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ボロボロのコロコロ

2023/10/27
以前、娘が学童でもらってきたコロコロコミックを、6歳の息子が何度も何度も読んでいる。裏表紙は取れかけているし、折り込みの口絵は破れ、もうボロボロだ。
それでも繰り返し読みながら、あたらしい号を欲しがることもなく、ゲラゲラ笑っている。

そんな様子を見ながら、つい「かわいそうだから新しいのを買ってあげなくちゃ」と口にしたところ、夫から「欲しいと言われていないのに、必要ないよ」とやんわり咎められた。

そうだった。子どもは、こちらから先回りして与えたり手助けしたりするよりも、求めてきたそのときにたっぷり応対してやるのがいい。そんな話を、取材でも何度も聞いてきた。

夫はそういうことを感覚的にやってのける。なんでも難しく考えない。ありのままを受け入れるし、とてもシンプルなのだ。

きっと毎月コロコロを買う日も、そのうち来るのかもしれない。でもそのときには、この一冊を読み尽くす楽しさは、もう彼にはやってこないのだろうな。

お金さえあれば、手に入るものはたくさんある。でも、お金があっても手に入らないものは、もっともっとある。そして、お金で手に入らないものほど、どうしようもなく愛おしいと思ってしまうのは、わたしが大人になった証拠だろう。そんな大事なことを、見逃してしまうところだった。

スマホを手にした瞬間、退屈の先にある想像の世界を手放してしまったのとよく似ているのかもしれないな。


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