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母で、格闘家で、ラウンドガール。あきぴさん×Dr.F③ ~ファイターの素質~

──Dr.Fとあきぴさんのお話を興味深く伺っているわけですが……今、自分がお話ししているのが「2人」と思えないんですよ。Dr.Fは医師であり空手家でもあり、あきぴさんはラウンドガールでありお母さんでもありインフルエンサーでもあり、さらに格闘家でもあり……お2人とも何人分も生きていらっしゃるので、5~6人ぐらいのお話を伺っている感じがしています。



Dr.F たしかに、そうかも知れませんね。それぞれに視点が違いますし。

──その中で思ったんですが、あきぴさんはさまざまな活動をされている分、時間のやりくりも大変でしょうし、つらい思いをされる場面もあると思います。その中でいちばん支えになっているものは何ですか?

あきぴ いちばん、となると難しいですね。応援してくださっている方々のおかげで今の自分がいるので。やっぱり、応援してくださっている全ての方々への感謝と、子供の存在ですかね。

「いいお母さん」になれるかどうかは、子供がどう思うかという問題じゃないですか。世間的に「いいお母さんだ」と言われるようなお母さんでも、子供から見て「いやだな」と思うようであれば、その子とそのお母さんは合ってなかったということになりますよね。

私はいろんな良い影響を与えたいなと思っていて、「こんなおっちょこちょいで馬鹿なお母さんがいろいろやってきたんだったら、私もいろいろできるんじゃないか」と思ってくれたら育児成功だなと思ってやってます(笑)。


Dr.F 素晴らしいです! こんなに広背筋で教えてくれるお母さんはなかなかいないですよ(笑)。私もあきぴさんが懸垂している背中から学ぶことは多いです。

あきぴ 私は本当にできないことが多いし、馬鹿で弱いので。

Dr.F そんなことないですよ。逆に「自分にできないことが多い」ことが分かっている人は強いですよ。

あきぴ 私、昨日分かったことがあって。私は本当に運動神経が悪くて、ジムでも「あきぴは本当に運動神経が悪いね」っていつも笑われるんです。できることはできるのでラウンドガールにもなれたりするんですけど、できないことは本当にできなくて。
 
Dr.F 私もたぶん、タイプ的にはあきぴさんと似ているところがあるんですよ。もともと運動苦手ですし、できないことはホントできない。しかも一つのことだけやっていると飽きちゃうので、いくつかのことを回しながらやっていくのが好きなんです。


あきぴ 分かります(笑)。



Dr.F でも格闘技で強くなれるかどうかは、究極的に言えば「強くなりたい」と思うかどうか。ここだけなんじゃないですかね。

あきぴ 「強くなりたい」と思うかどうか。

Dr.F そして、いまのあきぴさんは間違いなく「強くなりたい」と思っているわけじゃないですか。柔術なら黒帯になりたいと思うところまでやってるわけですよね。それが言ってるだけじゃなくて本当なので、心の底から思っているので、きっとなれると思うんです。

あきぴ ありがとうございます。

Dr.F そこが、実はいちばん難しいんですよ。私は研修医で極真カラテの全日本ウェイト制大会に出ると決めて、それは叶ったんです。「絶対に県大会で優勝して全日本に出る」と決めたら、叶ったんですけど、問題はその後でした。次の目標を立てなかったので、そこで完全に止まってしまったんですよ。



あきぴ ああ、なるほど!

Dr.F 夢だった舞台に立てたし、強い相手にも勝つこともできた。でも次の夢にスライドできなかったんです。だから僕の場合は、自分のゴールが「おしまい」でもあったんですよ。

その後は「全日本ウェイト制に出たんだから、関西大会ぐらいは勝たなきゃ」みたいなプライドにとらわれて、自分の実力を証明する方に走ってしまったんです。

あきぴ そういうことなんですね。

Dr.F でも、今のあきぴさんは目標があって、それを強く思って行動していらっしゃるので、想い続けてやり続ければ実現は近づくと思います。

全部そのままやりながら叶えられるかどうかは分からないので、僕の場合はどこかで「戦略的にやる」というのを考えざるを得なかったですが。


あきぴ なるほど……。そもそも私は運動をしてこなかったんですね。小1頃にムチ打ちになってから体育の授業も出てないんですよ。キックボクシングや柔術も始めて1年半なので、運動をする体になれていなくて。以前も肋骨を折ってしまって、折れたままラウンドガールをやったり試合に出たりしていたんですね。

Dr.F 医師としては褒められないですけど(笑)、ファイターとしては素晴らしいです!

あきぴ いつもどこかしらケガしてるんですよ。これって、何年も頑張ってたらケガしにくくなるんですかね?

Dr.F 2パターンありますね。ケガがどんどん積み重なって引退する人。逆にケガしなくなっていく人。人間、年を取れば取るほど治りにくくなっていきますから、1回1回のケガから学んだ方が得ですよね。

「ケガ」の一歩手前、二歩手前、三歩手前ぐらいに、必ず原因があるんですよ。どこかで力を入れてしまったとか、正しくない体の使い方をしたとか、クールにいけば問題なかったのに張り合っちゃったとか。


あきぴ そう言われると、いろいろ思い当たるところがあります(笑)。特に「張り合っちゃった」というのは、負けず嫌いなので特に……。


Dr.F ありますよね(笑)。ケガをしたときの動きに原因を探しがちなんですけど、もっと前に流れがあるんですよね。その流れの源流がどこにあるのかをとらえればいいのかなと思います。

あきぴ 分かりました。ありがとうございます!

Dr.F あともう一つ、大事なことをお伝えしておくと、ご自分では運動神経がよくなくて、ジムに行っても笑われるとおっしゃってましたよね? これって、実は格闘技に超向いてるんですよ。

あきぴ えっ、どういうことですか?

Dr.F 運動が得意な人は、ファイターではなくアスリートを目指す傾向があるんです。

あきぴ そうなんですか?

Dr.F 野球でメジャーリーグを目指したり、サッカーでワールドカップを目指したり、オリンピックでメダルを獲ったりしますから。スポーツエリートはアスリートになる。運動能力をどんどん高めていく。でもファイターは違うんです。求めるものが「強さ」なんで。

あきぴ あー、たしかに!そうですね。わたしも運動能力を高めたいんじゃなくて、強くなりたいからやってます。

Dr.F UFCの選手でも、陸上の専門家にはやっぱり陸上では敵わないんですよ。でもファイターは総合力がすごい。格闘技は「戦うというスポーツ」なんです。だから、「戦いが好き」であれば絶対に強くなれるんですよ。
 
あきぴ 好きです、強くなるのも、戦いも。

(④に続く)


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