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反省的実践家の育成を目指して【2022 英語科教育法I #1】

2年生の英語科教育法Iの授業がスタート。
教員志望の2年生3名と教員免許取得のために頑張っている3年生1名の授業。今年度私が持つ授業の中では最少人数となるが、英語科教育法IIIを履修している別の3年生がゲスト参加してくれるということで5名に。模擬授業や検討会のことを考えるとこの1人の差は本当に大きいのでありがたい。

自己紹介がてら「発問」を整理

今週は月曜日から3つの集団に異なる自己紹介をしてきたのだが、あまり個性のない私はもう(初対面でできるような)自己紹介のネタが無く、来年度以降の留学もイメージしていそうな2年生に向けてはこれまでに行った海外の国について簡単に話した。

スライドに写真を写しながら、旅行で行ったシンガポールとタイ、外務省の派遣プロジェクトで行ったアメリカのデトロイト、そして大学院時代を過ごしたイギリスと4ヶ国。

一通り話したところで学生に次の3つのQuestionsを問う。

  1. How many countries did I introduce?

  2. Guess which country I like the best.

  3. If you study abroad, what country do you want to go?

それぞれ学生に一人ずつ答えてもらったところで、これらのQuestionsを「発問」と呼び、それぞれ別々の種類に分けられるということを導入する。

改めてもっと丁寧に扱うタイミングは作る予定だが、来週から早速模擬授業を行うこのクラスでは教師から生徒への問いかけについて、簡単にでも整理しておいた方が授業の組み立ての際にも活かしやすいのではないかと考え、極めてあっさりとではあるが導入してみた。意味があったかどうかは、今はまだよく分からないけれど。

教える経験を積む

この授業では来週からの14回、毎回15分程度の模擬授業をしてもらう。ゲストの3年生を除いた4人の履修者で回すので一人当たり3~4回。模擬授業から1週間以内にリフレクションレポートを出してもらうので、かなり重たい。
実際のところ、毎回模擬授業をしてもらう計画は履修者が確定するより何ヶ月も前から立てており、その時には5~6人はいる想定だったので、正直4回やる学生が出たのは想定外ではある。3回目が終わった時に、「もう1回できる!」ぐらいの気持ちになっていてくれたら嬉しいのだけど。

英語科教育法IVまで2年間で全60回の授業がある中、Iから模擬授業を重ねることの狙いは、教える側に立つ具体的な経験を可能な限り積んでもらうこと、そしてその上で対話型模擬授業検討会を通して深いリフレクションを行う能力を身につけてもらうこと。
学生時代の私は授業の「振り返りコメント」みたいなのが非常に苦手で「今は言葉にできません。バイトに行ってきます」みたいなコメントをしょっちゅう提出して帰っていたが、そんなことは棚に上げてというか、そういうリフレクション弱者にならないように、少なくとも私の授業では単なる「振り返り」(ALACTモデルの第2段階。または第3段階を経ない第4段階)ではなく、本質的な気づきを伴う「リフレクション」をできるようになることを目指す。リフレクションを伸ばすことのできる「能力」と見なす。

もちろん英語教育の理論も授業の随所で扱う予定だが、学んだ理論を実践に適用するといういわゆる「技術的熟達者」としての教師の成長パラダイムを徹底的に受け入れない形を取ってみる挑戦とも言える。
私自身が彼(女)らの年齢の頃には、「英語教育に関わる全理論を総ナメしてどんな生徒たちに出会っても最強のアイテムを頭の中から取り出して最強の英語教師になってやろう」という気持ちだった。(さっさと忘れたいイタい記憶ではあるが、これから出会う学生にもそういう人がいるという可能性もなきにしもあらずで、同じ歳の頃の自分のことを覚えておいてもきっと悪いことばかりではない)

7年前の私ほどイキってはいなくても恐らく多くのpre-service teacher達は似たような感覚を持っているだろう。英語科教育法の60回の授業という限られた関わりの中で、無理矢理ではなく自然な形で、「反省的実践家」としての教職専門性をイメージするようになってもらいたいからこそ、模擬授業と対話的模擬授業検討会を徹底的に大事にする。

また、今後教職に関わる色々な授業で出会うことになるであろう諸理論も、ただ理論として知っておくだけでなく、自分の実際の授業経験と照らし合わせながら理解してもらいたいという願いもある。
私は週6で塾講師のバイトをしているような人間だったが、履修者のみんながみんなそうではない。それに大学生のバイトする個別指導塾で自分の指導について理論と照らし合わせながら振り返りをする機会を得るのは極めて難しいだろう。
そういう意味でも、仮に上手くいかないとしても模擬授業の経験を積んでおいて損はないと考えている。

Core Readings

英語科教育法では次回の授業までに必ず読んでくるCore Readingsと、その回の授業の内容の更なる深まりを求めて興味があれば是非という位置付けのFurther Readingsを指定する。「ゆるりイギリス式授業」というところか。

今回は授業の内容には特に入っていないのでCore Readingsのみ。

渡辺(2019)『授業づくりの考え方-小学校の模擬授業とリフレクションで学ぶ』pp. 61~64 / pp. 191~199

pp. 61~64は「子ども役になるということ」、pp. 191~199は小学校外国語の模擬授業とその検討会。

来週から早速始まる模擬授業と検討会に向けて、全体で模擬授業と検討会のイメージを共有するための文献。

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