第2外国語のススメ
第2外国語に韓国語をとっていた時の話だ。
「文法が日本語と似ているらしい」という安易な情報に流され受講を決意した。
「まあ、わし結構k-popとか好きだし?韓流ドラマも嗜む程度だし」という自分の韓国語ができる理由とは全く無縁な因果関係を結び、第一回目の授業にてくてく行った。
初めての授業だから、なんか説明だけで終わるだろうと高を括っていたところ
「では、みなさん自己紹介をしてみましょう」とコリアンソンセンニン(先生)が言い放ち、一人ずつ立って発表する事になった。
皆、つらつらと韓国語を話し始める。
いや本当はぎこちなかったのかもしれない。
ただ私はハングルのハの字も知らないので、「お前の母ちゃん朝鮮人!」と脳内で叫び散らかした。(朝鮮人に対して偏見持ってないです)
純うちなんちゅの私にとって韓国語を話す民は、漏れなく朝鮮人だ。
朝鮮ニキネキがどんどん発表していく中、私は一人うな垂れていた。
だって、「私は日本人です!」っていう韓国語すら知らなかったんだよ?
「私はじゃぱにんちゅイムニダ!」
必死に絞り出しても、語尾の変化と沖縄語くらいしかできない。
私の苦労が後14回続くことが確定してしまった。
授業の前日は、授業に行きたくないという思いから、今日をできるだけ引き伸ばし(夜更かしをして)でも予習をしないと絶対についていけないので、いつもより早起きして予習をする生活を過ごした。
朝4時に寝て、8時に起きると言った具合である。
今日も今日とて、睡眠不足イムニダ!
と深夜テンションか睡眠不足のせいか、極度のストレスのせいかわからないが、精神は常にブレッブレで講義に通っていた。
ただ、そんな予習も無駄になることがある。
授業の進め方はソンセンニン(先生)次第なのだ。
予習をしてこようが、今日はテキスト全く進めませーんなどということがある。
その日は、イカゲームがどれだけ韓国で流行り、素晴らしい作品であるかという話を講義時間中ずっとして、終わってしまった。
私の睡眠時間を返してほしい。
ここで絶対にイカゲームを見ないことが確定した。
イカゲームを見る機会があったとしても、絶対に途中で寝てやろうと思う。
じゃないとあの時の私が浮かばれない。
忘れてはいけないのが、テストの話だ。
ここまで韓国語ができない私は、もちろんテストでも一悶着ある。
テストは記述式の持ち込みありだった。
「テスト勉強してもどうせ、無理だぜ⭐️」
と開き直った私は、テストについて考えることを放棄した。
テスト期間中は、それらを考えることすら億劫になるのでテスト前日まで完全に
韓国語のテストについて考えることをやめていた。
ただ、単位を取らないわけにはいかない。
テスト前日。
そろそろまずい。
そう思った私はとりあえず持ち込めるだけ持ち込む作戦なるものを決行することに決めた。
決まってからの行動は恐ろしく早い。
俺じゃなきゃ見逃しちゃうほどに。
まず書店に駆け込み、陳列されし参考書を片っ端から漁っては、これじゃない、あれじゃないと参考書の良し悪しすらわからない知識量のくせに一丁前に批評家を気取り、この参考書は文法がわかりづらいだの例文がわかりづらいだの、挙句には、なんかフォントが気に食わないと関係ないところにまで飛び火して全てを否定し続けた。
全て出版社と著者のせいだ!(勉強していない私のせいです。本当にごめんなさい。)
アマゾンの検索でレビューを確認し、「ほうほう、星4.4なかなかいいじゃないか」などとほざき倒し、購入。
これで万事解決⭐️などと思っていた。
次の日の朝、その参考書を見て
「あれ、これだけじゃやばくない?」
と急に不安になり(だから勉強しないお前がやばいことに気づけ)
朝9時に開くブックオフに駆け込み、10:30からテストが始まるというのにギリギリまで参考書を探すことに全神経を集中させた。
おわかりいただけただろうか。
私、21歳一般成人男性。
1分たりとも勉強していないのである。
純度100%の他力本願である。
もはや天晴れだ。清々しいほどの他力本願。
ここで私は他力本願界隈の寵児となった。
怖いものは、ない。
いざ行かん、朝鮮!
ほな、韓国語しばいたろかあ!と全く勉強していないが、参考書という最強の武器を手に入れたので自分自身が強くなったと思いこんだ私は、意気揚々とテストを受けに教室に向かった。
教室に着くと、皆、それぞれ勉強してきた様子が伺えた。
髪の毛はボサボサで、くまがすごく、多分徹夜してきたんだろうなという生徒がちらほら。
そこで私はちょっと焦る。
あれ、持ち込みありなんだからそんな必死にならなくても、、、。
あれ、もしかして、私だけかな、勉強してないの、、、。
当たり前である。
そんな焦りとは無関係に、韓国ソンセンニン(先生)がテスト用紙を配り、チャイムと同時に開始の合図を出す。
問題文を確認する私。
「ん、読めん」
当たり前である。
いや正確には読めるが、単語の意味がわからない。
そこから私は単語の索引をひきまくるbotと化した。
ここまで来たからには絶対に可をもらわなければならない。
60点を出さなければならない。
ここで取れなければ脱落だ。
まるでイカゲームに参戦させられている気分になる。
例文を丸々パクったり、索引を引くスピードを限界突破したり、なんやかんやあって記述を埋めていく。
「そこまで!」
チャイムが鳴り止むギリギリまで私は魂の答案を作り上げた。
「もう、悔いはない。」
答案を提出し、教室を後にした。
後日、成績発表があった。
「他力本願、ワクワク!」
心のアーニャが、ステラ⭐️(単位)くだちゃいとねだる。
画面をスクロールしていく。
韓国語 可 60
なんと単位が取れていた!最低点万歳!ビバコリアンソンセンニン!!!
ソンセンニン、情けで単位をくれてありがとうございます。
イカゲームいつか必ず見ようと思います!
来年も再来年も、いや向こう10年はハロウィンの仮装はイカゲーム以外しません。
時代に乗り遅れようとあなたの笑顔を守りたい。
あんなに楽しげにイカゲームの話をしていたのだから。
ちなみに、今でもキーボードに韓国語設定が残っている。
英語と日本語を変換する為に地球儀マークを押す度に、毎回韓国語がアニョハセヨと言いたげに出現する。
そろそろやかましいので設定を変えるつもりだ。
ソンセンニン、ミヤネ!(先生、ごめん)
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