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歌詞が好きな楽曲《アニソン編》

こんにちは。

さて今日は、もう冬かよ!?という声が聞こえてくる中「雪が降ってないからまだ秋」と強弁する僕こと西住が「歌詞が素晴らしい」と思った曲、3曲を紹介したいと思います。


……思いますが、候補を上げていくうちに3曲では収まらなくなってしまったので、「アニソン編」「ロック/ポップス編」の2回に分けてご紹介したいと思います。

まずは第1回「アニソン編」にどうぞお付き合いください。


アイドルソングかくあるべし。キッチュな横文字使いが可愛らしい「アルストロメリア」

作詞:鈴木静那

アイドルマスターシャイニーカラーズ内のアイドル、大崎甜花・甘奈の大崎姉妹とふんわり優しいお姉さん桑山千雪による3人ユニット「アルストロメリア」のデビュー曲『アルストロメリア』

いかにもアイドルソングらしいポップでキラキラした楽曲もさることながら、ちょっとひねた言葉選びが光る名曲です。

歌詞全体を見ると、恋する乙女のドキドキや不安定な心模様をアルストロメリア、即ち花に例えたベタと言えばベタな、王道のアイドルソングに仕上がっています。
花好きとして感心したのは「ねじれた茎(バルブ)が不完全でも」のライン。
園芸用語でバルブというと、洋ランの膨らんだ茎の部分や球根の事を指すのですが、何を隠そうアルストロメリアは南米原産の球根植物で、この曲は単なる花の歌ではなくて、キチンと「アルストロメリア」の曲になってるんですね。

そして何より特筆すべきは歌詞中要所要所に散りばめられた横文字。
ニヒリズムもペシミズムも退屈がテンプレ
のような、哲学用語などから引用された一般的とは言い難い横文字がチラホラと登場します。

もちろん、それらは何となくの格好良さのために散りばめられている訳ではなくて、チキンと意味が通ってるのですが、とにかく語感の良さが絶妙で、厨二的な雰囲気を一切感じさせない言葉選びなんです。

特に「ディストーション」や「ジャッジメント」という言葉は、語感的にはかなり強い音で、本来ならこの手のポップな曲には使われないような言葉です。
それが違和感なくするりと口から滑り出してしまうメロディーと語感のバランス感覚。
これぞ正にプロの犯行と思わず唸ってしまうような素晴らしい歌詞になっています。

あとは

Aメロ…困惑や葛藤、躊躇い、諦観といったネガティブな感情
Bメロ…歪で不完全な自己の受容。それを目の前の人に受け入れてくれますか、という投げかけ。
サビ…開放感や強さ、強かさ、あるいはあっけらかんとした昂揚。

という風に、歌詞の構造が非常にシンプルで、作詞の教科書とも言うべき、まさにお手本のような構造をしているのも好感触。


歌詞は楽曲に追随し並び立つもの『カサブタ』

作詞:千綿偉功

週間少年サンデーの人気マンガ『金色のガッシュ』のアニメ版『金色のガッシュベル』のOP。

いかにも少年漫画アニメのOPというような疾走感のあるバンドサウンドが爽快な楽曲で、僕と同世代の人ならそらで歌える人も多いのではないでしょうか?

僕自身、詞先で描いたことの無い人だから感じる事なのかも知れませんが、「歌詞は楽曲ありき」という信条を持ってます。
要は「楽曲の雰囲気を大事にした作詞がしたい」って事なんですが、そういう観点で「カサブタ」は本当に見習いたい良い楽曲なんです。

歌詞全体を見渡せば、いかにも思春期真っ只中の男子という歌詞で、ナイーブで傷つきやすい内心を隠しながら強がったりカッコつけたりするあのいじらしさがビンビンに迸ってます。

何よりもう「カサブタ」ってワード自体がズルい。うますぎる。

例えば(語感がどうとかは一旦無視して頂いて)Bメロの歌詞が「傷跡だらけの情熱」だったらどうでしょう?
何だかこう、キザったらしくて鼻持ちならない雰囲気が出てしまいませんか?
ですが、「カサブタだらけの情熱を忘れたくない」と書くと、なんだか鼻に絆創膏を貼った短パン小僧のような泥臭さと向こう見ずな青臭さがズビズバ溢れ出します。

カサブタとは言うまでもなく、傷口が乾いて出来るものであり、それは「傷跡」であり同時に「治りかけ」でもあります。
つまり単なる傷・ダメージでは無くて、復帰、そして前へ進もうとする凄くポジティブなパワーワードなんです。

大人になれない僕らの強がりをひとつ聞いてくれ

この歌詞中の"僕"は決してクールでもスタイリッシュでも、自己愛と自己嫌悪のサンドイッチにされた陰キャの類いなんかでは無く、無様で不恰好で弱くとも、それでも歩みをやめられない愛おしくてカッコいいクソバカ少年(と思います)。

水をあげるその役目を果たせばいいんだろう?

「熱血」とかそういうのはダサいとうそぶいていても、その身に流れる熱い血を止められない。けれど恥ずかしいから隠したい。

そんな思春期男子のいっっっちばん濃いアレが摂取できる名曲が『カサブタ』なのです。


お口の恋人『うまぴょい伝説』

作詞:Cygames(本田晃弘)

もはや2021年覇権ソシャゲと呼んでも異論が出ないであろう「ウマ娘プリティダービー」
この曲はメディアミックス作品である本作のアニメ第1期(2018年)よりも更に前、「ウマ娘」という作品の制作発表がなされた2016年から存在した楽曲であり、言うなればアイドルマスターシリーズにおける「THE IDOLM@STER」のような存在。

後に作詞・作曲を担当したCygamesの本田晃弘氏が酩酊状態で作曲し、シラフで歌詞を書いたと語る通り、ポップで一聴してしまえば癖になるような明るい電波ソングに仕上がっています。

さて、歌詞の方も当然トンチキに輪をかけてトンチキと言えるおかしな楽曲なのですが、この歌詞の真髄は歌詞を見ただけでは伝わりません。

かつて星野源氏がおじゃ魔女どれみのOP『おじゃ魔女カーニバル!!』を評して「(歌っていると)口が幸せ」というような事を言っていましたが、この『うまぴょい伝説』もまさにその系譜。

お日様ぱっぱか快晴レース

もう歌いだしのこの歌詞の時点で「あっ」と察してしまえるのですが、つまり歌いだしで曲の方向性が分かるという点で白眉。
ここは「おじゃ魔女カーニバル!!」でいうと「どっきりどっきりどんどん」のラインに当たりますが、どっちも口ずさむだけで無性に心が躍ってしまいます。
(つまり実質「うまぴょい伝説」は「おじゃ魔女カーニバル!!」……?)

あと1番Aメロは「ちょこちょこ」「だんだんだんだん」「めんたまギラギラ」と繰り返すワードが頻出するのですが、シンプル且つ歌詞で疾走感を出せていますね。


さて次に語りたいのがBメロ

今日の勝利の女神はあたしだけにチュゥする

ここの歌詞も「キス」では無くて「チュゥ」にしているのが、非常に◎
別にキスでもチュゥでも接吻でも口吸いでも意味は通じるのですが、上記の『カサブタ』同様、「この楽曲なら、ここの歌詞はチュゥでしょう!」という発想に至るのは至極当然。ええ、いたって健全。

サビ頭の「君の愛バが」も、キチンと置くべきところに然るべきパワーワードを持ってくるのが流石なのですが、僕が思わず唸ってしまったのが

ばきゅんぶきゅん駆けていくよ

のところなんですが
僕は初めてこの楽曲を聞いたとき「果たして自分がこの楽曲を渡されて作詞を依頼された時ぶきゅんなんて言葉を思いつくだろうか……?」と思ってしまいました。
リズムが「タタン、タタン」なのだから「ドカンバコン」とか「モシン・ナガン」とか「いやんばかん」とかは思いつくとは思いますが、ぶきゅん……?
いや、よしんば思いついたとしても、「ぶきゅん」と書いて出来ました!って提出できるでしょうか……?
嫌味でも皮肉でも何でもなく、ただ純粋にその発想力と胆力に脱帽してしまいます。
そして何より「ばきゅん♪ぶきゅん♪駆けてーいーくーよ♪」と歌うことのなんと楽しい事か。

2番以降は歌詞のはちゃめちゃっぷりに拍車がかかっていくのですが、この辺は作曲者と作詞者が同じなのが良かったですね。
もしも作曲者が別だったら単純な1番の繰り返しだった可能性もありますし、もしあのメロディを始めから作ったのなら、それはもう鬼才中の鬼才、フランク・ザッパもヒゲを剃って出直すレベルの大天才でしょう。

そうそう作曲といえば、サビのメロディが何気にいいですよね。
底抜けに明るいようでスローに歌ってみると実は結構マイナー調なメロディなんですよね。
そこにあの電波歌詞が乗ってる訳ですから、何となく勘違いしがちなんですけども。

つまり「うまぴょい伝説」はかつて数多存在した電波ソングと比しても、非常によく上手く作られており、コントロールされた狂気、バカと真面目のシンメトリカルドッキングとも言うべき非常によく出来た楽曲だと思います。



さて、今回はこの辺りで失礼しましょう。

次回は「ロック/ポップス編」を予定しておりますので、お暇でしたらまたお付き合いください。

 

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