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【SF】STAP OVER ~ゲノム編集食品が世界を変える日~ (2)

*本小説を最初から読みたい方はこちらより
*本小説はフィクションであり、登場する人物や団体名の固有名詞は実在するものではありません。

<第2章>

 この緒方晴彦が発明したスーパーゲノム編集小麦「CNO-21」は、瞬く間に世界中のメディアで取り上げられ、「夢の小麦だ」、「Dreaming Wheat」などともてはやされ、世界中の小麦生産者の注目を集めた。もちろん消費者の、いや消費者だけじゃなく、環境団体やSDGsに取り込んでる行政機関など、多くの研究者をも魅了することとなった。

日本からこういったSDGsの課題を解決するような、素晴らしい農作物が研究開発されたという情報はメディアを飛び交い、ネット上でも大きく拡散した。緒方晴彦は、一夜にして「時の人」になったのだ。

このスーパー小麦を生み出すゲノム編集で作出された小麦の細胞/種は、まさに宝物のように扱われ特許もしっかり抑えられていたため、緒方の将来は非常に明るいとされた。そんな夢のような小麦を、長年の研究開発の末に成し遂げたのだから当然だろう。

「やったよ、かあちゃん。植物バイオテクノロジーやってきて、こんな夢のような小麦ができると思わなかった。でも、ゲノム編集技術はそれを可能にしたんだ」

緒方はシングルマザーの母親に育てられ、なんとか大学に進学してからも、奨学金をもらいながらバイトもしながら、苦労して研究をつづけたことが実を結び、博士号を取得したのだ。いつか世の中の役に立つ研究成果を発表して、世話になった母親に一番に報告したかったのだ。

「この小麦は、世界中の農場において生産に使ってもらうことによって、カーボンニュートラルが大きく前進することは間違いない。素晴らしい研究を成し遂げたと思う。またメディアがこれを注目してくれて、僕も「時の人」になれた。ノーベル賞も夢でなくなってきた」

これが世界中で、食糧危機に対して大きな効果があるだけじゃなく、カーボンニュートラルにも貢献してSDGsが前進することによって、得られる効果っていうのは、おそらく相当大きい。5年・10年、もっと長期間にわたってできることっていうのは、さらに進んでいくんじゃないかと・・

しかもこのゲノム編集により組み込んだ遺伝子で、温室効果ガスの吸収量が10倍になるという事実は、我々にとってのノウハウが全て組み込まれている遺伝子なので、特許で守られてる限りこれと同じものを作ることはできない。権利は私達だけのものだ。

同じような遺伝子のゲノム編集作物を、じゃあ作ることができるかというと、おそらく非常に難しい。この二酸化炭素を10倍吸収するという遺伝子っていうのは、遺伝子配列がちょっとでも変わることによって、おそらくそのような吸収量を獲得することはできない。我々の研究成果によれば、どうやって遺伝子を変えていっても、なかなか5倍量にならなかったけれど、この遺伝子配列に限って、10倍の二酸化炭素吸収量を達成することができた。

おそらく、似たような遺伝子配列を見つけることは物理的に難しいと思う。それだけこの権利は守られているものであり、同じ遺伝子配列を使った小麦をもし他社が使おうとしたときには、こちらの特許を侵害していることに間違いないということが簡単にわかってしまう。それだけこういった特徴的な遺伝子をゲノム編集で組み込んだ小麦っていうのは、世界に一つしかないものだ。

この遺伝子配列そのものを見つけた我々は、多分ずっとこの権利を維持することができると考えている。佐々木先生が教えてくれた唯一無二のゲノム編集農作物を僕は見つけ出すことができた。だから僕は天才なんだ。アインシュタインに変わるような天才と呼ばれるように、歴史上の人物になれるように、僕は研究を頑張ってきたけれども、ついに達成してしまった可能性がある。

人も羨む「時の人」となれる可能性が出てきた。かあちゃん、わかるかね。僕のやったことは、とんでもないことなんだよ。SDGs未来総合研究所だけど、ある意味会社だから、特許を持って、この会社をもっと大きくする。将来はこの会社の経営者になって、この遺伝子配列が組み込まれたゲノム編集のスーパー小麦をさらに発展系にできるように、研究を続けていきたい。

この研究に比べたら、グルテンフリーとか、小麦アレルギーフリーとか、そういったゲノム編集の小麦を作り出すことはたやすいことだ。でも、世界中の万人が期待する。SDGsにかなうような小麦を生み出すことが、僕の最大の目標だった。それをいま達成したんだ。

~ 第3章(準備中)~ 

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