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自律した学び手に向け学びのコントローラーを子ども達に【一斉授業も自由進度学習も場所も人も内容も選べる算数へ】



この1年間、4年生が学年全体として算数の授業の在り方を模索してきた。

1学期は学力が近しい人でクラス分けを行っていたが、学力と同様に学び方の相性があることが見えてきた。最初は授業内自由進度学習に取り組んでいたのだが、同じ学力でやるとあまり子ども同士のあまり相乗効果が生まれないことやどの学力層でも一斉授業のスタイルがあっている子も自由進度学習があっている子もいた。

そこで、考え方を変えた。こちらがクラスを決めるのではなく、子ども達が学びたい方法でクラスを選べるようにした。そうすることで、将来子ども達が自律して学ぶ練習に繋がっていくと考えた。一斉授業をするクラスが1つ、単元内自由進度学習に取り組みのが2つの教室とオープンスペースだ。これは子どもが自分の学びに責任を持って学ぶ取り組みだ。

そしてそれを可能にしたのが、電子黒板の画面を子どもたちの端末で見れるようにしたことだ。そうすることで、どこにいても授業を受けられるのでオープンスペースでも隣のクラスでも必要な情報を受け取ることができたのだ。



そこから自由進度学習は授業内の進度を選ぶことができる授業内自由進度学習から、単元内自由進度学習へ変えていった。

自由進度学習の授業の組み立ても変えた。まず自由進度学習をする上で、基本的な四則演算のスキルがないと本来やりたい学びではないところで躓いてしまう。そこで、毎回3分間の100マス計算に取り組んだ。結果として学年のほとんどの児童が2分以内で100マス計算をすることができていた。

100マス計算が終わると、3分間ほどのミニレッスンに入る。ミニレッスンでは進度が違う子も同じ内容を受ける。基本的にはめあてとまとめだけをノートに書いてもらい、詳細を聞いて理解してもらうことに重きを置いた。それからそれぞれが自分で決めためあてを違うクラスの友達や体の性別が違う友達にいってもらう。これによってクラスを超えた人間関係の構築に繋げていった。



めあてを伝えるとそれぞれが自分のめあてに向けて学習を始める。進度表を見ながら自分の現在地を把握して、学びを進めていく。わからない際には、友達に聞くのも、先生やボランティアに聞くのも、解説動画を見るのも、自分で決めていく。丸つけは友達にしてもらい、必ずサインを書いてもらう。



丸つけも含めて相互に確認する機会を増やしてわかったふりを減らしていくのが狙いだ。また、問題数は少なくするが、ただ計算問題が解ければいいような問題だけなく、どう考えて解くのかを問き方を問う思考力を見るための問題を多くした。



3・4枚進んだ後にはチェックシートという関門を設けた。チェックシートは必ず自分1人で解かないといけなくて、丸つけは先生が行う。そこで学習の定着度を丁寧に把握し、わかるようになるために適切な指導をするタイミングとした。



そして、早く進度表をやり終えた子ども達は、学習内容の定着や探究的な学びに取り組むためのチャレンジワークを設定し、自分の伸ばしたい力を伸ばすために必要なことを選んで取り組んでいった。



そして最後に振り返りと次の時間のめあて決めを10分かけて行った。自分が今日何を学び・何の力をつけるためにどの方法で誰とどこで取り組み、めあての達成率はどれくらいなのか、どうして上手くいったのか、どうして上手くいかなかったのか、何をどこから学んだのか、スプレットシートに丁寧に打ち込んでいきます。その後、めあての記入にいく。めあては100%達成できるものを良いとするのではなく、80%達成できるものを良いとしている。それは自分に成長にとってちょうどいい負荷を考えることができることが重要だと考えているのからだ。100%達成した子には「(成長の機会を十分に活用できなくて)もったいなかったね」とフィードバックしていた。



また一斉授業では、子ども達の実態を基に、プリントを作成してできるだけ子ども達が問題に取り組める時間を確保することと、問題の解説を丁寧にすることでインプットから学びたい子にとっての安心安全な学び場を目指していった。早く終わった児童は授業内自由進度の要素を取り入れてプリントで多くの問題を取り入れたり、周囲の子に教えたり、丸つけをしたりした。

1年間この学びを進めていく中で、本当にたくさんの成長が見られた。まずは学習者として本当にたくさんの失敗が生まれた。

ある子は自由進度学習にいて自分の自分をコントロールできないで、学びに向かえないでいた。そこで話し合って一斉授業にいくことになった。するとインプットが丁寧にあることで学習内容がわかったことや、席が固定されていることで、目の前のことに集中できるようになっていった。

ある子は仲のいい友達とやりたくて、一緒に自由進度学習で問題に取り組んだのだが、一緒にいると友達と話すことが楽しくなってしまいどうしても学びに向かうことができなかった。その結果、テストの点数が下がってしまった。その結果、自分達で話し合って1人は自由進度学習へ1人は一斉授業を受けることにして、自分達なりに学びに向き合うためにどうすればいいのか考え続けていた。

ある子は、チャレンジ問題で校庭の面積を求めることになり、これまで男友達としかできていなかったのだが、校庭の面積を測る中で体の性別関係なく友達と活動して交友関係が広がり、これまで決まった人にしか教えることがなかったのが、1日で10人に教えるというめあてを達成するほどまでに成長していた。

ある子は、集中する場所を探していろんな場所で学んだ末に、電子黒板の裏にあるジョインマットの上が1番集中できることに気づき、一緒に学ぶ友達も変えながら誰とだったら集中できるのか、誰に教えてもらうとわかるのか、検討した末に自分なりの1番いい学び方を見つけることができた。

そして、スクールサポートスタッフの保護者の方々との連携に頑張った1年間でもあった。100マス計算をしている間に打ち合わせをして、学習内容や配置等の相談をして、その後動いてもらい、振り返りの時間にスタッフの方と子ども達の困り感や躓きから、スタッフの方の困り事まで共有して次の実践に繋げていった。子ども達と徐々に関係を築いていってくれて、3学期に子ども達にとってもかけがえのない存在に変わっていった。

全員が全員違う学びのプロセスを歩み、その中で自律した学び手になるために考え、模索するプロセスを形にできた。今の学力も追い求めながら将来学び続ける学び手になることに向けて学び方を学ぶことに挑戦した1年間。3学期にいく頃には成績も全体的に伸びてきたが、地道な100マス計算等の積み重ねと日々の学びの言語化のトレーニング、適切なフィードバックの結果だったと思う。

たとえやり方を統一することで同じ学力だったとしても、この子達が手に入れた自律して学ぶ力は子ども達にとってこれからの学びに活きてくるもので、長期的に見た時にこの差は大きなものになっていくと思う。

しかし、教育者はつい子ども達の学びをコントロールしたくなるものである。そうすることで教えている気になって安心するからだ。本当の意味で子ども達の未来に向けて、教育者で在ろうとすると教えたい人にとっては我慢することや待つことが多く感じられるかもしれない。だが、それは必要な時間であり、失敗を生み出すためには必要なことだとも感じている。

この1年間自律した学び手に向けて、学びのコントローラーを子ども達に手渡す覚悟と試行錯誤の先に見えた日常は決して悪くないものだったなと思う。

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小泉しのぶ(小学校教諭×起業家→教育委員会×起業家 )
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