見出し画像

人生が終わってから

休み明けの月曜日、おっちゃんの訃報を聞いた。
私が今の職場に入ってから、おっちゃんはおっちゃんだった。
濃い顔の人だった。
職場で会う度に「よぉ、姉ちゃん」と声を掛けてくれた。
怖い顔の人だったのに、優しかった。
息子さんも同じ職場にいて、同じ社宅に居た。別居はしてた。
私が気がついた時には日本人ではない奥さんは国に帰ってしまい、二度と戻らなかった。
おっかあにはおっかあの事情があるんだ。
おっちゃんはそう言って定年までおっかあを待ち、そのまま退職した。
おっちゃんが退職する前、私はおっちゃんが仕事で不利なことを伝えなきゃならないことがあった。
おっちゃんは怖い顔で俺は納得いかない!と私に言った。
でも、次の日、おーい!事務さん!ってニコニコしながら手を振ってくれた。
そんなおっちゃんだから、上司だろうが新人だろうが皆おっちゃんに懐いた。
おっちゃんは酒飲みで豪快で、でも悪口や陰口は言わなかった。
いっつも、ガッハッハッって笑ってた。
勿論おっちゃんを気に入らない人もいた。
おっちゃんは出世したがらなかった。
現場で仕事して、現場で物言う人だった。
現場が大好きで、いつも現場にいた。

おっちゃんの訃報を職場の至る所に伝え回った。
みんな、え?おっちゃんが?って絶句した。
この間あって話したのに、とか、急に病気になったの?とか色々聞かれた。
みんなおっちゃんが居なくなったのを悲しがり、残念がっていた。
おっちゃんより偉い役職ある人みんな、花輪を送ると言った。
ある人は俺喪服のスーツ、クリーニングしてないんだ、どうしよおっちゃんに悪いよなって言った。
おっちゃんは気にしないんじゃない?会ってきなよ、喜ぶよと私は言った。

人が死んだあとは知ったこっちゃ無いとか言うけど、やっぱり人から好かれてた人はこちらが言わなくとも香典を持ってこられたりする。
おっちゃんと同期で5年前に亡くなった人が居たんだけど、その人も豪快で仕事出来て優しかった。
お葬式の時、喪主を務めた奥さんが主人は娘には優しくて私にはぶっきらぼうだったけど、でもこんなに沢山の人が来て下さるとは思わなくて、主人は幸せだったと思います、ありがとうございましたと語って、泣いた。
お葬式に来てた人皆泣いた。

人生の最後、皆じゃないけど、その人の人となりが出るよなと思う。
おっちゃんも同期の人も沢山色んな人と喧嘩しながら、人が大好きだった。
おっちゃん、ありがとうございました。
同期のおじちゃんとあの世で仲良くドツキあってくれい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?