ランニングのパワーポジション(ランニング理論入門)
パワーポジションってご存知ですか?
なんか、すごいカッコイイ言葉ですよね。それだけで走るのが速くなりそうです。
でも、別に「これができれば良い」みたいな動きではなく、誰のどんな走りに対しても存在しているポジションなんです。
で、それが、ランニングを考える上で、最も重要なポイントなんです。
パワーポジションとは
パワーポジションとは何か。一般には「もっとも力が出やすい位置や姿勢」のことを言います。色々なスポーツで、そのスポーツなりのパワーポジションがあると思います。
ランニングにおけるパワーポジションとは
では、ランニングのパワーポジションとは、どういうポジションなのでしょう?
それは、走りの動きを物理学的に考えると理解しやすいです。
(走りを物理学的に詳しく考える原稿は、いずれ書こうと思っています。)
ランニングでは、身体が地面から浮いている場面と、足が地面に付いている場面があります。身体が地面から浮いている場面は、物理学的に考えると「放物運動」になります。放物線を描く動き、ホームランボールの軌跡と同じ動きになり、ニュートン方程式で簡単に解析できます。
一方、足が地面についている場面では、上下方向ではバネ運動と捉えて良いと思います。足が地面に付いていても、身体の重心はしばらくは下へと沈んでいき、ある程度まで沈んだら止まり、そこからは跳ね返って重心が上がっていくようになり、ある程度上がれば足が地面から離れて放物運動になります。
つまり、足が地面からついている場面では、バネが縮んでいくように重心が下がり、一番下がったら、バネが復元されて重心が上がっていきます。この時の重心が一番下がった場面、それがパワーポジションになります。
パワーポジションの何が重要なのか
それで、パワーポジションにおいて重要なのは、重心の位置と接地位置の関係です。
理想的には、重心が接地位置の真上に位置している事です。でも、実際にはそうなっていなくて、重心が接地位置より後ろにあります。これをどれだけ真上に近づける事ができるか、が、ランニングにおいては決定的に重要です。
今まで色々と書いてきましたが、実はパワーポジションでの挙動でランニングのほとんどが決まるといっても過言でないくらい、重要なポイントなんです。
パワーポジションとは、「もっとも力が出やすい位置や姿勢」のことでした。ランニングの場合は重心が最も沈み込んだ場面で、それはバネが最も縮んだ時でした。バネは最も伸びた時か縮んだ時に、一番力が大きくなっています。その時が一番強い力で地面を押している場面で、一番強く地面からの力を受けている場面です。
その時に力の向きが、どうなっているか、が重要で、できれば真っ直ぐ下/上を向いていてほしいんです。
厚底シューズのメカニズム(パワーポジションで説明する事例)
パワーポジションがどういうものかは分かって頂けたかな、と思います。
で、このパワーポジションを踏まえると、ランニングについての様々は事が説明できるようになるのです。
それは、おいおい書いていこうと思っていますが、ここでは一つ、印象的な事例を挙げます。それは厚底シューズです。
近藤選手は最近引退されましたが、高い知性とトップレベルの競技力を備えた稀有な選手でした。その近藤選手が厚底シューズのメカニズムについて考察したのが上記記事です。
詳細は、近藤選手の記事を読んで頂きたいのですが、一言で言うと「厚底シューズはフォーム矯正シューズだ」という事です。
曰く、厚底シューズによって、「上から下に力を伝えて、後ろに蹴らない走り」になる、という事です。
それを、私なりに説明すると、こういう事だと思います。
厚底シューズのカーボンフレームは、真っ直ぐ真下に押してあげないとバネを縮める事ができないようになっている。よって、真っ直ぐ真下に押す、つまりパワーポジションで重心が足の真上にあり身体にかかる重力が真っ直ぐシューズにかかる状態で「シューズの恩恵を受けられる」ので、そういうランニングフォームに矯正されていく、それが厚底シューズによって速くなるメカニズムなんだと思います。
良く、厚底シューズの助力が、とか言われていますが、そんな助力なんてごくごくわずかなものです。だって、人間の体重って50キロくらい(人によってはそれ以上)あるんですよ。それが、靴底に入っているバネ程度で、いったいどれくらい跳ね飛ばす事ができるというのでしょうか。
でも、そのわずかな力でも跳ね返りを感じて走れば、それが結果的にフォームを矯正して効率的な走り方に自動的になってしまう。それが厚底シューズの速くなるメカニズムなんです。
さて、このようにパワーポジションを踏まえると、ランニングについての様々な事が理解できるようになります。今後、それについても色々と書いていこうと思っています。
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