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20240401 幽霊を待つ人

 頭上に走るモノレールの線路を辿って、立川駅から多摩川まで歩いた。多摩川の上に架かっている巨大な橋をカップルが渡っていて、彼氏氏は鮮やかな緑色のコンバースを履いていた。そのふたりの進む方向に垂直に川に沿って歩き始めたのだが、その道は少し高くなっていて道の両側を見下ろすことができた。右側にはもちろん川があった。左側では、コンクリートの壁に向かって1人でテニスのような、何かスポーツの練習をしている人がいた。それからトタン板でできた即席の建物のようなものもちらほら建っていた。ときどき後ろから自転車に乗った人に追い越される。ふたたび右手に視線を戻すと、反対側の岸に巨大なマンションが見えた。さらに川をなぞっていくと、次に架かっている橋の手前の辺りにうんと背の高いクレーンが数本生えていた。工事現場の写真を撮るのは楽しい。工事現場は突然現れて突然消える場所であり状況で、幽霊みたいで不思議だなあといつも思っている。
 誰もいない野球場の裏を通ってモノレール沿いに戻ってくるとぽつぽつと雨が降り始めたので、道路の下にあったトンネルに駆け込んだ。さっきテニスの人がいた辺りだった。近くを歩いていた人や自転車の人もトンネルの中に集まってきてちょっとした集会所のような、変な空間ができあがった。人々は雨が上がるのを待っているのに、誰かが来るのを待っているようにも見えた。

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