呼吸‐02 37兆の小さな呼吸
私たちは普段、何気なく「呼吸」していますが、息を吸って吐くことは人間が生きていくために不可欠な行為です。約37兆あると言われる人間の細胞が活動できるのも、呼吸によって体内に取り込まれる酸素のおかげです。
肺に取り込まれた酸素は、肺胞、そしてその周囲にある毛細血管へと運ばれます。そこで血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質と結合し、全身を巡り各細胞に運ばれます。
ヘモグロビンには、酸素の多いところ(酸素分圧の高いところ)では酸素と結びつき、酸素の少ないところ(酸素分圧の低いところ)では酸素を放出するという性質があります。
ですから肺胞の毛細血管ではヘモグロビンは酸素と結合し、血流にのって各細胞付近に到達すると酸素をリリースするのです。
それぞれの細胞はヘモグロビンから酸素を受けとる代わりに、細胞内で生じた二酸化炭素と老廃物を放出します。ヘモグロビンはいわば、肺から全身の細胞に酸素を届け、二酸化炭素などを回収する「運び屋」というわけですね。
呼吸による酸素の供給と二酸化炭素の排出、いわゆる「ガス交換」がスムーズに行われるからこそ生体が維持されます。(肺炎や心不全、窒息、喘息発作などで呼吸不全の状態に陥ると、生命が危険にさらされるのはそのためです)
身体の中には、酸素濃度や二酸化炭素濃度をフィードバックするためのセンサーが備わっており、かなり厳しくモニタリングされています。呼吸に関する情報は脳幹の呼吸中枢にリアルタイムに集積され、最適な呼吸回数や呼吸の深さを自動的に調整しています。
肺で行われる身体全体のレベルの酸素と二酸化炭素の交換を「外呼吸」、組織や細胞レベルでのそれらの交換を「内呼吸」と呼びます。
一般的に私たちがいわゆる「呼吸」という言葉から連想するであろう「息を吸ったり、吐いたり」は、ミクロの細胞レベルで影響を及ぼし、37兆の細胞たちもそれぞれ呼吸しながら私たちの生命に参与しているのです。
PS.身体を知れば、楽しくなる。パフォーマンス医学