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音楽とはなにか?を探求すること

私にとって「音楽とはなにか?」という問いは、とても重要な問題です。
私は、この問いの答えをずっと探求しています。

作曲家になりたくて作曲を勉強した…という面もなくはないですが、その中心にある問いはいつも「音楽とはなにか?」です。

この問いについて、あまりにも深く考え続けてしまったため、作曲家になるしかなくなってしまったとも言えなくもない。
そう考えると、私は作曲家よりも、音楽学の研究者のほうが向いていたのかも、という気がします。

音楽は自然音の模倣ではない

風の音 や 潮騒の音 や 雷の音 といった自然音によっても感情は生じますが、音楽がもたらす感情は、それらとは明らかに異なる気がします。

しかし、芸術の多くは、実際に存在するなにかを写し取ったものであり、デフォルメしたものです。
それを古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、『詩学』という演劇を論考した講義ノートの中で、ミーメーシスと呼びました。

文学は、社会のありさまを文の形で写し取ります。
美術は、自然や社会のありさまを絵画や造形として写し取ります。
演劇は、人々のありさまをそのまま写し取ります。

ミラーニューロンと芸術

人間は、嬉しそうな顔をした人を見ると、自分も嬉しくなります。
悲しそうな顔をした人を見ると、自分も悲しくなります。

ヒトの脳にはミラーニューロンというものがあり、ヒトやヒトに似たものを見ると、見た対象が感じているであろう感情を無意識的に写し取るようです。
この脳の特性が、人間を社会性動物として連携させ、文明や文化を育んできたのでしょう。

そして、その原理を応用して作られるのが、文学や美術、特に演劇といった芸術であるように思われます。
読者や観衆の心に特定の感情が生じるように、現実のありのままの姿から、その一部だけを切り取ったり(捨象)、クローズアップしたり(強調)することで、効率よく再構成して、提示しているわけです。

しかし、音楽は一体、なにを模倣しているのでしょうか?
音楽はどうやら、現実世界を模倣することとは関係がなさそうです。

模倣ではない音楽以外の芸術

音楽以外にも、模倣とは言いにくい芸術の分野があります。
ざっと考えるに、建築、工芸、料理…といったものなどでしょうか。

たしかに、巨大で壮麗な建造物に圧倒されることもありますし、素晴らしく精彩に造られた工芸品やアクセサリーにうっとりすることもあります。
しかし、この2つは、喜怒哀楽のようなものとは、あまり連動している感じはしません。
音楽で生じるのは、喜怒哀楽といった人間らしい感情の起伏に近いなにかです。

そうした点で言うと、料理は、音楽に近い芸術であるような気もします。
音楽について、わからなくなるときは、料理ではどうなっているのかを考えることにしています。
料理は、音楽と同様に、言語や文化の壁をもすり抜けていく特別な芸術であるとともに、音楽よりも遥かに発展している最も前衛的で多様な芸術であると思われます。

音楽の駆動原理の謎

建築や工芸とは異なり、文学や美術や演劇もまた音楽と同じ喜怒哀楽の範疇にある感情を想起させます。
しかし、それらの芸術の駆動原理は前述の通り、模倣にあります。
では、音楽の駆動原理は一体どういったものなのでしょうか?
言い換えれば、こうなります。

聴衆の心に特定の感情が生じるように仕向けるには、
一体どのような音を、どのように重ねればよいのか?

子どもの頃の私は、このような遠大な問いを立ててしまいました。
問いの立て方が「どうしたら売れる曲が作れるか?」とか「どうしたらみんなが喜んでくれる音楽が作れるのか?」とかでない時点で、現代社会で生きていくにはかなりツライわけですが、無邪気な子どもにはそんなことは関係ありません。

しかも、その問いはどう考えても、自分なりに納得した気分になりたいというだけのことでして、完全に私個人の中で完結してしまう問題でしかありません。

音楽の駆動原理を支配する

自分なりに納得した気分になるためには、私は、少なくとも次のことをする必要がありました。

自分が 企図した特定の感情 を
自分が 意図的に組み立てた音構造 を聴くことによって
自分の 心の中に生じさせる

これがうまくいったとき、はじめて私は、その範囲において、
音楽の動作原理を理解し支配(制御)できた
ということになります。

いまだ、私は音楽を支配した気分に浸れてはいませんが、僅かながらも理解できてきた部分もあります。
noteでは、そのような話を、少しずつできたらよいかな、と思っています。

まとめると…

かれこれ半世紀以上も生きてきたけれど、音楽の謎は未だよくわからない。
謎は深まるばかりである。
ご挨拶に代えて。

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