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空想お散歩紀行 死後のライフスタイル

墓とは何か。
死んだ人間が天国なり地獄なり、あの世と呼ばれる所なりに行くのなら、墓とは一体何のためにあるのか。
とある男は生前そんなことを考え、そして墓とは死後の家であると答えを出した。
だから彼は死後、自分が暮らす家の設計に取り掛かった。
家と言っても小さな小屋のようなもので、それでも墓としては十分大きなものなのだが。
彼はそこをとにかく自分好みに彩った。
日当たりと風通しの良い場所に家を建て、壁も屋根も自分好みの色に塗った。
内装もとことん自分の趣味に走った。
オーダーメイドの机と椅子。壁紙も自分でデザインした。石造りの暖炉も備えている。そして大きな本棚には自分が好きな本や雑誌が並べられた。
極めつけは大量の収納ができるディスプレイ用のラックには、彼が若い頃好きだったオートバイのプラモデルが所狭しと並べられた。
隅から隅まで彼はこだわり、終の棲家ではなく、終の後の棲家を完成させた。
最後に、家の玄関に表札と郵便ポストを置いた。
そして彼は亡くなった。死後の家の構想を思い立ってから一年後のことだった。
今では彼の遺族や、彼の友人知人が時々訪れて、新作のプラモデルや雑誌を差し入れてくれている。
彼は今、悠々自適に死後の生活を満喫していることだろう。

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