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お気に入りの居酒屋を見つけたら、飲んだくれになってしまった。

最近、家から15分ほど歩いた場所に安い居酒屋があるのに気がついた。

そこはまさに「大衆居酒屋」といった雰囲気で、かなり安くて通いやすい店だ。店内はいつもそれなりに混んでいて、主に大学生くらいの若者で賑わっている。その店の隅にはカウンター席もあって、そこにはいつも一人客がちらほら座っている。

その店はメニューがかなり豊富だ。焼き鳥、揚げ物、刺身、煮物、焼き魚、麺類などいろんな種類の料理が楽しめる。酒の種類もかなり多く、焼酎、日本酒、ビール、ワイン、サワー、ハイボール… など思いつく限りの酒が用意されている。しかも、どの酒もそれぞれ何種類かの銘柄があって、何度行っても飽きることがない。

その店の魅力は他にもいろいろあるのだが、最大の魅力はやはりその値段だろう。
ビールは一杯290円、その他の酒も300円台とかなり格安。料理も、唐揚げ400円、焼き鳥はそれぞれ120円と非常に安い。晩御飯を兼ねて呑みに行っても、1人2000円もあれば十分に楽しめるだろう。

ちなみに、僕は今この文章をその居酒屋のカウンター席でからスマホで打ち込んでいる。これぞ現代の執筆風景と言ったところだろうか。

ちょうど今僕は「プレミアムモルツ」を飲んでいるのだが、これは中ジョッキで290円、そして、僕がさっきからパクパク食べている「軟骨の唐揚げ」は490円だ。

これくらい安ければ、なんとなく呑みに行きたくなった時に気軽に行ける。1人で飲むにしても、バーだと料理の種類が少ないし、普通の居酒屋ならそれなりの値段になるだろう。
そんな中で、1人で気軽に安く飲めるこういった店は意外と貴重だと思う。


さて、こういった良い店を見つけたこと自体は非常に良いことなのだが、その一方でデメリットもある。

それは、安いが故に毎日のように飲みに行ってしまうことだ。

僕のように酒好きな読者であれば分かっていただけると思うが、近くに安い居酒屋があれば、酒飲みたちはふらっと行ってしまうものだ。そう言う時にはいつも「でも、お金がもったいないし…」と悩んで行かないこともあるのだが、不幸にも、その店はすごく安い。

そうなれば、もはや行かない理由が無い。
砂糖の塊を見つけたアリのように、僕は誘われるようにその居酒屋に向かってふらふらと歩いていってしまう。


…ここで訂正しておきたいのだが、確かに僕は酒好きだが、病的な酒好きというわけではない。毎日酒を飲んでいるわけじゃないし、酒を飲まないと生きていけないほどでもない。コロナ禍で居酒屋でお酒が飲めない時は、いつも炭酸水だけ飲んでおとなしく寝ていたし、僕にとって酒は「必須」のものではない。

ただ、酒好きなのは否定できない。数多の酒好きたちの中でも、かなり酒飲みな部類であることも否定しない。
だた、好きなだけで、依存しているわけではない。

こうやって今の自分の姿を書いているうちに、なんだか僕が漫画に登場するような酒に溺れたダメ人間に見えてしまったので、とりあえずここで訂正させていただいた。
まあ、この先そうならない保証は無いのだが…


話を戻して、僕がこの店に初めて訪れたときのことを書こう。

僕がこの店と出会ったのは、僕が深夜に家の周りを徘徊している時だった。「徘徊」といっても、怪しく動き回るわけではなく、深夜の散歩といった程度だ。ただ、なんとなく「深夜徘徊」という言葉の響きが好きだから、僕はその散歩を「深夜徘徊」と読んでいる。

誰もが寝静まった深夜にひっそりと家を抜けて歩くのは楽しいものだ。音楽を聴きながら夜風に当たって、あてもなく歩いていく。その時間はずっと一人で、その孤独が逆に心地良い。


その日もいつものように深夜徘徊を楽しんでいたのだが、ふと、夜遅くなのに営業している居酒屋を見かけた。時刻はすでに夜中の2時を回っていて、ほとんどの店は閉まっていた。そんな中、随分と賑わった様子のその店が気になった。

煌々と輝く明かりに吸い寄せられ、僕は居酒屋に近づいていった。

最初は特に酒を飲むつもりは無かった。近所を少し歩いたら帰って風呂に入ろうと思っていたし、酒が飲みたいとも思っていなかった。

だが、店の前の看板に掲げられたメニューを見て、気が変わってしまった。ビール300円、焼き鳥一本120円。そんな文字を見て、焼き鳥を片手にビールをグビグビ飲んでいる自分の姿が思い浮かんだ。きっと1000円も出せば、満足できるくらい食べられるだろう。

チラッと店内を見ると、店の隅に一人で座れそうなカウンター席もある。
いつの間にか、僕の体はビールの喉越しを欲していた。


その日、僕は「ビール」「日本酒」「焼酎のお湯割り」を飲み、「唐揚げ」「厚焼き卵」を食べた。我ながら、深夜にしては食べ過ぎだと思う。

それだけの酒と料理を注文して、会計は2000円もしなかった。
2000円以下で好き放題に飲み食いができるのなら、コスパはかなりいい。

それから僕は、定期的にその居酒屋に行くようになった。
静かな店ではないが、カウンター席に座ればそれなりに落ち着ける。スマホを眺めながら酒を煽り、おつまみを口に運ぶ。一人だけの素敵な時間だ。


かれこれ、何度その店に通っただろうか。
深夜に急に飲みたくなって出かけることも増えた。元々家で飲む時は大した量を飲まない僕だが、その店に行くといつもそれなりの量の酒と料理を平らげてしまう。

今度はいつ、この店に来ることになるのだろうか。
来週か、来月か…いや、もしかして、明日か。

お酒はほどほどに楽しむのが一番。
もちろんそれは分かっているのだが、しばらくは「飲んだくれ」として生きていくことになりそうだ。

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