見出し画像

第2章 会社の「安全性」を見るポイント


6.やはり「自己資本比率」は大切


財務の健全性を見る指標

 会社がお金を集める方法には、他人資本(負債)と自己資本(純資産)の2つがあります。
 会社を永続的に発展させるためには、資金繰りの悩みがなく、できる限り本業へ集中できる体制が不可欠です。借金返済に気をとられることのない安定したお金の調達が大切だといえます。このようなお金の調達方法が健全であるかどうかを見る指標が「自己資本比率」です。
 自己資本比率は、古典的ですが、チェックすべき大切な経営指標です。

 自己資本比率は、お金の使い方の総額である総資産(=お金の集め方の総額である総資本)のうちに、返済不要の自己資本がどれくらいの割合を占めているかを見る指標です。自己資本比率が高いほどお金の集め方が健全で、他人資本である借金への依存度が低いといえます。
 どの会社も借入金以外に、商取引での仕入債務、未払税金、将来の退職給付債務などを抱えているため、他人資本をゼロにすることは難しいですが、総資本のうちに占める負債の額は半分以下に抑えておきたいものです。

自分の商売ですから、半分程度は自分のお金で回したい」ところですね。
 その場合、自己資本比率は50%以上となります。

 

自己資本比率は50%程度が目標、目安


 これまで取り上げた流動比率や固定比率などの指標は、業種や商取引上の決済方法などに影響されるので、違う業種間では単純に比較できませんが、自己資本比率は、同じ土俵で比較できます。
 業種、業態、そして規模を問わず、自己資本比率が高い会社は財務面での優良企業といえます。自己資本比率が高い会社は、裏返せば、他人資本が少ない会社です。過去から自己資金での決済が可能な取引をとおして、着実に利益を蓄積してきた会社であり、身の丈にあった堅実経営を継続してきたともいえます。


「株主引受権」「新株予約権」と「少数株主持分」は除く

 貸借対照表の純資産の部に、「株式引受権」「新株予約権」「少数株主持分(連結貸借対照表のみ)」が計上されている場合には、自己資本比率の計算に当たって、純資産合計額からこれらを控除した金額を分子の自己資本の金額とします。
 「株式引受権」は役員の報酬対価として株式の交付を受けることができる権利(新株予約権を除く)をいいます。
 「新株予約権」とは、権利者(新株予約権者)が株式会社に対して行使することにより、その株式会社の株式の交付を受けることができる権利です。将来において権利行使されて払込資本となる可能性がある一方で、失効して払込資本とはならない可能性もあります。新株予約権は会社にとって返済義務のある負債ではないため、純資産の部に計上しますが、現株主に帰属する自己資本でもありません。
 また「非支配株主持分」とは、連結貸借対照表において、子会社の純資産のうち親会社に帰属しない部分をいいます。グループ外の少数株主の持分は返済義務のある負債ではないため純資産の部に表示されますが、親会社株主に帰属する自己資本ではありません。

 このように、株式引受権、新株予約権、連結貸借対照表に表示される非支配株主持分は純粋な自己資本とはいえないため、これらを分子の純資産から除いて自己資本比率を計算します。


「自己資本比率」を高める3つの方法

 自己資本の額を充実させ、自己資本比率を高める方法は3つあります。

 1つめの方法は、増資により資本金の額を増加させることです。
 直接的で、かつ、即効性のある方法です。
 ただ、注意しておくべき点が2つあります。

 まず新株発行に伴い発行済株式数が増えると、既存の株主に帰属する1株当たりの価値が希薄化します。
 そのため、「増資で調達した資金を将来の発展と利益獲得のために有効活用します!」という合理的な説明をしなければ、現株主は納得しません。
 増資には、既存株主への配慮だけでなく、資金使途に関する明確な方向性を示す「エクイティー・ストーリー」が求められます。 

 続いて、増資の効果が永遠に続くわけではないということです。その後、配当金を支払う時に利益剰余金を取り崩すことで、自己資本が減少します。 
 もしも業績の悪い会社が「配当優先株」の発行による増資などを行うと、かえって自己資本を減少させる原因となってしまいます。


 2つめは利益の蓄積
 損益計算書と貸借対照表はつながっています。損益計算書の税引後当期純利益を貸借対照表の利益剰余金の一部として社内に留保していく方法です。 
 1期あるいは2期の利益計上で、すぐに自己資本比率は高まりませんが、会社としては、もっとも望ましい経営成果の形です。

 そして、3つめに自己資本比率を高める間接的な方法として、ムダな資産とそれに対応する負債の圧縮があります。
 総資産の圧縮で、自己資本比率の計算式の分母である総資本(=総資産)が小さくなり、結果的に自己資本比率が高まります。


増資・利益の蓄積・総資産の圧縮で財務体質を改善!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?