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青いカーネーション

「かあか、いつもありがとう」
そう言って子どもたちが手渡してくれた、青いカーネーション。

「すっごくかっこいい!」と息子が選んだその色は、ギョッとするほどのブルーで、元の花の色がところどころにアクセントのように残っている。

自分では絶対に選ばないし、無理やり青く染めた花なんて、と普段のわたしなら思うだろう。もしこれが付き合いたての恋人からのギフトだったなら、内心「センス……」と思ったに違いない。
それなのに、この花を受け取ったとき、ただただ素直に、「あぁかわいい、きれい」と思ったし、そんな自分にびっくりもしたのだった。

子どもたちは、新しい世界を教えてくれる。
凝り固まった思い込みや、なんとなく踏襲している慣習、ずっと大事だと思ってきたことやもの。保守的なわたしの心にドカドカと元気よく入ってきて、躊躇も遠慮もなく、バーンとドアを開けてくれるのは、いつだって子どもたちだ。
わたしは呆気に取られながらも、そのドアの向こうにある新しい気持ちを知り、それまでよりも一回りだけ広い世界に立つ。

青い色、きれいね、珍しいね。ありがとう。うれしいよ。

いつもありがとう。手紙に書かれた言葉を伝えるのは、わたしのほうだったのかもしれない。

青い色は砂糖菓子みたいにも見える。作業中、ふと目に入るたびに、心に甘く、やさしい色が広がる。

お花と一緒に買ってきてくれたケーキを囲んで、みんなでベランダでお茶時間にしました。このあと息子は、自分のタルトが崩れて号泣し、わたしのケーキと交換することに。そんなものです。

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