見出し画像

【3分解説:日本の農林水産物・食品の輸出額が1兆円突破】日本の食文化を世界に

【農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆円突破】

・日本の2021年の農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆円を超えるみたいですね。ここ10年で2倍超の増加をしています。
※2021年12月16日付日経新聞「農林水産物・食品輸出、初の1兆円超 海外需要回復でhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA167BV016122021000000/

・日本の農業や漁業といえば、働き手の高齢化や次世代の担い手不足といった、ややネガティブなイメージがありますが、業界として盛り上がってきているのでしょうか。
・また、日本政府は強気な姿勢で、2030年までに5兆円の目標を目指していますが、そもそも、一体何を輸出していているのでしょうか。また目標は実現できそうなのでしょうか。

日本はどこに何を輸出しているのか。なぜ輸出が伸びているのか。

・昨年1月~11月までの輸出額の内訳を見ると、加工食品(アルコール、お菓子、コーヒー、お茶など)4割、農産物(牛肉、りんご、イチゴなど)3割、水産物(ホタテ、真珠、ぶり、さば、かつお)2.5割、林産物0.5割(木製家具)となっています。
・加工食品が中心で、農産物や水産物については、イチゴやホタテなど単価の高いものが中心になっていますね。

・どのような国に輸出しているかを見ると、国別の輸出額では中国(2,023億円)、香港(1,976億円)、アメリカ(1,507億円)の順位になっています。世界の2大大国である米中向けは納得ですが、香港の輸出額も大きいですね。
・香港経由で中国に輸出されている分もあるようですので、実質中国向けが輸出の中心と言えますね。

・何が輸出額を増やしているのかというと、前年同期比(2020年1月~11月)の増減額を見ると、アルコール(+416億円)、ホタテ(+293億円)、牛肉(+220億円)、真珠(+106億円)の貢献が大きいようです。
・いずれも順位に若干の違いはありますが、中国、米国、香港向けが中心になっています。
・例外として牛肉の一番の輸出先はカンボジアとなっていますが、これも中国に再輸出されているため、実態としては中国向けとなっています。

どのような人たちが日本の農産物を欲しがっているのか

・先ほど確認したように、現状の農林水産物・食品の輸出先は中国、米国が中心となっていますね。
・価格の高いものが多いですので、富裕層中心に購入していると思われます。
・逆に言うと、国内でこうした価格の高いの食品を生産する主体は限られています。輸出額の増加で均一に富が行き渡ると言う訳ではなく、懐が豊かになっている農林水産業者はごく一部のようですね。

他の国と比べて、日本の農林水産業は競争力があるのか

・GDPに占める農林水産物の出荷額の割合で見ると、日本は僅か2%にとどまり、米国(12%)や英国(18%)と比較しても低い水準ですね。
・農業に限って言えば、日本の農業生産額9兆円程度のうち、4割を占める野菜・お米といった食品が上位を占めています。こうした生産額が大きい食品で海外需要を捉えることができれば、輸出額も増えますね。
・ただ、日本の農業は価格で海外産と比較すると高く見えてしまいます。(米国で日本産のお米を売ろうとすると、米国産のお米の2~3倍になってしまいます。逆に、日本国内で比較すると、国内産は5キロ1600~2000円の相場ですが、庶民の味方「業務スーパー」だとカリフォルニア米が5キロ1200円で買えます。)
・なぜ日本の農産物の価格が高くなってしまうかというと、各農家の農地面積が小さく分散しているとか、そもそも日本の国土は傾斜地が多く農業に適した面積が限られている、といった事情があります。
・米国のように大規模な農地を確保して効率的に生産できる国とはそもそも環境が違います。結果、経営の規模を大きくして効率的に生産しづらく、コストを引き下げることが難しくなり価格を引き下げることも難しい状況です。

・こうした理由から、日本の農業は価格で海外と戦う必要のある食品(米や小麦など穀物、野菜)では競争力は劣後します。
・逆に、高い価格を正当化できる品質を提供できる食品(ブランド牛やイチゴなど)では、戦い方次第で十分競争できると言えるのではないでしょうか。
・日本という国の「食」に対する海外の評価は高いようで、好きな外国料理のアンケート調査では、日本料理に対する評価は1位(66.3%)で、2位のイタリア料理(46.4%)、3位の中国料理(42.5%)をダントツに抜いています。
・また、海外の日本食レストランも2.4万店(2006年)から11.8万店(2017年)と急拡大しており、こうしたお店は各地の人目がつく主要都市に多く立地していると考えられますので、日本食の認知度も高まっているのではないでしょうか。
・こうした日本の食文化に対するイメージをうまく活用すれば、日本の農林水産物もまたジャパン・ブランドとして世界に売り込む余地は十分にあるのではないでしょうか。
※農林水産省「農林水産物・食品の輸出促進について」https://www.maff.go.jp/kinki/seisan/nousan/yusyutu/attach/pdf/seminar-27.pdf

政府はなぜ輸出を増やそうとしているのか。目標5兆円は達成できるのか。

・日本の食品市場が将来、人口減少・高齢化で縮小が見込まれる中で、農林水産業の稼ぐ力を維持・向上するために、拡大が続く海外の食品市場を取り込みたい、という理由です。
・日本の食文化を評価してくれる海外消費者の心に刺さる食品を売り込むことができれば、輸出は増えていく余地はあるのではないでしょうか。
・また、今輸出で金額が大きい食品はブランド牛やアルコールなど一部に限られていますから、海外消費者が高いお金を支払ってもいい、と思える価値のある食品を開発・提供する余地もまた十分あるのではないでしょうか。
・日本というブランドを活用できるポイントはいくつもありますので(旨味を上手く使う健康食品、日本ならではの四季を感じさせる食品、味噌や醤油など発酵食品など)、伸びしろは無限大かもしれませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?