学習者の促進的マインドセット
3年後期、英語科教育法IV
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この日は第2章「学習者の促進的マインドセット」の前半、「原則」を検討した。ここで取り上げられた原則は以下の5つ。
原則1 有能感を高める
原則2 成長マインドセットを育む
原則3 学習者の当事者意識と自己統制感を高める
原則4 積極性を育てる
原則5 粘り強さを育てる
学生の関心を多く集めたのは「成長マインドセット」だ。
私自身も中学3年生の担任時代にDweckの訳書を学級文庫に入れて、Growth MindsetとFixed Mindsetの話をHRでした程度にはマインドセットを重要視している。
言語能力を伸ばすには限界があるか?
報告担当者の学生が「言語能力は50%以上が遺伝で決まるという研究があるが、その場合、学習者に成長マインドセットを持たせることは正しい教え方であると思うか?」という問いを出してきた。
当該研究のソースには当たれなかったが、実際職員室では「こういう複雑な文法とかは、もう分かんないやつには分かんないよね」みたいな会話も英語科に限らず聞かれたりする。(悲しいことに)
そこで、「この研究が本当であるとしたら、教師としてどういうスタンスを取るか」という問いについて考えてもらった。
「言語能力を伸ばすことに限界があることを分かった上で、『できるできる』と盛り立てることは生徒に嘘をつくことになるのではないか」という学生もいれば、「嘘でもいいから、できると信じて取り組ませたい」という学生も。
教師としての信念(ビリーフ)は今後それぞれの学生たちが醸成していってくれればいい。
「言語能力を伸ばすことに限界がある」問題について、もう少し俯瞰して考えるべきことは、学校英語教育の目標に能力的にどうしても届くことができずに自己肯定感を下げていく学習者が続出するとしたら、それは学校英語教育の目標設定がそもそも間違っているのではないかということだ。
「できる」と信じさせることは、「誰かが誰かの都合で設定した目標に誰もが到達できる」と信じさせることとは違うのではないだろうか。
「今のあなたにはここまで出来ているから、次にこういうステップを踏めば、ここまで出来るようになる」というメッセージを伝え、実際に成功体験を積ませることで「成長マインドセット」を育みたい。
ロールモデル
また「原則1 有能感を高める」の中で、類似した環境・能力にあり外国語学習に成功した「ロールモデル」を紹介するという方略が紹介されているが、それに対してある学生は彼女自身の経験から「むしろそれでできなかった場合、似た立場、環境なのにできないと、自分にはやっぱり能力がないのだと思い自信を無くしてしまう」と思ったようで、確かにロールモデルは諸刃の剣だと考えさせられた。
この意見には他の学生からも同意の声が多く上がり、「類似している」とはどの程度のことを言うのかという視点も必要だとされた。「純ジャパ」という(両親共に日本人で、日本で生まれ育っているというステータスを表す)言葉が流行ったり、「留学なしでTOEIC満点」のようなフレーズが人を惹きつけたりするが、その程度の類似性でも「ロールモデル」と呼べるのか。どのようなロールモデルを示すかという問題に対する「正解」は一意には決まらない。提示される側の学習者が納得できるロールモデルを提示することが大切だ。
学生の振り返り
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