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3‐6 動かさない練習

「動かさない練習」はとても大切です。早速やってみましょう。

「右の手のひらを上にして、握った左手でポンと手を打つ」をやってみましょう。スタートの点(左手があるところ)をX、ゴールの点(右の手のひら)をYとします。

 A:XからYまで1回、強く振り下ろす。
 B:1、2、3、4回は振り下ろさずに、強く振り下ろしたイメージだけを行い、5回めに強く振り下ろす。

 AとB、スピード、パワーともに上回ったのはおそらくBでしょう。
 
Aは、一次運動野から運動の指令が出て、動かす筋肉群がそのまま収縮します。

Bの場合、1回目から4回目までは、動いているイメージをしているにもかかわらず「身体は動かさない」わけですから、「一次運動野からの運動指令が抑制される」ことになります。

 これは「今からやりたい動きにブレーキがかかっている状態」なのですが、このような場合「一次運動野以外の運動に関するエリアが強く活性化する」ことがわかっています。

 ですから1回目から4回目までで、通常よりも一次運動野以外のエリアが強く活性化した状態をつくることができます。そうやって準備しておいて、5回目でブレーキを外すと、1回目からそれをやるよりも大きな電流が生じ、ハイパフォーマンスが発揮されるというわけです。

・身体を動かさずに投球をしたときの身体の動かし方をイメージする。そのあとに投球してみる。

・楽器を持たず、でも演奏している感覚を克明に再現する。そのあとに楽器を持ってみる。

・歌っていないけど、脳の中では思いっ切り歌っている。そのあとに歌ってみる。

・技を出していないけど、イメージの中ではめいっぱい技を出している。そのあとに技を出してみる。

・奇数回を「動かさない練習」、偶数回を「動かす練習」として、交互に行い運動イメージと、実際の運動を修正していく。

 ……などなど「動かさない練習」での、「一次運動野以外を活性化し、その後にブレーキを外した状態の動きを記憶する」という方法は非常に応用範囲が広いです。

 動かしたいアクセルを100踏み込んでいるのに、動かさないブレーキも100踏み込んで、均衡を保つような感じです。

 19歳のときに30種類近くの楽器をたった一人で演奏したアルバムでデビュー、ワンステージのギャラがエンターテインメント史上最高額2億円に達したミュージシャン、プリンス。


 彼はスタジオに入る前には既に頭の中で演奏が完成していて、楽器を手にした時には全く新しい曲を次々と録音することがありました。

外見上、何もしていないように見える「動かさない練習」は、脳の可能性を拡大する練習なのかもしれません。(『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』より)

知れば、変われる。


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