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3月の初め。就活がそろそろ本格的に始まるころ。私がまだLDSの価値を知らないころ。 私は自分の思考力に小さくはない自信を持っていて、論理的な考え方のできる人間であると自負をしていた。GENTENから始まった私の自己分析、その結果はほとんど「考えることができる」に集約されていた。 意志を強く持っている 頭の回転が速い リーダーシップをとることができる 綺麗な言葉を使えばこんなものだ。客観的に見て自分がどのくらいの能力を持っていたのかは分からないけれど、成果はそれ
ビードル むし・どくタイプ 高さ 0.3m 重さ 3.2㎏ 特性 りんぷん まいにち じぶんと おなじ おもさの はっぱを たべる。あたまの はりで おそってきた てきを げきたい。 まだスクールに通う前の、秋のとある日。 仲の良かった友達とケンカして、部屋に引きこもって泣いていた日のことだった。 あっちがわるいのに。 ぼくまでおこられた。 拗ねて拗ねて、たくさん泣いた。 あの頃は泣き虫だったから。 「彼」に出会ったのは、そんな日のことだった。 階下
「まだ付き合いたいって気持ち、残ってる?」 まだ寒さが厳しい二月。十二時を過ぎた頃。 電話の向こうで、君はさらりとそういった。 初めておれが君と会ったのは、柏のシェアハウスだった。他にもたくさんの住人がいるなかで、おれは君と出会った。 めっちゃ人気者やなあ 初めの感想はそんなものだった。君のまわりにはたくさんの人がいて、いつも楽しそうな笑顔に囲まれていた。 いるだけでまわりの人にハッピーを振りまいてる、そんな感じ。 話してみたいな、って思った。 そこ
暗闇に包まれたステージ。 ひそやかな音楽が流れだす。マイケルジャクソンの独特な曲調。 しばしの静寂。 観客の意識が自然とステージへと向けられる。 私は息をつめてそちらを見つめた。 突如始まるアップテンポ。同時に、スポットライトが中央をカッと照らした。 「わあ…」 黒い影に見えていたものが、急に人の形をとった。 真っ黒なスーツに真っ黒なハット。全身に黒をまとった踊子が、リズミカルに曲を描く。 衣装にちりばめられたスパンコールが、ライトを反射してきらきら光っ
あたしがあこの手を握った日から。 私が私の片鱗を見つけられた日から。 あたしたちは、上に登るでもなく、下るでもなく、ただおろおろと山の中腹をいったりきたりしていた。 あたしはまだ、あこの表情を窺い知ることができなかった。 あこはだいたい無表情で、以前より柔らかくなったけれど、それでもまだ何を考えているのか分からなかった。 楽しいのか、 悲しいのか、 嬉しいのか、 寂しいのか、 あこの気持ちが分からないまま、あたしはどの道を進むでもなく停滞していた。
目の前に、山がある。 いいや違う、私は山に登っている。岩を乗り越え、枝にしがみつき、必死に前に進もうともがいている。 いつから登っていたのかも、どうして登り始めたのかも覚えていない。 初めはだれかと登っていたような気がする。けれど、いつの間にかみんな違う道を選んで、遠くから声がかすかに聞こえるだけになった。 とにかく、高いところに行きたいと思った。 人より高いところへ。 昨日より高いところへ。 近道があれば多少無理をしてでもそちらを選んだし、停滞することは許さなかった。
私は人間関係が希薄な方であると思う。友人は広く浅くをモットーに付き合ってきたし、むしろ初対面で二度と合わないであろう人との会話の方が盛り上がることもある。 私にとって、友人や関係性は刹那的である方が好ましかった。人と話をするのは好きだし、いろんな人と仲良くなりたいと思うけれども、ずっと一緒にいたいとか悩みを共有したいとかは思わない。一瞬でも合わないと思えばそれまでだし、相手を理解するために歩み寄ることはほとんどなかった。 ここ数年、そんな感じでドライな関係性を築いてき
今日、一つの企業の選考を辞退した。 私は「やりたいこと」が見つからなくて、「とりあえず興味があると思われるもの」を仕事にしようと思って就活を進めてきた。 なにがやりたいか、なんでやりたいかなんてすべて後付けの理由だった。でも幸か不幸か私は論理的に考えるのが得意だったから、就活の軸として綺麗な理論を作ることができてしまった。 本心かどうか分からないのに。 それで今、とりあえずここでと決めた第一志望群からは内定をもらっている。でも、「なんとなく」の志望で決めた業界だから