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力を貸してもらう力(2/4)『"力を貸してもらう”ということ』

 ずいぶん昔の話になりますが、私も組織に就職し、「仕事」というものに携わりました。初めての職場は、市役所の総務部で、主に市が保有する財産の管理を行うものでした。その後、労働行政や農業振興など、人事異動を通して様々な仕事を経験させてもらいました。

 組織の中で働くということは、集団の中に自分の居場所を見つけることでした。お客様(市民や業者など)から信頼を得られるよう丁寧な対応を行うことは当然のこと。それ以外にも、部署の中での人間関係や、部署を超えたプロジェクトチームのメンバーからの信頼を得ることも大切な仕事でした。特に、一緒に働く職員からの信頼は、その後の仕事を円滑に進めていくうえで不可欠だと学びました。

 職員からの信頼を得るためにはどうすればよいのでしょう。未だに正解はわかりませんが、当時の私は、「頼まれたことはすぐやる」を心掛けていました。相手の立場で考えたとき、すぐ回答が返ってくると「自分を優先してもらえた」「大切にされている」と感じるのではないかと考えたためです。そのため、よほど自分の仕事が切迫している場合を除いては、頼まれ事には少しでも早く対応するようにしていました。その結果、他部署からわざわざ私を指名して依頼されることも増え、忙しくなりました。でも、そのおかげで、私個人としては他部署を頼りやすくなりました。

 基本的に重要な業務にはマニュアルがありますから、自分で調べてある程度は仕事を進めることもできます。ただ、例えば、専門の技術職員と良好な関係を築いておき、「お前の依頼は特別に優先的に対応してやるよ」なんて言ってもらえたときは、とても嬉しく感じたものです。このように進められた仕事の多くは、質が高く満足できるものとなりました。

 私たちが一日に働く時間は8時間くらいでしょうか。組織や職種によって多少の差はあるにせよ、時間に限りがあるという点では共通しています。この限りある時間のなかで質の高い仕事を実現するためには、「力を貸してもらう」ことがとても大切。そして、「力を貸してもらう」ことは、信頼なくして叶わないということ。このことを身をもって学ぶことができた公務員時代でした。


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