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夏休みの宿題を終わらせない子ども達に捧げる、勝手にたまごまる賞

みんなの俳句、短歌、川柳大会、夏、鶴亀杯が大詰めを迎えている。大会の一ファンとして、僕が特にお気に入りだった言葉たちを紹介し、たまごまる賞なるものを贈呈させていただきたい。

まずはこちらのお二つ。最初のが干し柿さんの俳句で、二つ目が葵花さんの短歌。

夏休み星降る夜のバーベキュー

教科書にないまぶしさだカルピスの濃いめが並ぶコンビニの夏


この二つに共通しているのが、夏休み感。特に子どもの頃の夏休み。どちらも読んだ瞬間に夏休みがこれから始まる時の高揚感を得ました。

毎日好きなことだけをして過ごすことを許してくれる夏休み。何をしようか、考えるだけで楽しかった夏休み。楽しみの凝縮、夏休み。

この楽しみの凝縮感を味わえるのが干し柿さんの句。夏休みって言葉だけでもワクワクするのに、そこに降る星、バーベキュー、と限られた文字数の中にこれでもかと楽しさが詰められていて。だから読んだ瞬間にあの頃の夏休みの光景が広がるのです。

二つ目の葵花さんの短歌は夏休みのお薦めの過ごし方を示唆してくれていて。夏休みは楽しいことが沢山ある反面、宿題も沢山あるし、受験を控えていたら夏休みも勉強三昧。でも本当に大切なこと、学べることって教科書の外にあるんだよ、と葵花さんは教えてくれているようで。それは何も旅行や特別な体験をして得るものではなくて、周囲に溢れていて。夏は全てを濃くする。その様をカルピスの濃いめに載せて表現されているのもお洒落で大好き。

あの時の夏休みにタイムトリップさせてくれた干し柿さん、葵花さん、楽しい時間をありがとうございました。

続いてはこちらの俳句を選ばさせていただきました。

激流をひらがなのごと鮎のぼる

夏の大きなイメージは暑さなのですが、その暑さを凌ぐ為に人間は涼しさを追い求めてきました。そのおかげで夏には『涼』のイメージもあります。夏の暑さと『涼』のイメージと、日本語の持つ美しさ、自然、生物の持つ生命力を非常に上手く表現されていて。こんな句を作ったのは誰なんだって覗きにいったら鮎太さんだって、さすがだなあ、と唸りました。句自体はひらがな多めで柔らかな印象になりがちな所を、鮎がのぼっている様を表現していることがわかり、ひらがなの中でも、し、とか、つ、の跳ねた感じが伝わってきて。柔らかさと躍動感を同時に表現されていて。知れば知るほどその技巧に拍手喝采です。

しかもこの句、鮎太さんが好きなことをもとに創られた句だとわかって、好きなことを持つことの大切さも教わりました。自分の好きなことって人には伝わらないかもしれないと思う時もあるけれど、鮎太さんのこの句を読んだら、好きな気持ち、熱量ってちゃんと伝わるんだなって。そしてそれが人を感動させるのだと学びました。



続いて、こちら。やはり僕は彼女の世界観がこの上なく好きなようです。

ひとにぎり たそがれた後 待つ夜明け

夜のひまわり そっとちぎって


遠花火 なくしたものの 輪郭なぞる 

かなしみに 番号つけて


フィラメント 胸のはしっこ ふぃらめんと

遠雷って セピアの音色


これを読んだだけで彼女の作品だな、と勘づいた方、僕と同じく彼女推しな1人ですね。その彼女とは僕も何度も何度も賞を与え、讃えてきたゼロの紙さんこと、ゼロちゃんです。

改めてゼロちゃんの凄さを実感しましたよね。なんなんでしょうね、このゼロちゃんにしか発せない雰囲気って、素敵すぎます。特に3つ目が僕のお気に入りでして。鮎太さんもそうだったのですが、ひらがなやカタカナ、日本語の持つ魅力を最大限に活用できるのが超一流の人たちなのだな、と思いました。

フィラメントってのは電球のこの部分のことです。

光が灯る部分のことですね

そのフィラメントが遠雷のように灯る。時には生き生きとフィラメントと灯り、時にはふぃらめんとと柔らかく灯る。まずフィラメントと遠雷を連想させようと思えるその発想力が天才的です。

そしてこの一首、この上なくゼロちゃん。ゼロちゃんの書くエッセイにしろ小説にしろ、LEDや真夏の太陽のような光では無い。そう、その光はフィラメント。読んだ人に寄り添う光、温かな光。この光がベースにある。その上で日によっては、より優しさに特化した、ふぃらめんと、と表現するのが相応しい文章を描き、時にはより活き活きとしたフィラメントな文章を描く。自分らしさをここまで一首に詰め込めることができるのが本当に凄い。短歌の一つの境地を見せてくれたようで。いつもいつも新しい感動をありがとう。

公式賞もまもなくですね。選ばれた人を大いに祝いたい。


夏休みの宿題を終わらせない子どもたち、元子どもたちよ、世界にはこんなにも凄い才能が溢れているのだ

宿題を終わらせることだけに夢中にならず、君の好きなことをやり尽くし、多くの才能に触れていこう



ここまで読んでいただきありがとうございます。