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空想お散歩紀行 愛の形 式の形

二人の愛が一つの形を成す、それが結婚。ここはそんな二人の新たな門出を最高の思い出にするためにブライダルプランナーという職業がある。そしてここにもそんな結婚式のプランを売り出す小さな会社があった。
「・・・どうしましょうね?所長」
「うーむ。困ったな」
今、この会社は設立以来の難問を迎えていた。
「まさかこの2種族がくっつくとはなあ」
「ですよねえ」
この会社が少し変わっているのは、異種族間の結婚を専門に扱っているところだ。
今まさに直面している問題に比べたら、人間と猫獣人の結婚なんて、普通の人間どうしの結婚と何にも変わらない。
「まさか天使と悪魔が結婚するとは思いもしませんでしたね」
多種多様な種族でも、その両極に位置する天使と悪魔のカップルがここに結婚式の相談に来たのが昨日。今日は朝から主任と部下の一人がずっと話し合っている。
天使と悪魔の仲を成立させるくらいなら、水と油を混ぜるほうが遥かに簡単だと言われている。それだけあらゆる面において相反する二つの種族が今回なんと結婚することになったのだ。
「とりあえず、教会で式を挙げるのは・・・、無理だよなあ」
「でしょうね。教会で讃美歌なんてやった日には悪魔側の親族や参列者が皆苦しみ倒れますよ」
「かと言って、呪言も話にならないしな。披露宴で出す食事もどうすればいいんだろうな?」
「聖なる食材と邪悪食材の両方を成立させた料理なんて聞いたことありませんよ。作れる人なんていないんじゃないですか?」
「どうしたものかな?」
「ニッポンのヤオヨロズ式で行ってみるのはどうでしょう。あそこの国のカミサマっていい意味でも悪い意味でも曖昧なとこありますし」
「言い方は悪いが聖属性も魔属性もうやむやにできるかもってことか。よし、そっち方面でまずプランを組み立ててみるか」
「はい」
「この前の炎竜族と氷竜族の式の方がまだ楽だったな。とにかく、今回の式を成功させればうちの評判は一気に上がるぞ」
様々な種族が愛の誓いを立てる人生の一大イベント、華やかな舞台のその裏で日々頭を悩ませている者たちがいた。

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