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音響ハウス Melody-Go-Round ~奇跡の音が降る場所

メンフィスのマッスルショールズを代表格として、録音スタジオにスポットが当たることが多く、また過去には、「クラシックアルバムズ」というロックの名盤の制作秘話を語るDVDシリーズがあったりと、素晴らしい音楽が出来上がるまでの過程を覗き見ることは大変魅力的で、その作品への愛情がより増すことになります。
 1974年に銀座で設立された「音響ハウス」。そのドキュメンタリー映画を観ることができました。スタジオミュージシャン/ギタリスト佐橋佳幸(松たか子のご主人でもあります)とレコードディングエンジニア飯尾芳史を語り部に、彼らが声をかけたスタジオゆかりのミュージシャン(坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春、オノセイゲン、東京スカパラダイスオーケストラ、葉加瀬太郎)のインタビューを交え、新たに録音された新曲の制作過程(大貫妙子作詞、高橋幸弘や井上鑑の演奏や楽器の音色の極上)が描かれていきます。
当時 音を作りこむためには、レコーディングスタジオに行くしかなかったがゆえに
スタジオは実験室であったこと、松任谷正隆が語るアナログからデジタルに変わったときの衝撃、広告業界が隆盛を極めた時代、クリエイティブディレクター、映像作家などさまざまなアーティストに、大瀧詠一、山下達郎など新進気鋭のミュージシャンが加わったこと、
ビジネスとクリエイティブの間に立ち、アーティストが自由にできる環境を作ったプロデュ―サーの存在。世界的に注目されているCity Popや最近逝去された筒美恭平らがリードした歌謡曲など、70年代から80年代にかけての音楽のマジックの裏側が垣間見れる素晴らしい映画でした。一人でそして人と直接会わなくても音楽が製作できる今の時代、なかなか開催ができないライブと同様、人と人が場を共有しながら、作られる音楽。佐橋佳幸と飯尾芳史が最後にいつも時代を意識して音楽を作っている。これは2019年(映画撮影時)の音だというコメントも素晴らしい。
最近は配信などで、とっかえひっかえ音楽を聴く時代になってしまいましたが、
裏方の方も含めて制作者の方たちの思いを想像しながら、心して音楽を聴こうと思わせてくれる、音楽にミューズが住むと信じる人は必見の映画だと思います。

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