はなるべく力を使わない事が理想のランニングフォームになります。動かすにしても、なるべく力を抜いて、リラックスして動かす事が重要です。

これについては、昔、ヨンパー(400mハードル)専門だった人に「ヨンパーって大変だったでしょう」と聞いた時に、普通に400m走る方がしんどかった、ヨンパーはハードルの上で休む事ができるので、と言った事を思い出します。
つまり、「浮いている時間」というのは、ある意味、休憩時間なんです。

地面を強く押すには重力を使うのが効率的である

で、力を加える事ができる接地の場面ですが、基本 地面を下向きに押して、その力がかかった状態で少しだけ後ろ向きに地面を押して、その反作用で地面から上剥きと少しの前向きの力をもらう事になります。
その時、下向き地面を押す時に、自分の重さにかかる重力を利用すると効率が良いんです。
体重が例えば50キロの人なら、そこにかかる重力を全部 地面を押す力にできれば、50キロの力で地面を押せる事になります。50キロというと、相当な力です。
ランニングでは、地面を何千回も、何万回も押す事になりますが、その度に筋力で50キロちかい力を与えるとなると、相当大変です。なので、いかに重力を使って地面を押して、筋力を使う分は少なくするか、が大事なんです。

という事で、走るのが上手くなると、

  • 接地する時だけ力を使うようになる

  • 重力を上手く使い、使う筋力を最小化できる

という事になります。それが、走りの効率性が高い状態という事です。

で、それで良いんじゃないかって思うんですが、武井さんは「それじゃぁダメなんだ」って言ってるんですよね。
それは何かっていうと。。。

長距離と短距離は違う

という事だと思います。
長距離だと、ある程度のスピードを保って効率よく走れるというのが一番良い訳ですが、短距離だと「ある程度」のスピードじゃダメで、出せる最大限のスピードを出さないといけない。そのために必要なことは何かって話なんですが。

短距離では加速能力が最も大事

短距離では、止まっている状態から素早くトップスピードまでもっていく必要があります。つまり、加速力が重要なんです。また、トップスピードは加速力とブレーキが釣り合った所で決まり、スピードが上がるとブレーキ(摩擦力がメイン)も大きくなるので、加速力が大きくなるとトップスピードも大きくなります。
もちろん、ブレーキを小さくしてもスピードは上がりますし、長い距離を走るなら走りの効率が重要なので、そちらでスピードを上げたいのですが、短距離ではあまり効率は関係ないんですね。(パワーを使い切る前に走り終わるので。)
逆に長距離では、加速力はあまり重要ではありません。加速がゆっくりである程度のスピードになるまで時間がかかっても、長い距離を走る間ではわずかな差になります。それなら、ブレーキを小さくして走りの効率を上げ、後半に力を残す事が重要になります。
ランニングの技術としては共通する部分が多いのですが、何を重視するか、という部分では、長距離と短距離ではかなり違ってくるんですね。

加速できるのは接地している時だけ

そして、加速できるのは、身体が地面についている時、接地している時だけなんですね。身体が空中に浮いている時は、重力(下向き)と空気抵抗(逆向き)の力しかかからないので、加速しようがないんです。
だから、空中に浮いている時間の割合が増えると加速できる時間の割合も減る。もちろん、技術を上げて、短い接地の間に効率よく加速できるようにはなりますが、それにも限度はあります。(というのは接地時は上下方向の力がメインなので。)

つまり、短距離のスピードという点では、空中の時間の割合を増やしすぎるのは、加速力という点からマイナスも大きいんだ、という事なんでしょう。
それが、冒頭の武井さんのツイートの意味なんでしょうね。

とか言ってる間に、また同じ系統のツイートが。

これもちょっと説明が必要かな。
スピードのために、1回の接地時間は短い必要があって、でも接地の割合は増やしたい、となると、ピッチを上げるしかない、それが「ガシャガシャしたスタート」という事なんでしょう。
「大人な接地で」というのは、接地時間を短くする技術で、それとピッチを上げて接地の割合を増やすというのを両立したいという事なんでしょう。

私は短距離専門ではないので、かなり推測が混じっていますが、こういう事ではないか、と思います。

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