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数分間のエールを 感想

「空には星がある でもそれは見えない 街の光に遮られ 喧騒に遮られ 雑音に遮られ 確かにそこにあるはずなのに 何も見えない まるで何もないかのように 暗闇が広がっているだけだ でも星はあるのだ 間違いなくそこに だから僕は だから私は 今日も星を探している」

映画見終わった瞬間、見て感じたことをどこかに書き出したい衝動に駆られるくらいに心動かされた。
脚本:花田十輝作品にハズレなし。

自分の作ったモノで誰かの心を動かしたい。そんな思いをクリエイターは誰しもが持っている。
初めて予告を見た時彼方が3D空間でMVを作っているシーンを見て感じたワクワク感。絶対見にいこうと思ったのは間違いじゃなかった。
「この歌のMVを作りたい、自分が待っていたのはこの曲だ」
心臓が高鳴り作っていて楽しそうな彼方とモノが作り上がっていく過程にこっちもワクワクしてしまう。
「1日が短い 他の時間がうっとおしい でもやりきるんだ 作ってよかったって 心の底から思える作品にするんだ」

水彩画のような淡いタッチのグラフィックが印象的。
今までにないような3DCGのデザインでこんな表現ができるのかと驚いた。
自分の中で3DCGアニメの新次元を見せてくれた作品。

彼方とトノの関係性。最高の友人キャラ。
彼方は自分を差し置いてコンクールに入賞したトノに対して少なからず劣等感は抱いていたと思う。それがあのシーンで爆発してしまった。
そんな思いを抱えながら友人として付き合ってきた彼方はすごいし、トノからしても意外だったんだろうか。いつからの付き合いなんだろうか。コンクール入賞前から友達だったのか。お互い絵を描くことが好きで元から友達だったのかな。
↑公式サイトのキャラ紹介に中学校からの友人と書いてあった。

才能ってなんだ。
誰でも周囲から煽られていれは自然と調子に乗ってしまい、自分の音楽なら、自分の絵ならもっと上へいけるもっと認められるだろうと最初は思う。
いつしか壁にぶち当たり挫折を覚え、その気持ちになんとか折り合いをつけて別の場所へ去っていく。
先生が愛用のギブソンをフリマサイトに出品していたのは物悲しくなった。踏ん切りつけようとしたんだな。5000円になりませんか?値下げコメントには笑ったが。あるある。
「あのコンクールで入賞なんてしなけりゃ…」トノも自分に絵の才能があると思い美大を目指し努力してきた。スケッチブック51冊分がその努力を物語っている。彼方と話しているシーンいつも何かを描いているのが印象的だったが、それぐらい常に描いていないと足りないと思い続けていたんだろうか。終盤美大に行くのを辞めて教室で勉強をしているシーンで、彼方視点ではスケッチブックを描いているのがフラッシュバックした演出もよかった。それが当たり前の光景だったんだなぁ。


自分が今回のは最高の出来だと世に送り出したモノが誰にも注目されず何の反応もない。それがどれだけ虚しいことなのか。それが何回、何百回続いていくとなると…。
自分はクリエイターではないが、こうやってnoteを書いていると少しでも気持ちはわかる。いいねくれー!

自分が思った最高のMVは先生の歌に込めた想いとは全く違っていた。
先生は「モノを作ることを続けていくことができなくなった、そんな自分に向けた歌。今までやってきたことは無駄じゃなかった、さぁ次に行こう」という終わりの曲。
彼方からはこれからに向けた希望のある歌だと思っていた。
解釈違いによる拒絶。
ただ冒頭彼方が言っていた通りMVはその歌に対する別の視点から新解釈の提案でもある。音楽は聴く人によって印象は変わる。
中川が自分の楽曲にMVをつけてくれた彼方に対して、自分が思っていたのとは違うイメージだったと伝える。
でも彼方は曲を作った人を応援してるMVを作ったと言ってくれて救われた。
「精一杯応援してくれる、それは素敵なことだと思うよ。」
あんまり出番なかったけどMVPだよ中川ちゃん。
そして今気づいたけど数分間のエールって、数分間=MVってことか!?

先生も中川ちゃんも可愛んだけど恋愛が絡んでこなかったのもよかった。主軸はそこじゃないもんね。

先生の歌の破壊力。雨の中のストリートライブも、ライブハウスでの歌もどちらも鳥肌もの。100曲全部聞かせてくれ!!!
彼方の「もう歌わないんですか?」ってのもすごい無神経で残酷なセリフ。言った瞬間おいやめろ!?って思っちゃったよ。
自分はモノづくりが楽しくて楽しくて仕方ないから想像もできないんだと思う。そんなまっすぐな彼方がトノも眩しかったのかも。


最後の泥臭いMVも非常にかっこよくてよかった。
周りの人たちが諦めてどんどん描くのをやめていく中一人だけ涙を拭って必死に書き殴り続けている姿。
あの姿に何かを感じ目を奪われる人は必ずいると思う。
いやいてほしい。
その人が必死にやってきた努力が報われてほしいと思う。
あのPV公式で公開してほしい。また見たい。


最後の校門での再出発のシーン。先生の目元にべっとりと張り付いていたクマが薄れていたように見えてよかった。
織重夕の声優さんのコメントも良かった。「晴れることのない曇り空のような空気感は今まで演じたことのない人物像でした。彼女の心の叫びが、一歩前へと踏み出す勇気になりますように!」

今週から上映1日1本になってたから急いで見に行って正解。
彼方とトノの中学生時代のボイスドラマが配信されていたからそれも聞きたい。

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