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20240216 誰かの場所

 写真展のチケットを渡すために、川口さんにあった。東浦和駅でピックアップしてもらい、川口さんが息抜きに散歩するという川縁の道にまず案内してもらった。日はほとんど沈んでいた。歩く方向の右後ろには燃えるようなオレンジ色の空があり、前方では仄かに青く光る空が視界を覆っていた。川が増水したときのために溜池がつくられていて、その向こうに町の明かりが見え、電車の走る音が聞こえた。川口さんの言った通り、この川の上空は飛行機の空路であるようだった。ひっきりなしに飛行機が空を掠めていった。そうは言っても、赤や青や緑色のランプがぽつんと進んでいくのが見えるのみで、飛行機ではなくなにか、おもちゃに備えられたチープなLEDのようでもあり、どこか遠くの惑星のようでもあった。大自然の中の星の写真のように、夜空に描かれた飛行機の軌跡を想像した。シャッターを切ると、地面と空のぼんやりとした微かな境界線と、光の丸い図形が数個写っていた。冷たい風がコートの中に忍び込んできた。夕暮れの大気はやはり心地がいい。空の色が自分の身体に浸透してくるような、じわりという感覚はふたたび車に乗り込むと自然に温められていった。

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